1999年8月




31日(火)

 この日で8月も終わり。もう秋である。はやいなぁ。今年はいつになくはやく感じる。東京地方は34度まであがったらしい。まさに残暑。当然外に出る気にもなれず自宅でずっと原稿書きである。アタリ・ティーネイジ・ライオットのデジタルハードコア・レコーディングスのクリップのほかダイナソーJrなどでも知られる映像作家フィリップ・ヴィールスのビデオ・コレクション『デジタル・ハードコア!!!!』(9月15日からシネマ下北沢でレイトショー公開)の評のため、クソ暑い中、さらに暑苦しいDHR関係を見倒す&聴き倒す。チープ&ジャンクな喧噪に満ちた映像の裏には、ニヒリスティックな人間不信、孤独が張り付いている。

 あまりに暑いのでハードなものはその気になれず、ハイ・ラマズ、ステレオラブ、エヴリシング・バット・ザ・ガール、ジェイムズと聴く。とくにハイ・ラマズとステレオラブはかなりの傑作みたい。

 競馬関係のサイトを覗いていたら、こんな書き込みが。競馬マスコミにつとめる人の内部告発らしいが……ほんまかい?

日本の中央競馬会はもう誰も彼も(JRA,競馬関係者、マスコミ等)終っています。こうしてインターネットですから何でも書けることなのです。
(投稿する側、読む側に何ら利害関係がないですからねえ)
例えば〃某有名競馬クラブのT"の馬はそのほとんどが〃薬漬け〃で走っては重賞で活躍しています。それを知っているJRAや厩舎関係者等は影では色々言いながら、当事者たちにあっても愛想を振りまくばかりで何ら改善されてません。現実に"T・S"と言う強い馬は重賞を勝ったあとの検尿で薬物反応があり、賞金没収という処分がくだっているのに何ら発表がどこからもない。
〃民放競馬中継〃のスタッフや有名解説者のOさんやIさんも全く知らないのです。新聞社の人間も知っていても紙面に書くことはできません。何故なら彼らは〃競馬会に食わせてもらっている〃立場だからです。新聞社の人間は競馬に限らず、他のスポーツ、政治関係も同等で食わせてもらっている立場なので中傷的記事は御法度なのです。


(後略)

 「某有名競馬クラブのT」ってタイキのこと? 「T.Sという強い馬」ってタイキシャトルのことなの? う〜〜〜〜〜ん…………。


30日(月)

 フールズメイトの最新号が届いたのでパラパラめくっていたら、ボアダムス(EYE)のインタヴューが載っていた。これがある意味で、ぼくのようなボア・マニアにとっては非常にショッキングな内容で考えさせられてしまった。

 4年ぶりの全米ツアーの感想を求められたEYEはいきなり、キャロライナー(アメリカの変態バンド)のメンバーに「ノー・エナジーのヒッピー・バンドみたい」と冗談めかして言われたことを明かし、そういうフリークな部分がボアからなくなったのはまずいと思った、と言う。つまりボアの音楽から以前のフリーク・アウトした引っかかりみたいなものがどんどんなくなって、非常にフラットでストレートでシリアスで普通な音楽になっている現状に対して、個人的にすごい危機感を感じていると言うのである。さらに、ここ2年間ほどバンドのスタイルが固定化していることに対して「進化していない」と断じているのだ。これ以上は実際に雑誌記事を読んでいただきたいが、要するにほかならぬEYE本人が、バンドが過渡期にあることを感じていたわけである。

 まぁ確かにこの数年間の、ハードコア、民俗音楽、テクノ、ファンクなどを融合したようなスタイルからは、以前のような狂気じみた歪みとかユーモア感覚みたいなものはあまり感じられない。ゴッドママがいたころのような、初期バットホール・サーファーズと比較されていたころのようなわけのわからん変態性は薄くなっている。でも現状のボアが余人の及びもつかぬすさまじい境地に達していることもまた確かだし、昨年から今年にかけてのリリース・ラッシュは、EYEら自身の好調を物語るものと思っていたから、EYEがそのような心境にあったとは想像もしていなかった。小山守さんが連載原稿で、フジロックのボアに関していまひとつ物足りなかったというようなことを書かれていたけれども、彼が感じたのは、こうしたEYEの迷いだったのかもしれない。そういえば「スーパールーツ8」の取材のとき、別プロジェクトをいろいろやりたいけど、ボアが忙しすぎてできない、というようなことを言っていた。本来前述のようなフリーク・アウトな部分は別プロジェクトで吐き出して精神的なバランスを保つべきだったということなのかもしれない。

 ぼくはボアに関してはほとんど冷静な批評眼を失ってるとこが、正直言ってある。つうか、EYEのやることはどれもこれも興味深いし、おもしろいと思う。ボアのいまに至るまでの変遷もすべて好意的に受け取っていた。でも批評家としてはそれだけじゃいかんと痛感した。評論家はファン代表じゃない。どんなに好きな、信頼するアーティストでも、盲目的になって現状を落ち着いて見られなくなってしまうようじゃ、やっぱりまずいのだ。もちろんEYEがそう言ってるからといって、ボア及びEYEががいま世界中で一番すごいアーティストのひとつであることは確信しているし、いまのボアの音楽は最高だという考えを撤回するつもりもないけど、そうであればなおのこと、EYEがそういう過渡期、転換期にあることを全然気づかなかったのは、やっぱり評論家としては恥ずかしいのである。


29日(日)

 クロスビート次号のクラッシュ特集のための原稿書きで、久々に全アルバムを聴き返す。正直言うとぼくはクラッシュに関して本当に熱中したのはファーストか、せいぜいセカンドまでで、『ロンドン・コーリング』以降は積極的な関心はなかった。「パンク・バンド」クラッシュではなく「ロック・バンド」クラッシュとしてはまた別の評価もあるし、そういう点からは『ロンドン・コーリング』などよくできたアルバムと思うが、愛着とか衝撃度とかインパクトという点ではやはりファースト以上ではない。久々に耳を通して少しは違って聴こえるかと思ったが、そうした基本的な認識まで変わるには至らず。このバンドは確かに音楽的な冒険心は旺盛だったけども、その内実を支えていたのはもっぱらジョー・ストラマーらの気迫であって、表面的な音楽センスではなかったということも、よくわかった。物置から埃をかぶった『サンディニスタ』や『コンバット・ロック』などのアナログを引っぱり出して聴いていたら、いろいろむかしのことを思い出してしまった。なお、なぜいまクラッシュなのかといえば、別にフジ・ロックで来たからではなく、未発表ライヴ・アルバムが出るから。だいぶ前から噂になっていたもので、まだ音は届いていないが、曲目だけはわかっているので記しておきます( )内は録音年。

Complete Contorol(81)
London's Burning(78)
What's My Name(78)
Clash City Rockers(82)
Career Opportunities(82)
(White Man)In Hammersmith Palais(82)
Capital Rdio(80)
City Of The Dead(78)
I Fought The law(78)
London Calling(82)
Armagideon Time(80)
Train In Vain(81)
Guns Of Brixton(81)
The Magnificent Seven(82)
Know Your Rights(82)
Should I Stay Or Should I Go(82)
Straight To Hell(82)

 76〜77年ごろの初期音源を期待していたが、おそらくヘタクソ過ぎて使い物になるテイクがなかったのだろう。でも、先日出たジョイ・ディヴィジョンのライヴもそうだが、この時代のバンドの価値をうまいへただけで決めるのであれば、それはパンクの価値そのものまで全否定することになるのであって、クラッシュが真に時代を揺るがしていた77年までの音源を、ぜひぜひリリースしてもらいたかったと思う。なおアルバムのタイトルは『From Here To Eternity』。

 なおヘンリー・ロリンズとメール交換しているマーク・ラパポートさんから特別情報。ロリンズ・バンドのメンバーは全員クビ。ヘンリー以外はLAのパワー・トリオ、Mother Superiorにそっくり入れ替わったそうです。 ちなみにヘンリーによれば「いろんな状況にうんざりし、メンツを変えてみた。結果として、これまでの人生で最高のステージを楽しんでいる。アルバムはすでに出来上がっている。ロックしてるよ。先日メンフィスのサン・スタジオで追加録音もした。ゴキゲンだった」とのこと。

 マークさんからもうひとつ面白い話を聞いた。彼もおぼろげにしか覚えていないらしいが、ある時の『イカ天』で、パンクっぽいバンドがうるさい演奏をした後、審査委員のパンタが猛烈に凄み、ヴォーカルのアンちゃんに「ファッションで原発を歌うな!」と噛みついた。そしたらアンちゃん、「ワシャ広島のもんじゃ。家族にゃ被爆者もおる。文句があるんか?!」と逆にパンタに噛みつき、パンタは空気の抜けた風船のようにしょぼくれちゃったそうな。そんなことあったけなぁ。ぼくは覚えていないが、問題はそのバンドの反原発ソングが説得力をもって迫ってきたかどうかということであって、パンタがそう言った限りは、そのバンドの演奏が大したことなかったということなんじゃないのかな。もしそうなんだとしたら、もっと自信もって論評すればよかったのにねぇ、パンタさん。


28日(土)

 CX『馬ナリクン』はもともと『中央競馬ダイジェスト』としてその日の競馬の結果だけを放送していたものだが、2年ほど前からさとう珠緒や爆笑問題が出演する競馬バラエティになり、正しい競馬ファンを嘆かせていた。G1シーズンのときはそれなりにマジメに馬券検討をしているが、いまは気楽なローカル夏競馬。ということで、久々に見たら出演者一同が新潟に出向き、地元の名物料理に舌鼓を打ちながらひらすら酒を飲み雑談する、つまりただの宴会中継になっていた。酒飲みの井崎脩五郎や酒に弱い爆笑の太田が仕事という意識もなくどんどん酔っぱらって、競馬とは何の関係もない下ネタだらけの馬鹿話を連発し、さとう珠緒が喜んで(でも一応は困ったような顔をして)いるさまをただ流しているだけ。これがすんごく面白かったのだよ。どうせこのメンツで中途半端にまじめに馬券検討されても面白くもないし、役にも立たないんだから、この路線は今後アリかも。


27日(金)

 浜松町のワーナー試写室で「マトリクス」試写会。

 いや〜〜〜〜、めちゃくちゃ面白い!SF映画が嫌いじゃなければ、一度は見ておくべきだろう。人類に反乱をおこしたコンピューターと残った人間の戦い、という基本コンセプト自体はとくに目新しいものではないし、「ブレードランナー」「ターミネイター」「2001年宇宙の旅」「フィフス・エレメント」など過去の名作SF映画からのアイディア拝借も目立つが、とにかく金のかけ方と見せ方のうまいことうまいこと。現実社会と仮想現実社会を行き来する複雑なモチーフの割にわかりやすい娯楽を貫いた脚本・演出も見事。SFX技術のものすごさは「スターウォーズ」と双璧だが、はったりの利かせ方やストーリーへの組み込み方など、はるかに上回る。日本のアニメーション(押井守など)の影響はものすごく大きく、日本では金がないのでアニメでやったことを実写でやったという感じ。きっと押井守など、「パトレイバー」や「攻殻機動隊」を、こんな感じの映画にしたかったんだろうな。香港映画ふうなアクションはコミック・ストリップぎりぎりだが、硬派なSFタッチとのミスマッチな融合がおもしろい。映像感覚などにぼくは「ストリート・ファイター」などのコンピューター・ゲームを連想した。日本のオタク系サブ・カルチャーの、世界のクリエイターたちへの影響力はぼくたちの想像以上のものがあるようだ。瑕疵をあげるとすれば、「愛は人類を救う」的な甘ったるいラスト(「フィフス・エレメント」みたいな)。それまでのハード・タッチな緊張感が、ここで一気に「24時間テレビ」の水準までずっこけ落ちてがっくり。あと、ヒロイン役の女優もいまいち魅力ナシ。でもキアヌ・リーブスはかなりかっこよく撮れてるので、女子も期待してよいですよ。2時間16分。まったく飽きることなく、最後までぐいぐいと引っ張られた。いや見事見事。拍手!パート2,パート3まで予定されているようなので、今後に期待。なにしろハナシ自体はまだようやく端緒についたばかりで、まだまだ面白くなりそうだ。

 昨日今日と長めの原稿。またアーティスト論だが、数日前に書いていたものとはまた別。ひとつはイギー・ポップ、もうひとつはデイヴィッド・ボウイである。レコードのライナー以外の雑誌掲載でこういう長めのアーティスト論を書く機会は滅多にないので楽しい(苦しくもあるけど)。言うまでもないけど、ライナーは商品に添付されるものだから自ずと制約があるのだ。9月に復刊予定の「THE DIG」誌に載るので、良かったら読んでください。評論はインタビュー原稿に比べるとはるかに手間も時間もかかるし頭も使うけど、やりがいも大きい。そういう原稿をどんどん書かせてくれるような雑誌がもっと増えればいいのに、と思う。


26日(木)

 大橋のポリドールでブランキーの照井利幸の取材。ジョー・ブラウンに続く2つめのソロ・プロジェクト、ジム・スパイダーのアルバムのインタビューである。ジョー・ブラウンのアルバムはブランキーでの硬派なイメージとは裏腹の叙情的な側面を見せたりしていたが、全曲作詞作曲はおろかすべてのヴォーカル・演奏もひとりでこなした今回のアルバムは、ひたすら陰鬱で暗く内省的。この人はこういう精神世界を抱えていたのかと驚かされたが、本人は例によって「まぁそういう面もあるんじゃない?」と、言葉すくな。饒舌だったのはシャーベッツに関する感想を求めたときで、「これでベンジーのやりたいことが百%できてるんだから、ブランキーやる必要ないじゃん」と思い、実際に本人にそう話したんだそうだ。浅井自身は「他のメンバーもわかってると思う」と言ってたけど、結局わかってなかったということである。結局ブランキーはこの3人だからこそ出るグルーヴがいいんだと3人とも納得してる現状なので、まぁ今となっては問題はないんだけど、なぜシャーベッツがあのようなアルバムになったのか、納得いく部分もあり、そうでない部分もあるというところ。なお残る達也のアルバムも完成したようなので、いずれ取材することになるだろう。一番話を訊いてみたいのはこの人。今から楽しみだ。

25日(水)

 ずっと原稿書きでなにもない一日だったので、ネタ枯れ気味。ナンチャッテi−mac、ソーテックがアップルからデザイン盗用で訴えられる(テレビCFではラルク・アン・シエルをCFソングに使ってたり、雑誌広告でマイクロソフトとインテルの日本法人社長を登場させたりと、なにかと派手な宣伝展開で話題にはなってた)とか、ジョン・レノンのギターがサザビーズでオークションに出されるとか、小ネタはあるんですけどね。いろいろ書き留めておきたいことはあるのだが、じっくり書く時間が欲しいとこ。だがまとめている余裕がない。なので、安直ではるが紹介ものでご容赦をいただこう。ここのとこあまり面白い本に巡り会えずここでも紹介する機会がなかったが、札幌行きの飛行機を待つ間読破した東野圭吾『白夜行』(集英社)は、ちかごろでは出色の出来。どういう紹介をしてもネタバレになりそうなので内容については触れないが、同じ作者の『秘密』とはまるでタイプのちがう作品とだけ言っておく。久々に時間を忘れる面白さで、待ち時間もさほど苦にならなかった。ラストが特に鮮やか。

 久々におもしろいサイトを見つけました。中古レコード屋だが、在庫の量がすごい。検索もできて便利。もうひとつ。友だちから教えてもらったものだが、なかなか気の利いたサービスがあるので紹介しておこう。残暑見舞いとかに使うといいんじゃないでしょうか。日本語も使えます。詳細はここ


24日(火)


 ペイヴメントのライヴにいく予定だったが、疲労も原稿も溜まっていて、パス。終日原稿。いろいろ新譜を聴くが、推薦盤としてパブリック・エネミーの新作『There's A Poison Goin' On』(国内盤9月22日発売)を挙げておこう。。デフ・ジャム離脱後初の新作にあたる本作は、ネット上で先行販売(彼らのオフィシャル・サイトからダウンロードする形)されたもの。プロフェッサー・グリフ復帰作でもある。かっての新鮮さや衝撃はないが、着実にポイントをかせいだ感じの作品。やっぱチャック・Dのラッピンはすごいです。あとはボアダムズのニュー・シングル「Vision Creation Newsun」。3曲入り43分!


23日(月)

 ゼップ東京でバクチクとPIGのジョイント・ライヴ。最初に出てきたPIGことレイモンド・ワッツは、のっけから気合十分。クラシカルなオーケストレイションを導入したイントロ、まるでアンドリュー・エルドリッジを思わせるテンガロン・ハットとサングラスの衣装に身を包み、ナルシスティックに身をよじるパフォーマンスと、いかにもこの人らしい。演奏もパフォーマンスも、以前よりはるかに良くなっていた。アメリカ・ツアーなどを精力的にこなした自信と経験だろう。予想したよりはるかにヘヴィ・メタリックな演奏で、しかも出番の短さを考慮してか、押しまくる感じのハード曲の連続。もう少し緩急をつければアピール度はずっと高くなると思うが、これはまぁ直情の男レイモンドらしいところ。ただ、ここまでヘヴィ・メタリックにする必要があるのかすこし疑問は残った。アメリカ向けのアピールを考えているのだろうが、ここまで直球なインダストリアル・メタルは、実はアメリカでも少なくなっている。もう少しテクノ/エレクトロニクス色を強めた演奏にした方がこの人らしさが出ると思うが、おそらく秋には発売される新作アルバムでは、ちがう展開があると考えられるので、改めてそっちに期待したいところ。

 続くバクチクだったが、冒頭の3曲ばかりを聴いて、ちょっとつらくなって中座してしまった。この人たちのライヴはかなり見ているほうだが、そんな経験ははじめてだった。そんなわけでこれ以上のコメントは差し控えさせてください。せっかく招待していただいた関係者の方には申しわけないと思っています。


21日(土)〜22日(日)

 あ、電話が鳴っている、でなきゃぁ……ん? 朝だ。何時だろう……げげげげげ!!!!!

 というわけで見事に寝坊。目が覚めたときには飛行機の出発時間の10分前(>_<)。あわてて同行のUV編集部小林さんの携帯に電話するが繋がらず(あとで調べたら、控えていた番号が違っていた。ほんとにオレって馬鹿)。ゆうべなかなか寝られなくて、睡眠薬代わりにワインを飲んだのが失敗だった。航空会社に電話するが、午後2時まで空席がなく、キャンセル待ちしかないという。とにかく羽田に向かい、ひたすら待つ。午後10時の便にも乗れず、この時点ですでにトップ・バッターの電気グルーヴには間に合わないことが決定。とほほほ……(>_<)。

 結局午後1時のANAに乗って千歳入り。もう一人の同行者である矢隈さんの携帯に電話してなんとか連絡をとり、なんとか会場入りしたときにはすでにハイ・ロウズが終わるころ。従ってその前に出た電気、ナンバー・ガール、シークレット・ゲストのマッド・カプセル・マーケッツ、ゼペット・ストアは見ていない。早速同行の皆様に平謝り。ほんとに申しわけございませんm(_ _)m。まぁ仕事といってもブランキー主体のリポートなので、最低限の義務は果たせそうなのが救い。ちらりと聴いただけのハイ・ロウズはさすがにフェスティヴァル慣れした彼ららしく、堂に入ったパフォーマンスぶり。ヒロトのおおらかな歌いっぷりが気持ちいい。

 落ち着いて会場を見回すと、周りに視界を遮るものがなく、とにかく広く感じる。フジ・ロックのグリーン・ステージの3倍ぐらいありそう。先週の「RHYTHM TERMINAL SPECIAL」と同じ25000人ぐらいの動員らしいが、みためその倍ぐらいはいそうだ。空気は澄んでいるし日差しもキラキラと明るくて気持ちがいい。

 ぼんやりと会場を眺めているうちにドラゴン・アッシュが始まる。ステージ前は一気に女子度が上昇。前半はヒップホップっぽい曲、後半はパンクっぽい曲という構成で、前半の横ノリの曲では、お行儀のいい観客が一様に右手を上に上げ、一糸乱れず左右に揺らしている。ああ、日本のロックの観客のノリだなぁ。ぼくのなかではフジ・ロックとこのRSRFは地続きな感覚があったんだけど、思ったより客層はちがうみたいだ。ドラゴン・アッシュの演奏は予想したより堂々たるもので、降谷のヴォーカルもしっかりしている。なにより存在そのものに華があって、人の目をひく。途中のMCで「ブランキーやミッシェルのようないかしたバンドと一緒にやれて嬉しい」みたいな実に「いい子」なコメントを発したのは苦笑。後半のパンクっぽい演奏はいかにも幼い感じで、骨格のひ弱さが歴然としていたが、感じは悪くなかった。

 「トワイライト・ブレイク」と称して2時間近い休憩時間。時間調整を兼ねての長さなのだろうが、ちょっとダレる。会場を歩くうち、知人・友人に続々と遭遇。早速酒盛りを開始。あたりが暗くなるころ、UAが登場する。結局この1ヶ月にうちに3回ライヴを見たことになるが、出来は先週の大阪と同じぐらいか。続くは椎名林檎。デビュー前に見たライヴがいかにもシロウト丸出しの内容であまりいい印象がなかったのだが、ピアノ弾き語り(とヴァイオリン奏者のみ)で歌われる20分ほどの演奏は、なかなか魅力的だった。

 午後10時ごろ、ミッシェル・ガン・エレファントのあたりになるとすっかり酔いもまわり、こっちも仕事絡みであることを忘れ、羽目を外して大騒ぎ。なんかすごく開放的な気分だ。もしかしてフジ・ロックのときより楽しいかもしれないなぁ。演奏の出来は先週の大阪より良かったと思う。ラストは予定になかった「世界の終わり」だった。

 で、次はプリ・スクールだったのだが、ミッシェル後の休憩の間にすっかり酔っぱらってしまい、ほとんど印象に残っていない(^_^;。かなり頑張ってはいたけど、こういう大きな野外会場は合わないんじゃないかと思った。

 気を取り直してブランキー。メニューは先週の大阪とほとんど同じ。インパクトの強さは大阪のときの方があったように思うが、会場の雰囲気や酔いも手伝って、今回の方がずっと楽しめた。メンバーの気合もすごい。紆余曲折を経て、メンバーそれぞれにブランキーというバンドの底知れぬ凄みを改めて、存分に感じ取っての演奏だったはずで、なにより楽しんでいたのは彼ら自身だったはずだ。まちがいなくこのフェス全体のクライマックスといえる、強力なパフォーマンスであったと思う。

 50分の休憩をへて、ギターウルフ。もちろん毎度おなじみ、いつもの通りの内容である。いきなり1曲目にギターの弦を切ったのはご愛敬だった。いつでもどこでもマイペース。憎めない連中である。

 続くスーパーカーとブラッド・サースティ・ブッチャーズの間に仮眠。目が覚めるころサニーデイ・サービスが始まった。しらじらと明けた会場はだいぶ客も減っているが、それでもまだたくさんの人たちがじっと演奏に聴きいっている。宴の終わりの脱力した空気に、サニーデイの音はばっちりはまっていた。もしかしてこのフェスで一番「いいとこどり」だったのは彼らかもしれない。曲もいいし歌も演奏も押しつけがましさはまったくないのに、ココロに浸み入ってくる。フェスの発起人のひとりであるミッシエルのマネージャー能野さんと出会い、どちらからともなく抱擁を交わし、フェスの成功を祝福しあう。RSRFのオフィシャル・サイトを見た人なら、彼がいかにこのフェスに熱情を傾けていたか知っているだろう。いいフェスティヴァルだった。

 すべてが終わり、会場をあとにする。朝食でウニ丼を食べたり、サウナでカラダを休めたりして時間をつぶし、午後3時の便で東京へ。さすがに疲労が溜まっていて、夕食をとり遅れ気味の原稿を書いているうちに眠気が襲ってきて、はやめに就寝。4週連続の宿泊出張は、こうして終わった。来週のレインボー2000? いや、さすがに勘弁してください(^_^;。


20日(金)

 きのう今日と、久々に長めのアーティスト論に取り組んでいるがなかなか進まず苦吟呻吟。「ライジング・サン・ロック・フェスティヴァル」出張前にあげようと思っていたが、どうもむずかしいみたいだ。あしたは早朝5時起きで札幌行き、そのまま朝6時までの長丁場。なんか考えただけでも恐ろしいス(^_^;。仕事だからまるごと遊びってわけにもいないが、無理のない範囲で楽しんでこようと思います。そんなわけで今日はこのへんで。


19日(木)その1

 ナンバー増刊「ナンバー・プラス」プロ野球篇購入。なんのかのと言ってもやはりナンバーの記事は質が高い。「南海ホークス 黄金の4年間」と題し、杉浦忠を中心に南海の黄金期(杉浦4連投で読売に4連勝!)を振り返った記事は、南海ホークス主義者にして反ダイエー、反読売のぼくにとって、おおげさでなく涙が出そうな内容だった。南海の黄金期の立役者であり、南海の死に水もとった杉浦忠にこそ、ダイエー・ホークス初優勝の胴上げ監督にふさわしい。ほかにも読売の陰謀で抹殺された悲運の名投手池永のインタビューなど、どの記事も密度が濃い。

 さて、好調ダイエーの国民栄誉賞監督の続投がほぼ決まった。中内オーナー代行が言明したもので、優勝しようがしまいが、たとえ残り34連敗しようが(いまの布陣からオリンピック予選のため松中が抜けると、戦力低下は明らかで、34連敗はともかく首位陥落の可能性はじゅうぶんある。いまのダイエーはとにかく打てないから)、続投決定だそうだ。親会社は優勝によるダイエー・フィーヴァーの経済効果で有利子負債(2兆6000億円)の返済ができるんじゃないかと期待しているらしい。ここで何度も書いてきたように、ぼくは筋金入りのホークス・ファンだが、現在の監督が代わらないかぎり素直にダイエーの応援はしたくないし、できればダイエーは球団を手放してほしいと思っている。すくなくとも王の更迭は既定事項だったはずだが、しかしことここに至って、ダイエーは宿敵読売の元4番打者との心中を決意したらしい。いよいよミレニアムの終わりを前にして、ぼくのン十年の渡るプロ野球ファンとしてのアイデンティティを問われるときがきたのである(おおげさ?)。さあ、これからどこを応援しようか……。

19日(木)その2

 ……とか思ってたら、なんと柴原の3ランで連夜の逆転サヨナラ勝ち。強い! これは本当に8月中にマジックが点灯しそうだ。もっとも監督の性格からして、マジックがついてから浮き足立つのは目に見えてるけどね。

 途中までNHKBSの中継を見ていたのが、8回裏にそれまで好投を続けていたオリックス加藤が小久保に3ランを打たれ同点になったときの、鈴木啓示の解説がなかなか泣かせた。同じ投手の立場から、完全に加藤の心理に同化して、とうとうとその心情を語るのだが、シロウト目にも疲労がピークに達して見るからにしんどそうな加藤が、それでも最後の気力を奮い起こし、得意球のシュートを多投し、それでも疲労のためタマにキレがなく小久保にさんざんファウルで粘られ、だんだん投げるタマがなくなって追いつめられていき、ついに根負けして痛打されるまでの心理、そして同点にされたあと、本当はもう代えて欲しいけどリリーフ陣に信用がおけないオリックスの台所を鑑みて気力だけで踏ん張る必死の投球などを、完全に感情移入して解説しているのである。おそらく加藤の必死さには、自分を見捨てた王ダイエーに対する意地もあるのだが(加藤は王ダイエーを自由契約になったあと広島に移籍して復活し、今年からオリックスに移籍した)、鈴木はそれを知ってか知らずかまったく触れず、一球一球死力を尽くして投げる加藤に、心のなかで涙まじりの声援を送っているように思え、それがまたなかなかの浪花節になっていて、よいのだ。指導者としては結局無能だった大投手鈴木だが、案外今の道は合っているのかも。今度はロッテの熱きエース・ジョニー黒木の気迫の投球の解説をぜひ聞きたい。

 一方セは中日が読売に3連勝。しかも松井の2発などでついた5点差を追いつき延長12回のサヨナラ勝ちだ。読売もだらしないが、こういう神がかった勝ち方が続くとチームの雰囲気は最高だろう。関川の同点タイムリーの場面を見ていたが、本当に勝負強いね。ノムさんが「なんであんないい選手を出したんや」と嘆くのも無理はない。これで中日の優勝確率は90%を越えたろう。こっちも強い。

 阪神は横浜に逃げ切られる。ま、こんなもんでしょ。

 ジェフ・ベック来日公演がBSで。いや、ほんとうに若い。かっこいいの一言です。

18日(水)

 恵比寿のデンジャー・クルーで徳永憲の取材。デンジャー・クルーのオフィスの豪華さにびっくり。さすがに日本一売れてるバンドの事務所はちがうわい。その豪奢なフンイキにまったくそぐわないアーティストとインタビュワー(苦笑)。ひょうひょうとしたとぼけキャラは相変わらず。メジャーから離脱してインディからのミニ・アルバムのリリースだが、創作意欲はまったく衰えていないようだった。

 夜は音楽ライター講座。帰宅してNHK放映のビーチ・ボーイズのドキュメンタリーを見る。昨日やっていたカーペンターズのやつもおもしろかった。カレン・カーペンターが拒食症になった理由についてまったく触れないなど、いかにもきれいごとな内容だったが、まぁカーペンターズの音楽自体がそういうものなんだから仕方ない。むかしは大嫌いだったけど、次々と流れる大ヒット曲のほとんどすべて(末期の曲以外)歌えるぐらい熟知していたのには、われながらびっくり。とくに初期は名曲が多い。おにいちゃんが曲を作りだしてからは、いまいち新鮮さに欠ける気がするのだが、確かにアメリカン・ポップスの歴史に残るグループではあるだろう。最近音楽もので頑張る国営放送、いよいよ19日はジェフ・ベック様の来日公演の放映だ。万人必見!


17日(火)

 忌野清志郎問題。ぼくも報道された以上のことはしらないが、やはりご本人としては相当に腹立たしいことであったらしく、この日にあった雑誌「ぴあ」のイベントに出演したおりも(ぼくはみていないが)、最初から最後までポリドールへの非難・罵倒で終始し、メニューもタイマーズ時代のハードな曲を中心に攻撃的な内容のものとなっていたようだ。

 今回のレコード会社の措置は、右翼からの攻撃を恐れてのものだろう。過去に、アナーキーの「東京ズ・バーニング」の歌詞が問題となって、CD化されたときにアルバムから削除されてしまったことがあるが、やはり天皇とか君が代、あるいは日の丸関連はいまだにかなりデリケートな問題を含んでいる。もちろん今回の自主規制は、すくなくとも表現の自由を真っ先にカラダを張って守るべき文化産業としては自殺行為としか言いようがないのだが、時節柄神経質になったレコード会社の気持ちもわからなくもない。しかしタイマーズ以来2度目の発禁騒ぎとなる清志郎としては、憤懣やるかたないにちがいない。

 で、それに関連して。ほとんど話題になっていないのだが、東芝EMIからデビューしたばかりの牧謙次郎というシンガー・ソングライターの『顔さえも分からない君へ』というアルバム。いまどき珍しく「言いたいこと、伝えたいこと」を山ほど抱えたメッセージ・シンガーで、佐野元春、尾崎豊、SIONといった先人たちの影響は大きいようだが、ちかごろない骨太な新人の登場と言える。そのアルバムから先行シングル・カットされた「おかしい」は、アルバム中でももっとも印象的な曲のひとつだが、その歌詞の中に「原発が安全だというのに東京に原発を作らないのはおかしい」という、広瀬隆な主張が出てくる。ところがこの「原発」の「原」のとこがピー音で消されているのだ。「おまんこやろうぜ」とか「天皇殺せ」なんて言葉なら消されても仕方ないだろうが、「原発」が規制されるとなれば、これはどうしてもタイマーズの一件(もちろん断るまでもなく、これも東芝EMIでの出来事だった)を想起せざるをえない。これが東芝上層部の指示なのか、制作サイドの自主規制なのか、はたまた話題性を狙って(?)必要もないのに消したのか、それは知らない。レコード会社の姿勢を問うより、歌詞を変えなかったアーティストの硬骨を褒めるべきなのかもしれないし、あえてこの曲をシングル曲に選んだ制作現場の気概を称えるべきなのかもしれない。でも、先の清志郎の一件とあわせ、さらに最近の日本の急激な右傾化やマスコミまで一体となった大政翼賛体制の強化と考えあわせると、どうもキナ臭い空気が漂ってくるのである。

 ほんとに日本はどうなっちゃうのかね。


16日(月)

 オザケン世界デビュー決定(詳細はここ)。これはもう、関係者やファンの間では周知のことなのかしら? 事情にうといわたしゃ全然しらなかった。マーヴィン・ゲイのトリビュートに参加したのには、ちょっと驚いたけど、まさかそんなことになってるとは。確かに快挙と言えるのかもしれないが、でも、モータウンというのがいささか不可解ではある。そんなに黒人音楽志向が強かったのかな。たしかにソロになってからは、ソウル/ファンクの日本的展開といえる音楽をやっていたけど。モータウンの社長はオザケンの歌唱力をどう評価したのだろう?

 小山田に続いて元パーフリが世界進出。電気Gも世界進出。あの世代はみなそういう時期なのかな。才能のあるミュージシャンにとって、もはや日本は活動の場としては狭すぎるということか。う〜〜〜ん…………。

 一段落したかにみえる東芝問題。ところが関連のHPが次々と閉鎖の圧力にあっているらしい(詳細はここ)。

 今日の1枚。遅ればせながら、七尾旅人『雨に撃たえば……disc2』(ソニーより発売中)。日本のエイフェックス・ツイン? テクノ時代の岡村靖幸?



15日(日)

 朝から大阪出張。南港の特設会場でおこなわれた「RHYTHM TERMINAL SPECIAL」というイベントの取材のため。ブランキー、ミッシェル、UAが出演する野外イベントである。しかし3週続けての宿泊出張は体力的にも時間的にもきついので、この日だけの日帰り出張としたのである。

 会場は東京でいえば台場のようなとこで、埋め立て地あとの大きな会場。ラルク・アン・シエルのライヴもここであったそうだ。広さは昨年のフジ・ロックよりはよりはよりはだいぶ狭い。直前まで雨が降っていて、天候はどんよりと雲って夏の野外ライヴの爽快感はゼロ。とはいえ観客のいりはまずまずで、公式発表は25000人。

 冒頭はミッシエル・ガン・エレファント。約2ヶ月ぶりに見た彼らはイタリアン・マフィア風のいでたちで登場。同行者と「ガラ悪いなー」と一言。しかし演奏はいつもながらのミッシエル節。いよいよ興が乗ってきた3曲目「G.W.D」で、いきなり演奏が中断。客が暴れすぎて前のほうの柵が壊れたらしい。そういえば去年のフジ・ロックでもこの曲で中断したのだった。40分ぐらいのブレイクで再開したが、そんなアクシデントにもめげず集中力が途切れなかったのはさすがだった。演奏も数限りないツアーをへてますます引き締まってきている。まぁ細かいとこではいろいろ疑問に思うこともあったが、それは雑誌原稿に書くことにしよう。ミッシェルはイギリス、アメリカ・ツアーが決定。むこうでレコードも出るみたいだ。戻って新作のレコーディング開始。チバによればすでに新曲のストックは20曲を越えているという。いったいいつ書いてるんだ?

 次はUA。さすがに地元のライヴだけあって、フジ・ロックのときよりはるかにリラックスして上下脱いだかんじ。歌も伸びやかで開放的。ぼくはフジ・ロック時より全然いいと思った。

 ラスはブランキー。直前に「名古屋の海賊」名義で渋谷タワー地下でライヴをやったらしいが、これはこの日のためのリハーサル代わりみたいなものだったようだ。「ロメオ」にはじまる1時間弱のライヴは、数あるレパートリーのなかでもとりわけ激しい曲ばかりを演奏。強力だった。ものすごいインパクトだった。いままで見たブランキーのなかでも5本の指に入る力演だったと思う。いかに激しくハードな曲をやっても、そこには胸を締め付けられるようなやるせなくもの悲しい感情がこめられている。バラードなしの力任せのアップ・テンポ曲ばかりでこれほど深く悲しいエモーションをこめられるのは、世界中を見回してもおそらくブランキーだけだろう。リハ不足のせいかはっきりいって演奏ミスは目立ったけど、そんなことは大した問題ではない。浅井も照井も良かったが、もっともイキイキとしていたのは達也だった。スカパラ時の達也も良かったが、やはりブランキーでこそ映える男である。なお達也と照井の、それぞれのソロ・プロジェクトのアルバムはすでに完成済だそうです。照ちゃんはともかく、達也のは完成しっこないと思っていたのでいささか意外(^_^;。マネージャー藤井氏によれば、内容も達也らしくて最高とのこと。

 コンサート終了は午後8時50分ぐらい。新幹線の最終は9時15分なので、もはや日帰りは不可能である(>_<)。ミッシエルの中断さえなければ楽勝で間に合ったんだろうけど、仕方なくホテルをとり、打ち上げに出席。さすがに3アーティスト共演のイベントだけに出席者は多かった(100人以上?)。各メンバーとも久々に会い、労をねぎらう。浅井の穏やかな表情と、ミッシエルのメンバーの相変わらずの元気さが印象的だった。アベ君、あんたおもしろすぎ(^_^)。打ち上げは2軒目以降も続くが、ぼくらは深夜3時ごろ退散。いろんな人といろんな話をするが、ミッシェルのマネージャー能野さんが「来年はフジ・ロックのトリに出したい」と繰り返し語っていたのが印象的だった。


14日(土)

 今井智子さんの連載でもちらりと触れられているが、去る8月7日に富士急ハイランドでおこなわれた野外ライヴ「ビューティフル・モンスターズ・ツアー」で、ピエロという日本のヴィジュアル系バンドが客に発した発言がちょっとした議論を呼んでいる。その日はマリリン・マンソンをトリに、ミスフィッツ、モンスター・マグネット、スーサイダル・テンデンシーズ(ドタキャンだったらしいが)、メガデスといったアメリカのヘヴィ系バンドが勢揃いしたライヴで、どういう経緯で出ることになったのか知らないが、ピエロだけがどうみても浮いているラインナップだったのだ。そこでピエロのヴォーカル氏はこんなことを喋ったらしい。

「洋楽ファンのみなさま、貴方達が大嫌いなヴィジュアル系のピエロです。」
(「ギャー」というピエロのファンの悲鳴・叫び声)

「今日は、それを承知でやってきました。」
(「ギャー」というピエロのファンの悲鳴・叫び声)

「そんなに外人が好きですか?」
(「ギャー」というピエロのファンの悲鳴・叫び声)

「貴方達、国籍はどこですか?」
(「ギャー」というピエロのファンの悲鳴・叫び声)

「洋楽ファンの女で、外人とSEXする為に、バックステージ・パスを貰っているのが、何人いるか!」
(「ギャー」というピエロのファンの悲鳴・叫び声)

「洋楽ファンがトイレ休憩に行っている間、『おまえらまだ演ってるのか?』と思 わせる位、狂っちまおうぜ!」
(「ギャー」というピエロのファンの悲鳴・叫び声)

 ぼくはその場にいたわけではないし、その発言がライヴのなかのどういう流れで出てきたのか知らないからなんとも言えない(詳細はクリエイティヴマンのサイトのBBSを参照)。まぁアーティストのラインナップからみて、ピエロのようなバンドがその場の観客すべてから好意的に迎えられたとも思えないし、ステージ登場の際にブーイングのひとつも飛んだだろうから、それに対して皮肉めいた一言も言いたかったのかもしれない。が、にしてもいきなり見も知らぬ客に向かって攻撃的すぎるなぁ、と思ったら、これには伏線があって、某洋楽ロック評論家がラジオ番組でこのコンサートについて紹介したとき、ピエロのことをわざと無視したり小馬鹿にするような発言を繰り返したことにピエロが腹を立て、単独ライヴのとき、その評論家の実名をあげて攻撃したりしていたらしく、上記の発言は一般の観客というよりその評論家に対して向けられたのではないか、ということである。

 まぁ正直言ってどっちもどっちというかんじですね。洋楽しか聴かないロック・ファンは確かにいるし、そういう人たちが日本のロックを(ロクに聞きもしないくせに)馬鹿にしがちであることも確かだろう。それに対して日本のアーティストが腹を立てる気持ちもわからないではない。でも、「外人とセックス」うんぬんというのは、いくらなんでも言い過ぎではあるだろう。ピエロがどんな音楽をやってるのかよくしらないけど、そもそもこういうブッキング自体に無理があったんじゃないかな。ヴィジュアル系と一口で言ってもいってもXのようなハード・ロック系、ルナ・シーのようなニュー・ウエイヴ系(強いて分類すれば、ですよ)、グレイのようなBOOWY系など、いろいろあるわけで、たとえば翌日のマリマンとバクチクだったらそう違和感なく見られるだろうけど、このラインナップじゃ、双方にとってあまり得るものがない気はする。第一回フジロックのイエモンもそうだけど、アーティストの並びと組み合わせって大事ですよね。

 で、ぼくは一方で、そういう本質論とは関係なく、ピエロの発言はなかなかのものではあるなぁ、と思ったのだった。だって、もしその場で「こんなぼくたちですけど、洋楽ファンのみなさんもよろしくお願いします」みたいな優等生発言したって、ミスフィッツやスーサイダルのファンがまともにピエロの演奏聞くとも思えないし、暖かく迎えるとも思えないもん。だったら目一杯毒づいて噛みついて、いい意味でも悪い意味でも印象づけちゃったほうが勝ち、という考えもありだとは思う。その場にいたピエロ・ファンの結束を固めることもできるし。まぁそんな計算まで働いた末の発言かどうか知らないけどね。ま、ロック・ファンにもいろいろいるってことで(ピエロがロックかよ、っていう突っ込みはナシね)。


13日(金)

 ケンタッキー・フライドチキンのテレビCFありますよね。「ざくうま、ジュワ辛」ってやつじゃなく、「ケンタッキーは誰が育てたのかわからない鶏は使っていません」ってやつ。あれはその前のヴァージョンの「契約農家が作った最高級ハーブ鶏(ハーブ草をまぜた飼料で育ててるって意味)を使用してます」に呼応してるわけなんだけど、CFをよくみると画面の隅のほうに一瞬「一部店舗ではハーブ鶏を使用しておりません」と出る。てことは、一部店舗では「誰が育てたかわからない鶏」を使用してるってことなのかな。前からそれが気になって仕方ないのだよ。なんで全部の店舗でハーブ鶏使わないんだろ。自分がいつも利用してるケンタで「誰が育てたかわからない鶏」を使用してたらカンジ悪いよなぁ。さぁ、あなたも勇気をふるって訊いてみよう。「この店では、最高級ハーブ鶏使ってますか、それとも誰が育てたかわからない鶏使ってますか?」

 まぁ誰が育てたかわからなくても、曲がりなりにも鶏肉ならまだいいというハナシもあって、そういえばむかしマクドナルドのハンバーガーはネコの肉使ってるって噂がたったことありましたよね。友だちのイトコがネコの肉さばいてるとこ見たとか、店の裏口に回るとネコの骨が捨ててあるとか。ぼくが大学生のころからある都市伝説のたぐいだけど、いまハンバーガー一個80円とかで売ってるのみると、ほんまにウシの肉だけなんかい、と突っ込みを入れたくなるよね。

 デヴィッド・ボウイの新作『hours……』(日本盤9/29発売)が到着。さっそく聞くが……ウ〜〜〜ン……むずかしい。はっきり言って地味です、相当(ぼくにとって地味という言葉は、必ずしも悪口ではありません。派手の反対語ぐらいの意味です。念のため)。イギーの新作と同時発売らしいけど、揃いも揃って地味というか、これほど内省的な内容になるとは……すくなくとも前作のような「新しいもの好きで、次にナニやるのかわからない」というボウイの姿(それは彼本来の魅力のひとつだと思うけど)はありません。いよいよロック界も老人力が席巻するか?


12日(木)

 一日、フジロックのルポほか原稿書き。電話やメールでの打ち合わせが数本。片っ端から新譜試聴。まぁ言ってみれば音楽評論家の平均的な一日であった。そのときそのときではいろいろ考えることはあったが、いざ日記に書くとなると何も浮かんでこない。こうクソ暑いとアタマが正常に働かんわ。

 ウッドストックのテレビ放映は今日正午ですべて終了。一応全部録画したんだけど、どうやって見返す時間を作ろうかと思案中。こういうのって経験則からいうと、録ったきりで一度も見ないってケースが多いんだよね。このあとはフジロックの放映も控えている。ロックのテレビ番組というとNHKヤングミュージックショーぐらいしかなかった時代からするとまさに隔世の感があるが(トシがバレバレ)、なんかロックの映像のありがたみって、ほんとに薄れたと思う。WOWWOWは頑張ってくれたと思うけど。

 ついに野村監督がギブアップ宣言。メイの反乱、ブロワーズの解雇、選手やフロントとの意志疎通のなさ。基本的には、いままで甘やかされるばかりだった選手と、旧来のやり方を変えようとしないフロントへの身の処し方をまちがえたということだろう。地元のファンも失望しているだろうが、一番がっくりきているのは野村監督自身だろう。おだてたりくさしたり、いろいろやっても効果がない。すべては来年以降だが、でもトシをとって以前のような粘りもなくなってきているようにも思えるのが心配だ。サッチー騒動が影響を及ぼしていないわけがない。あ〜〜あ、ダイエーの監督がノムさんなら、心から応援できるのに。ノムさんもさしてプレッシャーも感じずのびのびできるのに。今日のダイエー・西武戦をテレビでちらりと見たら、ダイエーの打者は「松坂はタマも走ってないし、大したことない」とか言ってたらしいが、結局は完封負けだぜ。打率2割に満たない打者が4番打ってあれだけ勝ってるんだから大したもんだけど、すこしも楽しくないしときめかないよ。別にダイエーが強くて勝ってるんじゃなくて、他球団がだらしないから勝たせてもらってるだけ。セ・リーグからどこが出てくるかわからないけど、どこと戦っても惨敗はうけあいでしょう。

 東芝EMIのズボンズ担当で、カナダ出張でもご一緒した黒田さんからメール。ズボンズの近況と現在の絶好調ぶりがよくわかる内容なので、本人の了解のうえ、以下に転載します。

小野島さん、こんばんわ

出張とかいろいろお忙しそうですね。
暑さも増し増しな今日このごろ、いかがお過しでしょうか。

ズボンズがおかげさまで無事ツアースタートし、私はもうすっかり地方に行きっぱなしです。
札幌に始まり、今日現在で3本終え、明日は仙台です。
初日札幌は、本当に皆様にお見せしたかったくらい、良いライブでした。
今まで私が見た中でも最高の出来だったと思います。
先月観て頂いたリキッドでのライブと比べても既に段違いに良くなってきています。
それでも、松尾から「何言ってるんですか、今後も成長の一途ですよ」と頼もしいコメントも貰い、担当ながらも毎回楽しみです。

来月3日のツアーラスト前日の新宿リキッドは、オープニングアクトにDMBQが正式決定しました。
これまた楽しみです。
小野島さんもお忙しいとは思いますが、是非また足をお運びください。

だんだんともに過ごす時間も多くなり、お互い話すことといえば今夜のごはんは何だろうということばかり。まるで食いしん坊万歳みたいになってきている私とズボンズの面々in地方ですが、今後とも宜しくお願いいたします!

それでは、また。
お体ご自愛ください。

黒田康子


今日の1枚:ペドロ・ルイス&パレーチ『全部1レアル!』(東芝EMI)


11日(水)

 暑い暑い。文句を言いながら、一日、この日記のオーストラリア滞在記や、別コーナーのフジロック体験ルポを執筆。まぁ一筆書きみたいな内容なので、文章の乱れ等はご容赦ください。自分がいかに体力の落ちたトシヨリになってるか痛感した3日間だった。メールやBBS2などで感想を寄せていただけると幸いです。そんなわけで、日記のほうはこれぐらいでご勘弁を。


10日(火)

 約1ヶ月のアメリカ旅行から帰った平野和祥さん(元『炎』誌編集長)と長電話。むこうでは「ウッドストック」をはじめいろいろ見てきたらしい。まだまだ音楽でこれだけの人たちを動かすことができるという感慨、またメタルもパンクのオルタナ/グランジもすべて、いともたやすくクラシック・ロック=歴史のひとつとしてしまうアメリカのロック・シーン/音楽産業の強靱さなどを実感しての1ヶ月であったようだ。相変わらず明晰な分析と幅広い視野、ニュートラルな視点の鋭さは健在で、今後、平野さんにはこのHPにもいろいろな形で協力していただけると思います。ご期待ください。なお「ウッドストック」のレッチリの暴動のときは、メガデスを見ていて見逃したそうだ(笑)。

 ライヴのダブル・ブッキング。今日はKYON&ブラック・ボトム・ブラス・バンドとシャーベッツ。オーストラリア出張がなければ昨日シャーベッツ、今日BBBBの予定だったが、やむなくBBBBは断念、シャーベッツへ。感想はといいますと……なんだかんだ言っても、やっぱオレは浅井健一が好きなんだなぁと痛感した。ブランキーが好きなのは、もちろん照ちゃんや達也も大好きなんだけど、やっぱり浅井健一がいるからこそなんだと。当たり前のことっちゃぁ、当たり前のことなんですけどね。最初は、なんてヘボなバンドなんだと呆れていたんだよ。もちろんそれはブランキーと比較しているからなのだが、そのうち、浅井のヴォーカルとギターが鳴っているだけで、それだけで十分じゃないかという気になってくる。いやむしろ、この不器用でシロウト臭いバンドだからこそ、照井=中村という最強の豪腕リズム隊では見えにくい、浅井の不器用な心情の屈折が伝わってくるような気もしたのだ。ハードな曲よりもソフトな曲の方が、それは一層強く感じられた。またギタリスト浅井の腕の確かさも再認識した。

 とはいえ、メンバー同士のバランスが、技量的にも器量的にもまるでとれていないことは明白で、バンドとして長続きするとはやはり思えない。そうした不安をうち消すように、ステージ上で浅井は「シャーベッツはこれからも続くから、待っとってね」というようなことを話していたが、シャーベッツの限界を誰よりも痛感しているのが浅井のはずである。

 終演後、打ち上げをパスしてワッツインエス副編集長・鮎澤さんと、同誌平林嬢と近くの居酒屋で飲み。平林嬢は我が「音楽ライター養成講座」の受講生であり、また宴会部長でもある。佐藤英輔さんと並ぶ業界ライヴ最多出席を誇る鮎澤さんは、知る人ぞ知るプログレ・マニアで、もはや世界各国のおもなプログレはコレクトし尽くしてしまい、いまの収集の対象はフュージョンものなんだそうだ。面白い男である。南米のプログレを集めまくるうち、そのうちのひとつにカエターノ・ヴェローゾ(だったと思うけど)が参加していて、ブラジル音楽にすんなり入り込んでいった話や、プログレの変拍子攻勢は、ブラジル音楽やアフリカ音楽のリズム・グルーヴ、さらにはテクノやドラムン・ベースのダンス・グルーヴと基本的には同じである……というような説をぶちあげていた。おもしろいなぁ。膨大なライヴ鑑賞もそうだが、なんでそういう博識や経験が「エス」の誌面に反映されないかなぁ、とソボクなギモンに思う。どうもこの人は自分の趣味性とエスの編集はまったく切り離して考えているらしい。音楽誌の編集なんて、自分の趣味性を反映させなきゃやり甲斐ないだろうに、とぼくなどは思うが、仕事と趣味を直結させたせいで音楽に情熱を失っていった人を何人も見ているだけに、案外、かしこいやり方なのかもしれない。繰り返すが、おもしろい男である。深夜12時をまわり、鮎澤さんはタクシーで会社に帰っていった。いや、ごくろうさま。


9日(月)

オーストラリア・ツアー日記 その4

 わずか睡眠2時間あまりで起床、6時半にロビーに集合して空港へ。チェックインして免税品店などをあさり、9時の飛行機で一路東京へ。午後5時に到着、帰宅したのは7時半ぐらい。時差がほとんどないので時差ボケの心配はないが、やはり肉体的にも精神的にも疲労度は移動距離と時間に依ると思う。週末毎の出張も応える。真夏のうだるような暑さから初春なみの肌寒さ、そしてふたたび真夏の気候と、極端な温度差も手伝って、フジロック帰りの先週ほどではないにせよ、疲れた。

 わずか2泊4日、2つの街をチラリと見ただけでえらそうには言えないが、オーストラリアはとてもいい国。お金の心配がなくて、言葉の不自由さえ気にしなければ、のんびり暮らすには最適だと思う。いまはシーズンオフなので、夏(つまり日本の冬)になれば日本人観光客がうじゃうじゃいて意気阻喪しそうだけど、英米にはもう飽きたという方には、オーストラリア、おすすめします。来年はシドニー・オリンピックだから、もっと盛り上がるだろう。

 帰宅して雑用を片づけ終わってから、酒を飲みながら、ウッドストックのテレビを見る。ぼくが見始めたころ、ちょうどP・ファンク・オールスターズのライヴが始まった。テレビのお上品な録音では、彼ら特有の粘っこく熱っぽいリズムの魔力があまり感じ取れなかったが、終わりそうで延々と終わらないオーガズムのような魅力は伝わってくる。クリントン翁も健在である。しかし途中で睡魔が襲ってきてどうにもならず、あとでビデオ鑑賞することにして寝る。


8日(日)

オーストラリア・ツアー日記 その3

 朝11時半にホテルのロビー集合だったが、旅行者の常、はやく目が醒めてしまい、ホテルの回りを散策。おとといまでは雨で肌寒かったらしいが、昨日今日と快晴で、小春日和といった趣。半袖のTシャツでもよさそうな陽気だ。二日酔い気味でアタマが痛むが、朝の空気を吸い込むうち気にならなくなってきた。

 日曜日ということもあってか、フリーマケットなども開催され、街はすっかりなごみモード。東京やニューヨーク、ロンドンなどのような北半球の大都市のせわしなさや緊張感など、まるで感じられない。こんな環境では出てくる音楽もちがって当然だし、ニック・ケイヴやジム・フィータスのような人(彼らはブリスベン出身じゃないけど)が故郷を捨て、ロンドンやニューヨークに移住してしまったのもわかる気がする。

 あてもなく歩いているとさっそくロック専門の割合マニアックなCD屋を発見、リガージテイターの出たばかりのシングルを購入。新品CDの価格は、ヨーロッパがそうであるように、日本と変わらない。さらに歩くとかなり大きな中古盤屋を発見。通りから少し入ったところの2Fにある目立たない店で、われながらよく発見したと思う。このあたり、どんな国に行ってもレコード屋だけはチェックを欠かさないオタクの野生のカンと自画自賛(^_^)。アナログ、CD、ビデオに加えポスター、Gパンなど古着まで扱っている店で、店内は雑然としているがいかにも掘り出しものがありそうな雰囲気。価格もかなり安い。とくに7インチ・シングル・コーナーは食指をそそられたが時間が迫っていたのでサクサクは断念。もう2度と訪れることもないだろうこの中古屋で、とんでもない珍品が埋もれているんではという疑念は晴れないまま(笑)、ホテルに帰る。

 ホテルにはリガージテイターのマネージャーのポールがクルマで迎えにきてくれた。今日はブリスベンからクルマで3時間ほど行った海岸町・バイロン・ベイでリガージテイターとオーディオ・アクティヴのライヴがあるのだ。道すがらリガージタイターのヴォーカル/ギターのクァン(イースタン・ユース似)とベース/ヴォーカルのベン(ベン・リー/ベック似)を拾っていく。さらにリガージテイターの新作アルバムの音を聴いていないとぼくが言うと、わざわざマネージャー氏の自宅まで寄って大量のサンプル盤をピックアップしてくれた(マネージャー氏の奥さんと息子にも会う。息子は3歳ぐらいで可愛い)。クァンはライヴ等での印象とはすこしちがい、落ち着いている。声も渋いバリトンでかっこいい。それでいて態度はフレンドリーというか、気負いも媚びもなく自然体で、ゆたりしている。好感の持てるヤツ。日本で一番売れているロック・バンドはどれぐらい売るんだと聞くので、グレイというバンドとビーズというバンドは5ミリオン・コピーを日本だけで売るんだと言うと呆れたような顔となり、どんな音楽なんだと聞くので、ビーズは70〜80年代ハード・ロックだというとさらに呆れたような表情となった。グレイの説明に困ったのだが、ヴィジュアル重視のポップ・ソングだというと、ヴィジュアルというところで納得したようだ。どうやら日本でヴィジュアル系なるジャンルが大人気なのは彼らも知っているらしい。来日したときにテレビなどで見て説明されたのだろう。

 今日彼らに対面取材する予定なので、もらったサンプルCDを車中で試聴。深澤さんの持っていたディスクマンで聴く。はっきり言って、アーティストがすぐ横で見守っているとこで、ニュー・アルバムの試聴をするというのはすんごくプレッシャーである(^_^)。現地でも発売前で、日本のレコード会社にカセット・コピーも届いていないこの新作、おそらく日本人で耳にするのはぼくが初めてだろう。すんげえ緊張しながら聴くが、悪くない。というか、前のアルバムよりサウンドが整理されまとまりがでて、彼ら独自の音楽が確立しつつあるような印象を受けた。最近スクエアプッシャーが気に入っているというクァン君だが、なかには曲の途中から歪んだドラムン・ベースになり、ぐちゃぐちゃのノイズになって終わるもろにスクエアプッシャーふうな曲もあり、まだまだ英米の最先端音楽に対して冷静に対処しきれないところが未熟であり微笑ましくもあるが(オーストラリア人の英米の音楽に対する接し方は、日本人に似てると思う)、基本的にブリスベンの土地柄を反映したゆったりした空気感があり、東京やロンドンやニューヨークの音楽みたいな殺伐としたとこや退廃的なとこや性急なとこがない。それが物足りないという見方もあると思うが、のんびりした山中のハイウエイをずんずん飛ばしていくクルマでは、とても心地よいです。もし感想を求めたらどうしようと思い、乏しすぎる英単語をあれこれ思い出しながら考えをまとめようと思うが、だんだん眠気が襲ってきた(^_^;。しかしオトナな彼らはとくに感想を求めることもなく、CDの3回目のリプレイが終わるころ現地に到着。

 ブリスベン周辺の海岸地帯はサーファーズ・パラダイスと言われるぐらいで(ゴルフの本場でもある)、サーフィンのメッカなのだが、バイロン・ベイもそう。ヒッピーが集まる土地でもあり、実際ゴア・トランスのパーティーもあるらしい。こじんまりとした街は、(すごく誤解を招く言い方をすれば)清里の街を南国ふうにして、ガキっぽさといかにもな観光地臭さを一切排除してオトナっぽく、しゃれた感じにして、ヒッピーふうの手作り店を増やした、というところ。マイアミとかこんな感じなのかもしれないが、成金臭さは一切なく、ビンボー人もそれなりに過ごせそうだ。観光地というよりは静養地といった感じで、すごく落ち着く。欧米人は人生設計がしっかりしていて、50歳過ぎたら一切仕事をやめ気候温暖な土地で悠々自適に過ごす、というライフスタイルが定着しているが、さしずめここなどはそういう用途には最適だろう。といって町中は年寄りばかりというわけでもなく、若者も多い。日本人旅行者もいる。

 今日の会場は、地元のホテルの1Fに併設されたクラブで、大阪のクアトロぐらいの大きさ。今日のチケットはソールド・アウトらしい。こんな街にそんなに客がいるのか。着いたのが2時半ごろで時間があったので、町中をブラブラしていたらカフェでお茶していたナナオさん(オーディオ・アクティヴのドラマー)に呼び止められ、同席。ウエイトレスにきれいなおねえさんが多いなと思ったら、街を一巡りして、一番目の保養になりそうな店を選んだんだそうだ(笑)。ナナオさんはメンバーのなかでも一番気さくで話しやすい。そのうち同席者のひとりがバイオ(カメラつき)を持ち出し、操作を始めると、物珍しさに人が集まってくる。ウエイトレスのおねーさんも、仕事のフリをして様子を見に来る。集まった客の一人は、あれこれ機種について質問を始め、メモまでとってる。モバイル自体はそうでもないにしろ、カメラつきはまだまだ珍しい。海外で注目を浴びたいなら、最新のバイオ。これに限ります。相手が撮られているという自覚なしに撮れるのがいい。動画もOKだしね。ぼくも欲しくなってしまった。

 彼らと別れ、近くの海岸へ。さすがに冬だから人はそんなに多くないが、こっちは長袖のパーカーを着ているのに泳いでいる人もいるし、サーフィンしている元気な人もチラホラ。真っ青に澄み切った空、寄せては返す波、少し肌寒いがきれいな空気……完全になごみムード。いい場所だなぁ。以前フリクションが北海道の港町をツアーしたとき、あまりにのんびりした街で、海岸を眺めながら自分たちは一体ここでどんな音楽をやればいいんだと自問自答したことがあるとレックが言っていたが、ここもそんな感じ。人のココロをささくれ立たせたり、イライラさせたり、落ち込ませたり、暴力衝動に駆り立てたり、そんな要素が皆無なのだ。ハッパかなんかやってひたすらまったりしていたい感じ。さて、ここでオーディオ・アクティヴはなにをやるのか。

 街から戻り、しばらくしてサウンド・チェックの合間を見てリガージテイターの取材。相手はイースタン・ユース君とベック/ベン・リー君。30分足らずの時間、通訳はオーディオ・アクティヴのマネージャー氏で、とても突っ込んだ話はできなかったが、それでも彼らののんびりしたキャラクターはよくわかった。オーストラリアでじゅうぶんな成功をさめ、さて新作ではいよいよ世界進出への意欲でも語るのかと思ったら、そんなギラついたところは全然ない。イギリスやアメリカのバンドとは、音楽面でも、プロフェッショナリズムという点でもまだまだ差があると認め、そんな彼らの音楽に強く惹かれ影響されながらも、自分たちはあくまでもオーストラリア/ブリスベンという土地に根ざした音楽をやっていきたいと語る彼らに、浮ついたところも気負ったところも全然感じられない。

 バックステージでビールをチビリチビリやっていると、今日の一番目のバンドであるソーマ・ラサ(SOMA RASA)が演奏を始める。ステージそでで見ていただけだが、これが意外にいい。ターンテーブルとドラム、エレクトロニクスの3人で、ダブ/テクノ/ヒップホップが合わさったようなダンス・インスト音楽をやる。こっちの方がオーディオ・アクティヴに合っているようだ。演奏に緊張感もあるし、エスニックな要素を取り入れた音楽性もオリジナリティがある。オーストラリア盤CDも出ている(Shock RecordsV-11)。これもブリスベンのバンドらしい。

 そしていよいよオーディオ・アクティヴの登場。バックステージから客席に戻り、聴く。音響は昨日より全然いい。音がダイレクトにカラダを直撃する感じだ。フロアは最初閑散としていたが、演奏が進むにつれ徐々に埋まり出す。昨日と同じように、ロックっぽい展開になるあたりからフロアは一杯となって、みんな激しくカラダを動かしている。ギター、ベースがほぼ正式メンバーと同じような扱いとなって音が分厚く、しかも切れ味豊かになって、びしびしと直撃してくる。そこらのインダストリアル・バンドなど足元にも及ばないようなヘヴィネスがすごい。うん、これは気持ちがいいぞ。最後は大歓声&拍手で終了。

 そして最後にリガージテイター。ここでもすごい人気で、楽曲に対する反応はヴィヴィッドだし、実になごやかな盛り上がり方。かなり速いパンク曲でも、ヴァイオレントな感じにならず、健やか。パンクのタテノリとヒップホップ/エレクトロのヨコノリが同じセットで同居するのも、不自然でなく楽しい。客もそれに違和感を持つことなくついていっている。ギターを弾きまくって絶叫するとこと、マイクをひっつかんでラップするとこが隣り合わせなのも、ひとつのスタイルとして、むしろレコード以上にすんなりと受け止められた。正直言ってお手本のブラーやビースティに比べればまだまだだけど、好感度はアップした。うまくすれば新作の国内盤は年内に出るかも。その動き次第では来日もあるだろう。

 終了後楽屋裏にいくと、酒やらなんやらですでにメンバーやスタッフはすっかり御機嫌状態。このバイロン・ベイという土地柄ゆえか、解放感もあるのだろう。しばらく歓談したあと、一路ブリスベンへ、片道3時間をかけて戻る。軽い興奮状態にあったせいか、隣席に深澤さんととりとめもない雑談をあれこれ。小腹がすいたのでブリスベンの街でセブンイレブンでも探して食べ物でも買おうと思ったが(この国は基本的に治安が良好らしく、24時間営業のセブンイレブンはいたりところで見るし、深夜までふらふらしている若者も多数。ただし、深夜の飲み&食べもの事情は、やはり東京の便利さにはかなわない)、結局そのままホテルに直帰。シャワーを浴びてベッドに入ったのは深夜3時半ごろだった。なんか、あっという間の2日間だったなぁ。


7日(土)

オーストラリア・ツアー日記 その2

 ブリスベンと言ってすぐイメージが浮かんでくる人がどれだけいるんだろうか。オーストラリアの地理にはほとんど無関心・無知だったぼくは、せいぜい「オーストラリア大陸の右上に位置する町」ぐらいの印象しかなかった。オーストラリアのアーティストでも、ブリスベン出身はサヴェイジ・ガーデンぐらい。馴染みがないのである。だが昨日の日記でも書いた通り、シドニー、メルボルンに次ぐ大都市なのだ。そしてリガージテイターはこの地の出身なのである。

 ここは日本の裏側だから、当然いまは冬。だがブリスベンはオーストラリアのなかでも熱帯〜亜熱帯に属するクイーンズランド州の州都であるからして、気候はかなり暖かい。最低気温は10度前後、最高気温は20度前後。約9時間ほどの飛行を経て午前7時過ぎに到着した街並みをみて、深澤さんが発したのは「ハワイみたいですねぇ」だった。ぼくはハワイに行ったことがないのでよくわからないが、南国の観光地っぽい雰囲気が似ているということなのだろう。実際、半袖のTシャツで歩いている人も多い。

 ホテルにチェックインして(このホテルがまたちょー豪華だった。あとで調べたら、現地でも格式の高い5星ホテルらしい)、一休み。午後になってあたりを散歩する。土曜日ということもあるが、全体に街がのんびりしている。アクセク働いている人など全然いないみたいだ。しかも町中はとてもきれいで、全体になんともいえない高級感が漂っている。近隣にゴールド・コーストやサンシャイン・コーストといった有名なビーチ・リゾートがあるこの街は、ハワイのようなツーリスト向けの観光地というより、金持ちが集まる静養地といった感じなのかも。そういえばかの矢沢永ちゃんが、スタジオだかホテルだかをたてるために預けた30ン億円をだまし取られた事件があったけど、あの建設予定地が確かゴールド・コーストだった。

 ホテルは川沿いにあり、隣には大きな公園がある。そこのベンチに座って川面を見ていると、とても仕事にきたとは思えないゆったりとした気分になってくる。空気もきれいだし、人々の表情も穏やかだ。東京とは全然ちがう。

 そうこうしてるうち、現地のワーナーの担当者とのミーティングの時間となり、ホテルへ戻る 。本当は空港でぼくらをピックアップするてはずだったのだが、どうやら寝坊したか忘れたかしたらしい。それでも特に悪びれる様子もないのが、どうもブリスベン流な感じ。そのまま今日のライヴ会場へむかう。会場名はですね、え〜〜〜と、いま資料が出てきません。ステージ幅はリキッド・ルームと同じぐらいで、キャバレーかナイトクラブを改造したらしい会場は決してきれいとは言えない(まぁ英米のクラブも似たようなものだが)。いまをときめく人気バンドの地元でのライヴの割にしょぼいが、これはシングル発売にともなうツアーだからこんなものなので、アルバム発売ツアーだと会場もアリーナ・クラスになるらしい。

 リガージテイターのマネージャーなどを紹介されるうち、やがてオーディオ・アクティヴの連中が到着。挨拶もそこそこに、早速サウンド・チェックが始まる。考えるまでもないことだが、オーディオ・アクティヴのようなバンドの場合、音響の善し悪しはライヴにおいて決定的な意味を持つ。3ピースのパンク・バンドとはまるでちがう意味で、ライヴ音響には精密で繊細な気遣いが必要なのだ。第3者的には退屈とも思えるが、スネアのカン高い音やベードラの深い音が刻々と変化していくさまは興味深いものだ。

 やがてサウンド・チェックも終了、メンバー、スタッフをまじえ、近くのシーフード・レストランで食事。海老も蟹もうまいが、とくに日本のうまい店と比べて際だっていたわけではなく、むしろワインが飲みやすくおいしい。調子に乗ってどんどん飲んでいるうちにどんどん酔いがまわってくる。酔いがまわるにつれ気分もどんどん高揚してくる。たまたま同席したオーストラリアの音楽ジャーナリストみたいな人とすこし話をしたが、かの地ではボアダムズの知名度はかなり高いらしい。またクルーの人にリガージテイターの印象を聞くと「トライセラトップスみたい」という。ううむ??

 かなり酔いのまわったカラダでライヴ会場に戻る。会場はすでに超満員。年齢層はかなり若めだが、意外に幅広い。女子率非常に高し。ぼくと同じように飲んでいたのに、たちまちテキパキと仕事に戻るクルーの人たちに感嘆しながら、ビールをチビリチビリ。十分に休養をとったつもりだったが、夏風邪が治りきらずフジ・ロックの疲れのとれないカラダで9時間の長旅はすこしきつかったみたいだ。ちょっと気分が悪くなってきたところでオーディオ・アクティヴのライヴが始まる。詳しくは後日雑誌記事で書くと思うので、簡単に。

 この日街のCD店では彼らのチラシが貼られ、CDも平置きにされていたとはいえ、たぶん99%の人がオーディオ・アクティヴ初体験だったはずだ。予想通り最初のうちは反応はあまりよくない。しかしそんなことは意に介さずといった様子で、飛ばしまくる。マサのカリスマを帯びたパフォーマンスも健在。彼らが次第に音に没入していく様子がわかる。音響はそれほどいい方ではないが、それでも十分に刺激的な音だ。会場も次第にヒート・アップし、後半のギター・リフをフィーチュアしたロック的な曲になると、ようやくフロア全体が沸き立つような動きを見せ始める。オーディオ・アクティヴのロック的側面を強調したパフォーマンスであるように見えた。最終的には会場は大拍手と歓声で終わったけど、日本ならダイブ連発になりそうな充実した演奏に、この反応ではやはりすこし物足りない。サポートではこんなものかもしれないが、最大の原因は、どうやら客層が合わなかったかららしいというのは、このあとに出たリガージテイターでわかった。

 とにかくポップ。元気。明るい。レコード同様いろんなサウンドが間髪入れず繰り出されるのだが、そのどれもが、本格的に深く突っ込んだマニアックな展開でもなければ、対象に対しての屈折もひねりも感じられない、きわめて素直でまっすぐな取り入れ方。ひとつひとつの演奏はへたではないし、それなりに弾けてもいるのだが、どうも彼らの意図が読みとれない。パンクのあとはテクノ・ポップ、オルタナティヴ、エレクトロ・ヒップホップ、ディスコときては、彼らのアイデンティティはどこにあるのかと思いたくもなる。

 だが見ているうち、彼らの魅力もわかってきた。キャラクターがすごく可愛い。可愛いだけでなく、イマドキな身の軽い若者らしいかっこよさもある。イースタン・ユースの人みたいな黒ブチメガネの東洋系のギタリスト/ヴォーカリスト、ベックとベン・リーを足して2で割ったようなイマドキの若者顔をした白人のベーシスト、香港の映画スターにいそうな二枚目顔のドラマー(これもアジア系)と、ルックスのバランスも面白い。バラバラな曲調も、よく聞けば人懐っこくわかりやすいメロディという共通点はしっかりあって(かなり高速なハードコア曲でも、それはある。なじみのヒット曲では女の子を中心に大合唱がおこっていた)、どうやら彼らは「オーストラリアのブラー」といった存在なのではないか、という気がしてきた。いろんな音楽をどん欲なまでに取り入れ自分にものにしていくが、決してマニアックにならず、おしゃれでかわいい。ハードコアとヒップホップやディスコ/ハウスを節操なく行き来するセンスはビースティの影響をうかがわせるのだが、彼らよりずっと小動物的でスマート、そしてなにより、ブリスベンのアーティストらしいゆったりしたおおらかさがあるのだ。でもまぁ、このキャラクターではオーディオ・アクティヴと合うはずがないし、チャキチャキのロック・ファンが集まる客層もすこしちがうだろう。その意味でこのツアーのブッキングの意味を少し考えさせられたのだが、いずれにしろとても貴重な体験ではあった。

 とはいえ、そういう感想はあとから浮かんできたもので、その場ではオーディオ・アクティヴのドープなビートとの違和感、齟齬感に馴染めなかったし、なにより疲れと酔いで聴いているのが辛いという状況だった。リガージテイターのライヴが終わり楽屋裏にいくと、すでにオーディオ・アクティヴのメンバーは帰ったあと。ぼくたちも宿に急ぐ。まだ明日があるのだ。疲れきったカラダはなにより睡眠を欲していた。

 ということで、翌日に続く。 


6日(金)

オーストラリア・ツアー日記 その1

 2週続けての週末出張。まぁフジ・ロックは楽しみたいという気持ちが強かったし、実際半分以上は仕事を忘れていたけど、今回はそういうわけにもいかない。

 現在オーディオ・アクティヴの新作『Return Of The Red I』は世界十数カ国でリリースされているが、そのうちの一国であるオーストラリアでコンサートが決定。当地の人気バンド、リガージテイターをヘッドライナーとしたツアーで、彼らはフジ・ロック後すぐに渡豪し、現在オーストラリアの主要都市を巡回中だ。取材の話はもともとリガージテイターの現地でのレーベルであるワーナー・オーストラリアからきたらしく、リガージテイターの新譜発売(現地では今月下旬にサード・アルバム発売)の日本向けのプロモーションに、オーディオ・アクティヴの豪州ツアーの取材もかねて来ないかという話だったようだ(……と思う)。つまりオーディオ・アクティヴとともにリガージテイターへの取材も兼ねた出張である。

 ところが恥ずかしながらリガージテイターについては、取材できるほど知識があったわけではない。しかし彼らはすでにオーストラリアでは2枚のアルバムを発表、とくにセカンドの『UNIT』というアルバムはオーストラリアのナショナル・チャートで4位まであがるベスト・セラーとなり、先日おこなわれたチベタン・フリーダム4カ国同時開催コンサートのシドニーでトリをつとめたほどの人気者なのだ。あわててそのセカンドを聴き返してみるが、パンク、80年代ニュー・ウエイヴ、テクノ・ポップ、オルタナティヴ、ファンクなどがごっちゃになったサウンド。よくいえばバラエティに富んでいるが悪く言えば散漫でなにをやりたいのか掴みかねる音。正直言ってレコードを聴いただけでは、当地での人気の理由がはかりかねるのだが、どうやらその秘密はライヴにあるらしい。ぼくは見なかったが、彼らは過去に来日したこともあり、とくに雑誌「スヌーザー」のイベントで演奏したときはなかなか好評だった……というようなことをイーストウエストの担当者と電話で話し、情報収集。オーディオ・アクティヴのほうは、海外でのツアー経験も豊富な彼らだけにパフォーマンス的な興味もさることながら、現地の客がどのように彼らのドープなサウンドを受け止めるのか興味がある。

 あれやこれやと準備しているうち出発時間となり、成田に向かう。同行するのはオーディオ・アクティヴのレコード会社、ドリーム・マシーンの深澤さん。夜9時45分発の日航で一路オーストラリアへ。むかうのはオーストラリア第3の大都市、ブリスベンだ。



5日(木)

 午後、広瀬陽一さんが来訪。彼が編集請負いしているクルマ雑誌のカルチャー・ページで、広瀬さんとぼくが対談して音楽・映画・文学など、さまざまなカルチャー現象をナデ斬りするというコーナーをやることになって、今日はその1回目なのだ。今日のお題はフジロック、スティングの新譜、赤瀬川源平の「優柔不断術」、スタジオジブリ「となりの山田くん」から「オースティン・パワーズ・デラックス」まで。テーマは「老人力」かな(笑)。このトシになると人ごとではない(^_^;。広瀬さんはぼくとちょうど釣り合いのとれるスパーリング・パートナーという感じで、話をしていて楽しい。もちろん文章家としてもたいへん優れた人だが、非常に幅の広い趣味人でもある。

 いきなり急な話だが、週末に海外出張となった。オーディオ・アクティヴのオーストラリア・ツアーの同行取材。金曜夕方に出発して月曜夕方に戻るという強行スケジュールだ。したがってその間のHPのメンテやメールの返事等はできません。ご迷惑をおけかしますがよろしく。


4日(水)

 どのみち仕事が一段落すると、どんなに遅い時間でも必ず飲んで寝るし、就寝時間は毎日明け方近い。だからと言って同じ時間まで外で飲んでいると、疲れ方がまるで違う。まして夏風邪と蓄積疲労のトリプル・パンチで体調は最悪。夜はライター講座だったが、どうにも覇気のない講義をしてしまい、受講生には申し訳ないことをした。まっすぐ帰ればいいものを、またまた酒宴につき合い、またまた深夜まで。講義の最中は半死状態だったのに、ビールを流し込むうちだんだん好調になっていくのだから始末に負えない。帰宅後は原稿。アルコールが入っているから当然効率は悪い。そのうち睡魔が襲ってきて、またも予定の原稿は先延ばしに。オレって馬鹿かも(>_<)。



3日(火)


 渋谷オンエア・イーストでソウル・フラワー・ユニオン。ほかのコンサートと重なったり、所用があったりで、ここのとこ彼らのコンサートはことごとく見逃していた。大熊亘が加わってからの彼らを見た記憶がないので、少なく見積もっても数年ぶりということになる。久々の彼らの印象は、世界中と見渡してもこんなユニークなミクスチュア音楽をやる連中はどこにもいない、というものだった。その比類なき個性にさらに磨きがかけられ、パワー・アップしている。好き嫌いは別として、いまのソウル・フラワーは、一度はナマで見ておくべきだろう。

 そのあとの打ち上げ1軒目で、石田昌隆さん、岩崎真美子さん、鈴木茂さん(音楽之友社)、伊丹英子と同席。岩崎さんとは、ここで書くにはちょっとはばかられるような話になったのだが、世の中にはいろんな人がいるしいろんな生き方があって、それはそれで全然OKなんだけど、自分にとっての利用価値だけでつき合い方を変えたり、つき合う相手を選んだりするような生き方だけはすまい、と改めて思った(岩崎さんのことじゃないですよ、念のため)。上昇志向は結構だけど、他人を踏み台にするようなやり方は、必ず当人に返ってくるんだから。我が身を振り返り、改めて考えさせられたのだった。

 そこで退散すれば良かったのだが、中川敬センセイから「次いくで!」と肩を叩かれ、2軒目に向かい、そのまま朝まで(^_^;。原稿あるのに(泣)。2軒目は中川敬、スヌーザー田中宗一郎さん、唐沢真佐子さんらと同席……という、傍目から見れば相当に濃いメンツとなった。そこで中川から聞かされたソウル・フラワーを取り巻く現実状況に、またまた考えさせられてしまった。日本の音楽業界の現状はおかしい。そういう現実を前にして何をなすべきなのか。田中さんとぼくの立場のちがいはそれで、会うたびに議論になるんだけど、なかなかこれといった有効な手だては浮かんでこない。もちろん「スヌーザー」のようなやり方もあるだろう。でもあれがベストだとも言い切れない。ぼくは一介の書き手であり、自分が言いたいこと、書きたいことを書ききれる環境さえあれば、それ以上を望む気はない、正直言って。業界を良くしようなんて世直し的発想もまるでない。でも、ミュージシャンたちの苦境を目の前にして、ほおかむりするわけにもいかないのは当然である。いまのぼくには一体何ができるんだろうか。むずかしいなぁ。


2日(月)

 深夜苗場から帰宅。すぐ就寝したものの、一晩寝たぐらいではまったく疲労が抜けず。寝不足のうえ夏風邪で体力が落ちているカラダで3日間のフェスは本当にきつかった。往復8時間のクルマの運転も応えた。10年前、いや5年前と比べても、同じことをしても疲労度は倍になっている感じだ。現場にいる最中は、楽しくてさほど感じなかったのに。もう若くないんだと痛感した(>_<)。おまけにフジ・ロック総括原稿はこの日の夜が締め切り。スマッシュのサイトを見て、参加者の声などをチェックしているうちに猛烈な睡魔が襲ってきて、つい居眠り。気づいたら夜で、あわてて原稿をまとめる。フジロック前に書けないまま積み残していた原稿も山ほどあるのだが、疲れのため書く速度は極端に落ちている。いかんなぁ。帰ってきて初めての日記で、こんな愚痴めいたことは書きたくないんだけど。正直、これを書くのもつらい状況です。

 ということで、小野島によるフジ・ロックのレポートは、近いうちに必ずアップしますんで、ご容赦を。次に出るミュージックマガジンでフェス全体の総括的な文を書いたので、ここではもう少し細かいアーティストの演奏や会場の様子などをドキュメント風に書こうかと思ってます。でもその前に、あしたもあさっても原稿だぁ〜〜〜(泣)。


1日(日)

 フジロック3日目。ちょー疲労。