第6回 「地下室系」を検証したい


 「地下室系」というジャンルのようなものがヴィジュアル系の中にはある。それは別名、「電波系」「アングラ系」とも言われてる。これを読んでおられるほとんどの方には馴染みのない名称であろうが、これは私のメル友、相互リンクしてるサイトの管理人あるいはそのサイトに出入りしておられる方々には非常に馴染みのある名称である。中には「十把ひとからげにしないで!」と憤慨される方もおられるかと思う。

 しかし、こういう括りの中に入るバンドは確実に存在していて、こういったムーブメントも確実に存在している。そして、このムーブメントは今確実にヴィジュアル系のどのムーブメントよりも「アツい」のだ。それが古参のファンや、こういう括りに入れられているバンドやその関係者たちにとって嬉しいものなのかどうか、と聞かれたら「NO」なのだろうが。

 とりあえず「地下室系」というのがどういうものか説明させていただく。まずこの類で最初に名前が上がるのは「カリガリ」というバンドである。現在は大型ライヴハウスをソールドアウトさせ、目下インディーズのヴィジュアルバンドの中で頂点にあるバンドである(しかし、デビューの予定はないらしい)。このバンドは狂気、江戸川乱歩的世界観、80年代トランスレーベル風味、パンク・ニューウェイヴ、ひねくれたポップ等の要素が入り混じっている。その「カリガリ」が97年から始めたイベントが「東京地下室」である。そしてそのイベントに出演したアーティスト、そしてそういうアーティストと同じイベントに出るようなバンドまで含めて、「地下室系」と呼ばれるようになった。

 私が初めて「カリガリ」を目にしたのは98年末のことだった。その頃になると、96年末頃からブレイクしていた世間一般のヴィジュアルブームは終わっていて、良かったバンドはデビューして毒気や個性を抜かれるか解散、休止の憂き目にあっていた。当時ヴィジュアル系で一番人気のあったバンドのタイプは、マリスミゼルのようなカッコをしたり血糊を付けたり、黒いエナメルを着たりして、激しい音でシャウトするような「耽美」なバンドだった。そういうバンドに全く興味のなかった私の行き着いた先が「カリガリ」だった。

 キャパシティ300人程度のライヴハウスに椅子や机が置いてあって、ガラガラで今の状況とは全く違っていた。しかしライヴはカッコ良かった。うねるような音を出すベース、カラクリ人形のような動きをみせるギター、そして目つきがやばく狂気をはらんでいて、でもいわゆるヴィジュアル系の歌い方(ラルクアンシエルや黒夢のような、しゃくりあげる歌唱法)とは違ってストレートに声を出し、MCは特に煽る事もなく淡々と、大人しい男の子のようにこなすボーカル。そんな彼らの化粧は、美しくなくむしろ醜いものだった。衣装は短パンだった。音楽的には当時私が好きだったUKニューウェイヴに近くて、頭が良さそうに思えた。歌詞は放送禁止用語を含みながら、でもどこかしらポップ。何だか不思議なバンドという印象を私は持った。

 私はそのバンドを一目で好きになり、99年からはそういう「狂気、醜いメイク、80年代風」バンドを片っ端からチェックするようになった。00年くらいまでは楽しいことが多かった。しかし、ファン同士の確執、あるいはバンド同士の確執や主催者側の思惑、そういう「本来知らなくていい」ようなことを目にして耳にして風の便りで聞いて、だんだん楽しいだけではいられなくなった。そして去年、「カリガリ」のボーカルがチェンジしたのを機に私は「カリガリ」から上がった(=ファンをやめた)。その理由は、ボーカルチェンジ故のバンドの雰囲気や音の変化のせい、だけではもはやなかった。結局この界隈にいて私が覚えたことは、「大人の汚さ、ガキの馬鹿さ、そして自分自身の狡猾さ(こういう事をほぼ「主観」のみで、多くの人が目にする所に書いてるんですからね)」という負の部分かもしれない。

 それでも私はまだ「地下室系」と言われるようなバンドのライヴにちょくちょく行っている。(今は「ネオ・ナゴムなる言葉が出てきてるようだが)やはりこの人達の表現、音が好きだ。確かに「同じような事をやってる人達が群れてライヴやイベントやって安心してる」ように見受けられるし、便乗組が出てきたことでムーブメントとしては末期にあるのはわかる。しかし80年代音楽好きの私にとってはまだ、魅力があるのだ。

 いつかこの「地下室系」と言われたムーブメントを検証してみたい。今のとこ関係者はメディアでは上っ面のことしか言わないし、2ちゃんねるのような場所では憶測に基づいたことしか書かれない。誰が誰から決別して、誰が誰と癒着して、というような裏事情も含めて、いずれ何らかのテキストにしたいのだ。元々100人も動員の無いばんど達が200人、300人、「カリガリ」においては1000人以上…の動員をあげるようになったムーブメントを、闇から闇へ水子のように「なかったこと」にしておくのはもったいない。でも、ロックのライターはインディーズのヴィジュアル系のムーブメントなんて知らない。だからこそ、私がやりたいと思う。…でもやっていくうちに何人か知人を失う気もしてきた。なんせヴィジュアル系関係の人って神経質な人や鬱な人が多いもんで。