2000年1月
| 28日(金) |
| 映画『スーパー・フライ』/アニー・ディフランコ |
| 4時から渋谷のシネカノン試写室で、ブラック・ムーヴィの有名作『フーパー・フライ』(72年)を見る。実は、今回見るのが初めてだったんだが、非常にモダンな良くできた映画なんで驚いた。カーティス・メイフィールドの主題歌の歌詞に出てくるように、ハーレムのコカインのディーラーを主人公に据えた映画。主題はアメリカ黒人の置かれたやるせない境遇、ようは今の同系映画となんら変わりがないのだが、その描き方とかがお洒落というか、妙にイナセ。それと、コカイン吸うシーンがいっぱい(笑)。 実は、この映画を見る前にフィッシュボーンのアンジェロのインタヴューをやり、彼らを取り巻く白い社会の問題を相変わらず聞いたりしたばかりなので、映画のテーマ自体にはちょっと過敏に暗くなったりもしたのだが、描かれる主人公のスタイリッシュなところや映画の体裁じたいの粋さにのめり込んじゃう。たとえば、静止画像を分割して見せるところ(また、そのシーンとカーティスの映画がばっちりかみ合っているんだ)など、全然古くなく、カッコいいよなあ。これがゴードン・パークスJr. という人の処女映画監督作品であり、自主制作だなんて信じられない。もの凄く、完成度高いです。最後は体制側を手玉に取るような終わり方、今だったら絶対に敗北を示唆する終わり方のほうが多いはず。まだ、当時はそういう希望があったのか。そして、そういう頃の、“ニュー・ソウル”。そんな時代が過ぎてラップが出てきた……のか。確か、4月から規模は大きくないものの、公開されるはず。 その後、新宿に移動して、リキッド・ルームでアニー・ディフランコのライヴを見る。キーボード(今回から加わった)ベース、ドラムスを従えてのパフォーマンス。その人といい、音楽といい、何からなにまで、感服する以外にない人。可愛らしいのに強くて、大人なのに初々しくて、スピリチュアルなのに肉感的で。もう、初来日のおり、彼女のパフォーマンスを見て「ああ、やりてえ」と思ったが(ステージ見てそうんなふうに感じたのは、彼女だけじゃないかな?)、今回は感激しつつも、不思議とそういう感想は出てこなかったなたあ。彼女のマナーになれた部分があるのか、それとも彼女がもっと凄くなって恐れ多いと感じるようになったのか、俺がオトナになったのか。態度保留、次回の公演のときに答えを出すようにしよう。 終演後、大学時代の同級生にばったり。向こうが目敏く見つけてくれた。15年以上ぶり、もともとロックが好きなやつだったが、今でもスーツ姿で見たいコンサートに駆けつける(名古屋出張の帰りだとか言っていた)。偉いなあ。そういえば水曜日には、このホームページの読者でもある同じゼミに入っていた同級生とも凄く久しぶりに会ったばかり。妙な偶然を感じる。彼女も去年のフジ・ロックに行ったりしたというが、みんな凄いぞお。ほんと、齢を重ねるとともにライヴから遠ざかっちゃう人多いから。まあ、趣味が広がるということもあるけど。確かに、音楽だけが全てじゃないと思えるようになって、良かったと思えること沢山あるもの。でも、だからこそ、音楽もかけがえのないものなのダとも思ったりもするわけだわけだが。 |
| 27日(木) |
| スーパーグラス |
| 赤坂・ブリッツ。ああ王道のブリット・ポップだなあ、と見ながら思う。とにもかくも、バンドの機材のシンプルさに目を見張る。わざと現代機器〜技術の恩恵を受けることを避けて、今の英国シーンを泳ぐ自分たちを出そうとしているのかナとも感じたが。ともあれ、そうすることで前に出ていたのは、彼らの曲作りの技巧であり、一部の曲におけるギャズ君の歌の訴求力であった。 |
| 25日(火) |
| G・ラヴ&ザ・スペシャル・ソース |
| 渋谷・クアトロにて(もう、満員)。定時より少し遅れて登場したG・ラヴはちょっと変化あり。バシっとスーツ〜ネクタイで決めていない。前は、それが俺にとってのステージでのユニフォームだゼみたいなことを言っていたんだが。でもって、黒い毛糸の帽子を彼は被っていたりも。 そして、これまでと違うぞという感触は実際の音にもあったんじゃないかなあ、いろいろと(と書きつつ、やっぱりスペシャル・ソースの音ではあるんですけどね)。はっきり言って、オレ彼のこと海外でも見ていたりするから、日本で一番いろんな時期の彼を見たことある人間のはず。そんな熱心なG・ラヴ・ウォッチャーが言うのだから、間違いないでしょう。 まず、感じたのはおお音がブっといゾということ。Gは椅子に座ってプレイする場面も多いのだが、1曲目の途中ですぐに立ち上がったりとか、前より奔放にコトを進めていた(乱暴な面も多々あったが)。もう、最初からぐいぐい身体動かしちゃったナ。4曲目ぐらいから少し中だるみしたけど。そういやあ、コール&レスポンスを大々的にやったりした部分もありましたね(それ、前もあったっけか?)。 それと、前よりもシング・トーク〜ラップ的な歌唱法が前に出ていた感じが大アリ。いやあ、彼のそれ、スキルと存在感たっぷり。改めて、感心しちゃいました。 中盤、Gがプロデュースしたとかいう日本人女性が3人のステージにまざって2曲歌う。終演後、同業者Oはもろに否定的な感想をもらしていたが、ぼくは(1曲目の途中から)なかなかだと感じたなあ。ちゃんと黒っぽいのを中心にいいもの聞いていて、まっとうなフィーリングの持ち主であるのが分かったもの。Gたちときちんとコラヴォレートしてましたね。 その後、クリームの「ストレンジ・ブルー」のチャーミングなカヴァーをやったりも。その曲のソロ部分はブルースのコード進行に戻しGは単音にてけっこうスクイーズ調(バンドの名前ではなく、キュイーンっていうフレイズ連発の煽情的ギター・スタイルのことです)のプレイ。ああいうソロの取り方は初めて聞かせたはずだ。まあ、ロック的な芸のないソロとも書けるんではありますが。また、アルバム未収録曲だったと思うが、終盤やったレゲエ調の「ユニファイド」という曲(だっけか?)はかなり新鮮だったなあ。 とかなんとか、荒い面もあったのだが、悪くないステージであったし、まだ3人としての発展の仕方がいろいろあるゾと教えてくれたステージ。それに、やっぱ3人の重なりは決定的にスタイリョシュなところがありますね。ぼくは、彼らの1枚目は90年代を代表する超名作だと思ってマス、はい。 と書きつつナンだが、やっぱりフィリー・カルテルとかジ・オール・フェラズ・バンドとか、Gがフィラデルフィアで組んでいる他の編成のバンドのそれも見てみたい(近2作のアルバムには収録されている、ライヴやっているかどうかは知らんが)。なんとかクリエイティヴマンはその線で次のG・ラヴの公演をまとめてくれないだろうか。 |
| 17日(月) |
| ジョー・ストラマー&ザ・メスカレロス |
| 元ザ・クッシュ、ストラマーの公演は本人を含め最高でギタリスト3人、ベース、ドラムス、パーカッション奏者という布陣にて。ザ・メスカレロスというエキゾな(?)バンド名を付けているわりにはそれほど外れる行き方はなし。ギター3人もいるかァとか、打楽器奏者いる意味あるかァとかいう声が聞こえてきそうだったが、ぼくは打楽器奏者がいたという事実だけでなんかニッコリだったんだけどね。エコヒイキかい? くわえて、ローディがドレッド・ロックスのジャマイカ系の人だったりして、それにもらしいなあと感じたりして。 乱暴に言ってしまえば、ザ・クラッシュの曲を沢山やった、無骨なロック・ショー。なんの変哲もないものながら、ニッコリと見れてしまったのは如何なる理由によるものか。終わってからの“飲み”で多少話題になったが、ぼくの見解は心意気ゆえ。芸のない、答えではあるが。別にぼくは<ロック生きざま派>ではないと思うが、やっぱ侠気持って誠実にことにあたってたゆえの嬉しい何かがそこにはあったと思う。会場は赤坂ブリッツ。2階の椅子席で見ていたけど、何度かビールを買うため下に降りたとき、ちょっとだけ下のフロアでも見たけど、なんかいい感じであった。それも、心意気のライヴゆえ……。 |
| 13日(木) |
| LIT |
| アメリカでは結構な成功を収めている西海岸の4人組、LITの公演を渋谷のオンエア・イーストで。とにかく明快なバンド。けっこうキャッチーな曲を今っぽい激しさや重さを加味した音でサラリと披露する(リズムの平板さは15年前の水準ネ)。今様ハード・ポップ? ぼくの好みと合致するわけではないけど、にっこり見れたなあ。ちゃんと歌も聞こえるし、メンバーのルックスも悪くないし、なにより自分たちの将来信じて胸を張ってやっている風情があって、それがよろしい。といいつつ、これがギチギチに混んでいる状況で見たなら、もっと否定的な見解が出てくるかもしれないが。それなりにすいていて、ビール片手に本当に気儘に見れたからなあ。 |
| 12日(水) |
| キップ・ハンラハン |
| アメリカン・クラーヴェ・レーベルを主催し、各界のいろんな見どころある冒険型ミュージシャンを自在に重ねつつ、もう一つの“あっち側の世界”を描き続けているキップ・ハンラハンに着目し続けてすでに20年近くたつけど、まさか彼のグループのライヴを日本で見れようとは(ああ、ナイン・インチ・ネイルズのファンがやっと実現した来日コンサートに感じた気持ちもこーゆー感じか)。感無量。昔は情報が少なくて、ほんとうにNYという街が生む蜃気楼のように思えたりしたもんなあ。そのアメリカン・クラーヴェのカタログは一時期一番理想主義に燃えていた頃のスティングがCBSコロムビアと共同で配給したこともあったが、ずうっと超然としたスタンスを維持しているのも凄いっちゃあすごいよなあ。 今回はとくにラテン濃度が高い設定によるもので、ステージには、3人のドラマー、ティンバレス奏者、二人のコンガ奏者、縦ベース奏者がずらりと並ぶ。それに曲によっては、二人の女性ヴォーカル(若いほうがなかなかのルックスと肢体の持ち主。ウフフ)やサックス奏者(ネヴィル・ブラザーズのチャールズ・ネヴィル)が入ったりする。その自在のリズムの重なり〜対話が生むひっかかりや流動性の感覚をなんと記したらいいのか。リズム楽器だけで延々と続けられる部分もあるのだけど、全然飽きない。まさしく、ラテンが内包する底無しの魔力が崇高な精神とともにに自在に姿を変えていく様は本当にスリリングにして、豊か。官能的でもある。もう興奮させられた。そして最終的には、ちょっと臭いが“豊かなエスプリ”という言葉が浮かんでくるものになっていて、もう降参。はやくも、。2000年ベスト10候補。 実はかつて写真を見て、ぼくはハンラハンという人にアル・パチーノのようなちょっと危ない激渋中年というイメージを持っていたのだが、ゲンブツはただのずんぐりむっくりおやじでガッカリ。とにかく変テコな人で、彼はバンドのメンバーが笑顔で演奏している間、ティンバレス奏者の後ろにしゃがんで鉛筆片手に譜面とにらめっこしている。かと思えば、1曲目終わったあとに、テンパったフィリップ・トルシエのようにドラマーたちに怒鳴り散らしたりとか。で、またしゃがむ。なんぢゃあ? 魔法のような演奏はやはり彼一流のマジカルなディレクションありきなのだろうが、それにしてもうーむ。照れ屋さんなのかもしれないが、全然お客のことなんか見ないし、気にもしない。みんなあんたの名前で来ているんだから(会場は満員。珍しく、生理的に汚い人が多かったのでは)挨拶ぐらいすればいいのに。メンバー紹介等も一切しないし、最後の曲の前にメンバーを残しとっととステージ下りちゃったし、なんだかなあって感じ大アリ。でも、音楽は最高。やっぱ、クセある優れた音楽は性格の悪い奴や変人が作るものなのダという真理(?)を再確認した。 |
| 11日(火) |
| ナイン・インチ・ネイルズ |
| またしても、浦安・東京ベイNKホール。打ち合わせが伸びて東京出たのが6時半すぎ。だが、7時半開演でラッキー。ばっちり間に合った……のはいいのだが、うへぇ入りが悪い。この晩が一番チッケットが売れていない日だそうだが。ケミカル(8日はほぼ満員)は2日間。ナイン・インチ・ネイルズは3日間プラス横浜公演も。どっちが動員あるのか、少し考えたが、飽きてすぐにやめる。 ビンビンに発せられる美学。ぼくの趣味と相いれない部分が少なくないものの、かなり完成度の高い公演だったのではと感じた。とともにレズナーはやっぱ凄いシンガーなのだナ、とも。彼の中に積もった負のいろいろなものを聞き手にきっちり伝えたいってのが本当に伝わってきたもの。で、その幅が広い。なんせ、ぼくは彼の歌を聞いていて、ピーター・ガブリエルとかデイヴィッド・シルヴィアンとか、ぜんぜん畑違いの才人のそれを思い浮かべてしまったりもしたから。別にベスト10には出さないだろうが、いい公演だと思ったし、信頼できる連中だと思った。 実は、これぐらいの会場だと(米国だともっとデカい会場でしょ)、彼らの表情等を映し出すモニターが欲しいナとも思った。でも、あれだけ照明や構成がきっちり練られていたコンサートであったにも係わらず、それがなかったというのは、彼らのなんらかの意図が働いてのものなのダと理解しちゃうほうがいいのだろう。ショウの中盤には、ステージの前にスクリーンが全面的に下りてきて、演奏に合わせてイメージ映像が映し出され、演 奏者たちはスクリーンごしに透けて見えるという設定はなかなか。もうすでにだれかやっていることなのかもしれないが、ぼくはそういうの初めて見ました。 |
| 8日(土) |
| ケミカル・ブラザーズ |
| 千葉県浦安の東京ベイNKホール。一体、NKってなんの略なんだろう。お分かりになる人いますか? 湾岸を都内から飛ばしながら、高速の幅広い感じといい、なんか距離感といい、LAでコンサート見に行くのに少し似ているナと思う。これで、高速からまばらに椰子の木とか見えたら、ほんとそんな気分になってくるよなあ。 で、中身は……ケミカルはケミカルぢゃあというショウでしたね。って、それだけじゃこれ見ている人にはなんだか分からないだろうけど。すまん、まだ調子戻らない。見ながら、もしかして彼らはライヴこそが、思うまま自分でいられる場所なのかもネと感じたりも。普通っぽい、今どきの若者がいっぱい集まっていた。 |
| 7日(金) |
| 木住野佳子 |
| 青山・ブルーノート東京でジャズ・ピアニストの木住野佳子を見る。ここのところのライヴの常で、古野光昭と市川康という熟練のリズム・セクションを従えてのもの。冒険はないが、まっとうなジャズ・ピアノ表現。彼女は現在スタンダード曲中心のアルバム制作を行っているが、自作曲がけっこういいのに気付く。正月明け。なんか、筆が進まない。お洒落度4。静謐度3。ジャズ度4。物語り度3。乱暴度2。ふんわか度3。ふむ、なんのことだが、よく分かりませんね。まあ、そのうち、いつものように筆が滑るようになるでしょう。 |