2001年12月


27日(木)

ハービー・ハンコック

 2001年、最後のライヴ。南青山・ブルーノート東京。久しぶりのエレクトリック傾向新作『フューチャー2フューチャー』のりのライヴといっていいのか。もろマイルスのマナーを持つウォレス・ルーニー(tp)やDJを含む6人編成によるものだったが、あれれこんなもん、という感想も。テリ・リン・キャリントン(少し前のレニー・クラヴィッツ・バンドにもいましたね。そのソロ作はもろに色気ゼロの辛口ジャズ)のドラミングも精彩に欠けたいたなあ。彼女は2曲でドラム叩きながら歌ったりして、それはニッコリ見れたんだけど。最後は「ロック・イット」と「カメレン」という当たり曲を披露。演奏時間はかなり長かった。


22日(土)

沼澤尚&マルコス・スザーノ(シアターブルック)

 先々週も行った(12月9日)、南青山・マンダラでの、仲良しの二人が主役になったイヴェント(12月に10回ぐらいやったのかな)。この日は、沼澤がドラマーを勤めるシアターブルックとしての出演。そういえば昔、彼らの赤坂ブリッツのライヴを見に行ったら、入口のところで沼澤とばったり会い、なんでいるのって聞いたら、次から俺が叩くの、みたいな返事をさらっとされてびっくりしたんだよなー。まさか自分の大好きなバンドに知り合いが関与するとは思わなかった。

 シアターブルックとしても前日に新宿リキッド・ルームでやってたりしてて、息のあい方とかは当然のことながらばっちり。とともに、こちらは多少は番外編みたいな気安さもあったのかな。それも悪い方には向かっていなかったはず。オリジナルにまじえザ・ビールズやU2やジョン・レノンのカヴァーもやったのだが、それはこの日ならではの出し物だったのか? ともあれ、それらは只やってみましたというものではなく、彼らの顔が見れるものにちゃんとなっていた。俺、安易なカヴァーを聞くとしらける(ときもある)人なのだけど、頷くこと出来ました。少し前に沼澤とマルコスと佐藤タイジは3人でピース・ウォークに参加し笑顔でパフォーマンスしたそうなのだが、そのときも、こんなふうにカヴァーをやったりもしたのだろうか。

 こじんまりとした会場ならではのくだけたキブンあり、でも熱演。ますます演奏パートは長くなり(ジャム・バンドの域に入っちゃっているナという部分あり)、3時間強のパフォーマンス。しかし後から聞いたら、昨日のライヴのほうがもっと長かったそうな。おそるべし、シアターブルック。


18日(火)

キャレキシコ

 陽炎の奥に揺れる国境の街、なんかわけの分からないこと書いてますが、酔っぱらいモードなんで。アリゾナから来た、絶妙洒脱グループ。二管を含む、6人によるパフォーマンス。相当に良かった。上手くて、歌心があって、その奥に含みがあって……。某誌のライヴのベスト5のリストを急遽変えてやろうかと思えるぐらいの好演。

 ご機嫌で流れた先に、ドーナル・ラーニー御大がいる(仲良しの、ソウル・フラワー・ユニオンのライヴ客演のため滞日。彼の息子はかつてマルクスマンというラップ・チームを組んでいた。トーキング・ラウド発のアルバムあり)。彼の赤らんだヤクザな笑顔に触れ、“飲めば海路の日和あり”という、お気に入りのフレイズを肝に命じ直す。ひひひ。


17日(月)

マーキュリー・レヴ

 ヘヴィな日常は続く。しっかり飲み、騒ぎ、でも8時半ごろには起きて、きっちり机に向かう。てな師走の日々、この夜は新宿・リキッドルームで、マーキュリー・レヴ。

 震える歌を押し出す幽玄ロック・バンド、なんーて。彼らが考える美意識に則った定点があって、それをゆらゆら行ったり来たりするような実演、と言えるか。この夏のサマーソニックに続く来日だが、あのときは飲食スペースで大飲みオヤジになっちゃってて見ていないので、ふむと頷きながら見る。といいつつ、後半は久しぶりに会った知人と外で話し込んでじゃったけど。なんか、そういうも年末モードつうもんでしょうか。ともあれ、彼らがニューヨーク州のバッファローのバンドというのはピンとこない。ぼくにとって、同地はリック・ジェイムズが生まれた街(大スターだった彼の名前を冠された通りがある)だから。ソウライヴのエヴァンス兄弟も同地の出身で、彼らにリック・ジェイムスのことを振ったら、グローヴァー・ワシントンJr. もそうだと返されたことがあった。だからどーしたって感じですが。それにしても、複数の人からプログレぽいですよねと話しかけられたけど、それにはあまり合点がいきません。


16日(日)

小坂忠&フレンズ

 うわあ、来ている人、年配者だらけ。おれ、絶対若いほうじゃないかと思ってしまったもの。そんなワタシ、実は小坂忠という名前は昔から知っていても、彼の音楽は聞いたことはなかった。洋楽にかぶれていたし、聞くとしてももっとギラギラしたロックもん聞いていたから。それなのに、会場の東京厚生年金会館に向かったのは、彼が本当に久しぶりに出したポップ・アルバム『ピープル』がなかなか気持ち良かったからである。70年代後期のスタッフの流れを組むバッキング・サウンドがいい感じだったし、そんな上等とは思わないものの彼がああいうソウルっぽい歌い方をする人であったことも新鮮だった(本当に、何も聞いたことがないのよ)。

 2部構成。一部はヒックスヴィルを伴ってのアコースティック・セット。最初は早く新作の流れを組むバンドものを聞きたいナと思っていたが、けっこうグルーヴのある演奏でにっこり聞ける。そして、2部は新作プロデューサーの細野晴臣ほか新作絡みのヴェテラン・ミュージシャンがズラリと揃った演奏。感激できるはずだったが、思ったほどではなかったかな。大昔の仲間が変わらぬ感じで協調し合っている様子はいいナと素直に感じる。皆、幸せそうでした。


15日(土)

AKIKO

 ずっとジャズを歌ってきてデビューの機会を得、ジャズ・シンガーとしてデビュー。でも、なーんか今はジャズやーなのよとのたまう跳ねっ返りシンガー。会場は原宿・クェストホール。観客は若めの人が主で、やはりジャズ・シンガーの客層ではない。たまたま見本誌として送られてきた女性誌にも純粋なモデルとして出ていたりしてて、そういうほうからも聞き手は流れているのか。

 てなわけで、現在ジャズのほうからジャジーなR&B傾向へ、シフト中。嬉しそうにエリカ・バトゥの曲を2曲も取り上げていたことにも表れているように、そのへんが一番好きで、自分でも行きたい感じかしらね。やっぱ、ジャズを知っているのは強く、そこらへんのソウル傾向シンガーよりはるかに質を持つのは間違いない。ただ、MCは長いな。ともあれ、エリカ、ジル・スコットの線狙いで突っ走ってほしい。


11日(火)

クライヴ・グレッグソン、フルック

 渋谷・ネストにて英国関連アーティストが2組出る公演を見る。
 
 まず、80年代前半スティッフ・レコードが送り出したエニー・トラブルの中心人物だったクライヴ・グレッグソンが、アコースティック・ギターの弾き語り演奏をする。朗々とした声がもたらす感触もあるんだろうけど、感触が綺麗きれいしすぎるナ、ぼくには。一時はリチャード・トンプソンのバンドにもいたことがあるらしいが、現在はソングライター都市として名高いナッシュビル在住であるのだとか。あ、なんかこういうおっさん、あそこにゃ沢山いそうだな。

 そのあとはイングランドとアイルランド出身者で組まれた4人組バンドのフルック。フルートやティン・ホイッスルをやる二人(うち、女性奏者のほうはアコーディオンを弾いたりも)と生ギター奏者、そしてボーラン奏者。基本はアイリッシュ・ミュージック、だがビート感もあるし、ぼくはルナサ(10月19日)よりか全然楽しめた。そのメンバーとは終演後ちょっと飲む。マルコス・スザーノとお手合わせさせたいと感じた達者なボーラン奏者(まだ24才だそう)はマンチェスター生まれであるとか。すかさずユナイテッドとシティどっちが好きと聞いたら、シティのファンとか。そのあと、その理由をいろいろ言ってくれたがよく聞き取れん。ともあれ、強いだけが、デカいだけが正義ではない。つーのは間違いないようで、大きく頷く。マンチェスターには青いダブルデッカーが走ってんだよなー。かつてリハ見せてくれた、ラムってまだ活動してんのかなー。


9日(日)

渡辺香津美、イン・カフーツ、
マルコス・スザーノ&沼澤尚

 なんか、だんだん師走っぽくなってきたなー。みんな、そんなにあわだだしがらないでくれよお(笑)。

 で、オレはちんたら行くぞとコンサートを3つハシゴする。つーのはともかく、たまにライヴ会場を梯子したくなるときがある。って、昨日飲みながら、そういう話をしたら、それって飲み屋を変えたくなるのと同じなんじゃない? と、あっさり言われる。あー、かもしんない。

 ともあれ、3本連チャン。スタイルは異なるものの、どれもインスト表現のそれ。

 まず、有楽町のオリオンの上にある朝日ホールで、ギタリストの渡辺香津美。曲によって、ヴァンオン&チェロ隊やフルートやサックス、もちろんリズム隊など様々な人が加わる。総勢12名。その編成は彼の音楽生活30周年を記念するアルバム『ビヨンド・ザ・フンフィニット』の編成に則ったものであり、2部はその組曲風のアルバム丸ごとやるようなのであるが、1部だけ見る。アンタ、何しに来たのと言われそう? ともあれ、節目となる公演、これまで積み重ねてきたことをまとめるようなことをやるか、それとも新しいことをやって区切りを飾るか。考え方はいろいろだろうが、彼の場合は後者となるのか。

 続いて、お台場・TLG。うわあ、人出が凄い。人は年末モードに入ると消費衝動にかられるのか。いつも以上に娯楽享受傾向に入るのか。ぱっと見る分には不況という文字は浮かばなかったなあ。

 ブリッティッシュ・ジャズ・ロック系の名プレイヤーが集まったイン・カフーツを、こちらは2部から見る。なるほど腕達者。しかし、もっと楽曲に色気があればとは思ったけど。渡辺香津美のお客は年齢層が高いナと思わせられけど、やはりこちらもそれなりに高め。そういえば、渡辺香津美が80年代後半にジェフ・バーリンやビル・ブラフォードと組んでやっていたころの音とも重なるナと思う。

 演奏を聞いてて少し驚いたのは、おやじ〜じじい揃いなんだけど、彼らから人柄の良さみたいなものがじわじわ滲み出てきていたこと。なんか、いいなあと思えた。そのこととちょっと繋がるのだが、最後のほうに遊びで偶発的にやったスティーヴィ・ワンダーの「イズント・シー・ラヴリー」が最高に寛いでて味があった。また、リーダー格のフィル・ミラーがギターをチューニングしているときの、アルト・サックス(ソフト・マシーンにいたエルトン・ディーン)とドラムスのフリー・ジャズ流儀のデュオ演奏も本当に良かった。いやあ、ディーンさんはやっぱり素晴らしい! というわけで、このバンドは持ち歌をやらずに、その場の行き当たりばったりのジャムのほうが良いのではないのかと、思わずにはいられず。

 そして、深夜に南青山・マンダラで、マルコス・スザーノと沼澤尚を中心とするセッションを見る。沼澤が組んでいるスリーズ・カンパニー(昨年テイチクから出たアルバムは、なんかMMWっぽいところもあって驚いた)を中心とするもの。もう強固なグルーヴ・ジャム。沼澤の叩き出すビートを元に、みんな笑顔で乗っていく。ぐいぐい。ぶいぶい。それにしても、沼澤とスザーノ(スティングの新しいライヴ盤にも入ってますね)は変な意味じゃなく本当が仲が良く、信頼しあっている。お互いにブラジルと日本を行き来しあい、ライヴやレコーディング(トン・ゼー他をやっている新進売れっ子アレ・シケイラのプロデュースで共演アルバムを2枚録っているそう)をやっているわけだが、今回スザー
ノは宮沢和史のライヴなどもこなしつつ1月上旬まで滞日するようだ。

 ところで、まずは抜群のグルーヴ・ドラマーというイメージのある沼澤だが、奥行きある間(ま)を持つスザーノのパンデイロの妙技やひしゃげたシンセ音と絡むと音響ジャズ系のニュアンスも持つのは興味深かった。考えてみれば、沼澤も趣味が広くて、いわゆる音響系の音大好きだったりするしな。日曜深夜というのに満員。お客はOLさんぽいのが主。終わったのは3時半ぐらいだったか。


6日(木)

アイズレー・ブラザーズ、
スクープ・オン・サムバディ

 場所は渋谷・アックス。前座として、スクープ・オン・サムバディ。取材は何度もしているのだが(ナイス・ガイですよお)、演奏もする彼らの実演を見るのは初めて。知り合いのヴォイス・トレイナー嬢がパーティで彼らの歌を聞いたら上手くて驚いたと言ってたが、なるほど。ちゃんと歌える。客はアイズレー目当ての人が大半で、けっこう露出しているとはいえ彼らの存在をあまり認知していない人も多かったと思われるのだが、そういう人達もそれなりに魅了できたのではないか。ソウルに対する愛着もちゃんと出ていたしね。一曲、スモーキー・ロビンソンの「ウー・ベイビー・ベイビー」をやる。さすがに、アイズレー曲をやる根性はなかったか(笑)。

 そして、アイズリー。確か彼らを見るのは3度目だと思うが、今回もヤラれた。いや、前回よりも良かったような。とにかく、もう最初のロナルドの登場の仕方(そして、その出で立ち)からして、ソウル度百パーセント。そして、ステージの進め方から、バック・ダンサーやコーラス隊との絡み方まで、すべてがそう。一番多いときで、ステージ上には15人を超える人がいたんではないか。そのムダさ加減もソウルの美学。

 もちろん、音のほうも、絶妙のメロウさと酔狂さを湛えた、大ソウル感覚のオン・パレード。もうスナップの権化といったドラマーをはじめバックのプレイヤーもまた腕達者が揃っていて、なにかなにまでお得ぢゃあという公演。実は、前日は1時間ぐらいしかやらなかったと聞く。だが、この日はちゃんと1時間半は超えるパフォーマンス。みんなニコニコ。うーん、ワールドカップ決勝の入場券代の3分の1は出しても惜しくない内実を持っていたのではないか。不満があるとすれば、中盤でやった有名曲メドレーをもっと1曲1曲じっくりと聞きたかったという
ことぐらい。

 とにもかくにも、R&Bという名の米国黒人音楽、およびそれにまつわる流儀を愛でる心を持っていてウレピーと心底思えた夜でしたね。ビバ!


5日(水)

ビョーク

 会場は渋谷のオーチャードホール。会場横の東急渋谷本店前から、それこそハコの入り口前まで、あちこちに「ビョーク、チケットを買います」みたいな書き込みがなされた紙を手にした人達が。かわりに、普段見かけるダフ屋はいない。なるほど、入手困難なチケットであったということなんでしょうね。

 ぼくが買ったのは一番安い席(9000円の3階席)。それは、セコいだけではない。きっちりとステージ全景を見渡せるところで見たかったというのが、一番の理由。そりゃ、ビョークの細かい表情とかは分からないだろう。でも、ビョーク単体よりも、ビョークが導くステージ/パッケッージ全体像をより見たかった……。それにオーチャード・クラスの大きさの会場なら、後方の席でもそんなに距離感を感じることもなかろうという、算段もあった。
      
 それ、大正解ではなかったか。だって、一番高価な、つまりは1階席に座っていたら、オーケストラの様子とかは見えなかったはずだから。40人ぐらいの人達がずらりと並んで、一斉にボウを動かす様は壮観。大袈裟に言えば、ビョークを中心点にオーケストラ員に向かって放射される扇形の線の群が見えた……? ビョークは絶対的に君臨、やっぱりステージ全景を見渡せたほうが有り難みは増したと思うが。

 ビョークのステージは2部構成(休憩を挟み、2回のアンコールを入れて2時間ちょい)。彼女をバックアップするのは、外国人が指揮するそのオーケスラと、電気系音担当のマトモスと、新作に入っていたハープのジーナ・パーキンスと、グリーンランドの13人もの女性合唱団。前半部は完全に新作『ヴァスパタイン』再現の部で、後半部はそれ以前のハネものを中心に披露。その後半部に触れるといかに『ヴァスパタイン』は歌い方を含め、静謐な墨絵のような世界を狙ったかというのが対比的にありありと分かる。なんか、この実演に触れて、ぼくは『ヴァスパタイン』の真価が分かったような気もした。

 ところで、ビョークが出てくる前に、前座っぽくマトモスの演奏が40分。けっこう評判悪かったようだが、あれはあれで必要なんじゃない。だって、7時開演だと遅れてくる人が少なくないから、繊細な音の重なりを求める(だからこそ、オーケストラが生音で勝負できる小さな会場が選ばれたはず)今回のような設定を持つ公演の場合は客席中がガヤついて、鑑賞(こんな言葉嫌いだけど、今回の場合はまさしくそうでしょう。ついでに書けば、ぼくは“音楽をきく”という場合の<聴く>という表記も好きじゃない。なんか、正座してかしこまって音楽に接しているようで。たかがポップ音楽、ぼかァもっと楽に聞いているので、いつも<聞く>という表記を用いている)の妨げになってしょうがない。なら、前座を出して、遅れてきた人もしっかりと着席していただいて、そうは実現しない特別設定の出し物にきっちり接してもらいましょうというのは正解ではないか。

 それに上から見るぶんには、ぼくはマトモスのパフォーマンス、けっこう楽しめたんですけどね。まあ、バカは高いところに登りたがると言うが、ぼくは見下ろすのが好きなだけかもしれないけど。車も都内を中心に乗るんだったら、精神衛生上、絶対車高の低い車は乗りたくないしナ。


3日(月)

元ちとせ、村田陽一ソリッド・ブラス

 まず、表参道駅近くのスパイラルホールで元ちとせ。元V2レコードの洋楽ディレクターがエピック邦楽に移動になってのお誘い。ぼくは彼女のことを全然知らなかったのだが、インディで2枚のミニ・アルバムを出していて、けっこう評判になっている人のよう。そんなに狭くはない会場がかなり混んでいたものなー。それにしても、会場内の暑いこと。汗、吹き出たよお。

 奄美大島出身のシンガー。なるほど、同地の民謡歌唱法/感性を奥に置きながら、ポップ・ナンバーを悠々と歌っていく(と、図式はいたって単純で分かりやすい)。バッキングはアコースティック・ギターとパーカッションによるシンプルなもの。なるほど、彼女の喉の魅力は良く伝わる。貰ったセット・リストの2曲目に「リトル・ウィング」と書いてあってもしやと思ったら、ジミ・ヘンドリックスのそれ。違和感と紙一重の興味深さ、気持ち良さに触れる。また、5曲目に「バースデイ」とあってならばもしかしてザ・ビートルズ曲かと期待したが、さすがに別の曲。残念に感じつつ、彼女の声で(ザ・ビートルズの)「イン・マイ・ライフ」を聞いたらグっと来るだろうなと思ったりも。曲は作らない人のようだが、これからいかに印象的な曲と出会えるかがポイントかな。

 その後、六本木ピットインで、村田陽一のファンキーなブラス隊グループを見る。改装後(と言っても防音対策が主で、見た目はあまり変わっていないが)、初めて同所に行く。けっこう立ち見が出ているが、かつては渋谷クアトロを超満員にしたこともあったグループだからなー。ネクタイ姿の男性やOLぽい女性も多く、それもまたいいナと思う。ライヴは学生やプータローだけのためのものではない。

 最近ではDA BAMPなんかもやってる村田はストリングス・アレンジに編曲者としての醍醐味をここのところ見つけているようだが、やっぱブラス扱いは手慣れたものですね。と書きつつ、今回一番印象に残ったのは彼の持ち楽器であるトロンボーンの演奏であった。もう、ぶいぶい吹きまくる。要所要所の美味しいところは、彼の技量確かな(やっぱ、上手い)トロンボーンのソロが占めるといった案配。トロンボーン単独による曲もやったし、前もこんなに美味しいところを独り占めだったろうか。彼の円満な顔つきに誤魔化されていただけかもしれないが、この晩の演奏にぼくはミュージシャンとして至極必要とされる、俺様なエゴを存分に感じた。彼を最初に見たのはじゃがたらで吹いていたときだったが、意思を持ってすごい動いてきているよなー、とも実感。

 ブラス群音から浮き上がる、ヴィヴィッドなトロンボーンのソロを聞きながら、村田はワン・ホーンのアルバムを作るべきと痛感。ワン・ホーンによるウィズ・ストリングス作品もいいかもしれない。サックスのその手のアルバムは少なくないが、トロンボーンのそれは珍しいものとなるはずだし、彼の美点が複合的に出るはずだ。


2日(日)

リガージテイター、ズボンズ

 前座としてリガージテイターと仲良しのズボンズが出てきたのだが、ジムとかいう外国人のキーボード奏者が加わっていた。へえ。で、出だしが少しエレクトロニカに足突っ込んだような感じのもので、おおこれは早速キーボード奏者が増えた御利益ありかと思わせたが、その後はあんまし鍵盤音は前に出ておらず。露払い役ゆえ、気楽な感じでやってるなーとか思って見ていたが(新曲もやっていた)、1時間近くのパフォーマンス。

 場所は渋谷・クアトロ。そこそこ、混んでいた。けっこう女の子も多く、外国人も目につく。彼らはオーストラリア人なんだろうか。ともあれ、下北沢の普段は日本のバンドが出る小さめなハコにマメに出ていた3人組(いまは二人。そこに、ドラムとDJのサポートが付く)だったころを思い出す(ぼくは、数年前に2年連続で下北沢で彼らを見ている)。やっぱ、人間辛抱よのお。ただ、彼らは本国オーストラリアでは結構人気者だったわけで、海外での活動は軽いオプションのような気持ちで臨めたのかもしれないが。音楽的にはテクノ・ポップ〜ヒップホップ度数を増したものの、態度の部分においては、あの頃と何も変わっちゃいないよな。ちゃらい部分も含めて、なんやかんや偉いゾと思わせられる存在。オーストラリアの好印象を増幅させる人達でもあり。ぼくもああいう感じで、ニコニコ、屈託なく行けたらいいなー。