Diary 1998

休刊寸前の『ミュージックライフ』誌で連載していた「記怒愛楽」なる日記形式のコラムです。
当時つきあいのあった人をけっこう実名でバンバン出しているので、今となっては結構差し障りがあるかも。
まずいようなら連絡ください。即刻対処します。

◎3月4日(水)

 池袋のWAVEでジョイ・ディヴィジョンの 「ハート&ソウル」、マニー・マークやファン・ ダ・メンタル、プライマル・スクリームなどのシングルのほか、テクノ〜ジャングル〜アブストラクト もののCD(すべて輸入盤)10数枚ほどを買う。

 プライマルは近々日本盤が出るらしいが、デジ・ パックが欲しいので輸入盤で購入。「ヴァニシン グ・ポイント」からの曲だが、なんとマイ・ブラデ ィ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズのリミックス。ロック界きってのナマケ者ケヴィン君も、心境の変化か金に困ったのか知らないが、最近さまざ まなアーティストのアルバムに参加している。なか でもこれはマイブラを思わせるサイケデリック・ノ イズ満載の力作で、かっての名作「グライダー」ア ンディ・ウエザオール・ミックスを思わせるヘヴ ィ・アシッドなダンス・チューンに仕上がっている。 最近聴いたイギリスのロックでも飛びぬけて強烈だった。当然、絶えて久しい本家マイブラの新譜が気 になるわけだが、いつのことになるやら。そのジラ シ加減は、もう5年以上も続巻(第41巻)の出ない 「ガラスの仮面」(美内すずえ)並みであろう。

 夜は講師を務めている「音楽ライター講座」の講 義のため西武百貨店内の池袋コミュニティ・カレッ ジへ向かう。2年前から続いているもので、本誌で も書いている山田敏之さん、石井恵梨子さんはこの 講座出身だ。今日のテーマは「インタヴューの実 際」。受講者同士で実際にインタヴューしてもらい、 それを原稿にまとめてもらうという段取りである。 俺も受講者のひとりから取材を受ける。

 通常の文章修行とちがいインタヴューばかりは実 践を繰り返すしか上達の道はない。他人の仕事ぶり を参考にしようと思っても、編集者出身でもない限 り同業者の取材の様子を見る機会もない。俺自身、 我流で押し通してきたに過ぎないし、はたして自分 のやり方が正しいかどうかもわからない。ただ自分 が取材を受ける立場になると、インタヴュアーのう まいへたが如実にわかって面白い。

 その晩の夢は、過去俺が取材したことのあるミ ュージシャンたちが集まり、俺の仕事ぶりをあれこ れ寸評しているというもの。目が覚めたら冷や汗を かいていた。

◎3月5日(木)

 東京ドームでU2を見る。入場するまでの長蛇の 列にうんざり、実際に席について、ステージの遠さ にげんなり。だがコンサートの内容は素晴らしいの 一言だった。

 アリーナ後方各所にはPAスピーカーが据えられ、 一階席からでも音響は明瞭。ステージ後方の巨大ス クリーンにはさまざまな映像が間断なく映し出され る。ステージの上のU2たちも映るが、その映像に もさまざまなCG処理を施し、ただのステージ実況 に終わらせない。決して客を飽きさせず、巨大スタ ジアムというおよそ非音楽的な、そしてもっともコ ミュニケーションに向かない会場で、いかに自分た ちの音楽を伝えていくか、メッセージを届けるか。 その課題から逃げず、いかにもこの人たちらしく愚 直とも思える正攻法で取り組んだ結果が、これだっ た。さまざまな枝葉が本質を見えにくくしているか もしれないが、大切なのは一片の歌でありメロデ ィーであり言葉なのだ、と。そういう呼びかけさえ、 俺には聴こえたのだ。その圧倒的なポジティヴィテ ィ。エッジが弾き語る「サンディ・ブラッディ・サ ンディ」には感動した。

 会場を出ると雪。凍てついた風景がどこまでも似 合うバンドである。

◎3月6日(金)

 渋谷のタワーレコードでプッシー・ガロアの89年 の未発表ライヴ「Live:In The Red」を発見、即購 入。いまとなってはジョン・スペンサーの元いたバ ンドというぐらいの意味しかないが、いわゆるニ ューヨーク・ジャンクの帝王として、当時はソニッ ク・ユースと同じぐらいの評価を受けていたのだ。 久々に聴いた彼らの音は、期待にたがわず存分にコ ワレきったジャンク・ロケンロールであった。

 ほかにコントゥアーズなど古いR&Bのリイシ ュー盤、テクノ関係の新譜を何枚か購入。プラステ ィックマンの「Concept 1」、ドイツのトレゾー・ レーベルの編集盤など。なかでも興味深いのが、ジ ェフ・ミルズなどのハードコア・ミニマル・テクノ で有名なトレゾーの最新コンピレーションが、ハウ スものだったこと。あの頑固一徹のトレゾーにして そうなんだから、ホントにハウスは「来てる」のか。 ちなみに最近日本盤のコンピレーションも出たニ ューヨークのハード・ハウスのレーベル「プログレ ッシヴ・ハイ」も面白い。

 プラスティックマンは一昨年から出していた12イ ンチ・シングルのシリーズをCD化したもの。アナ ログのシングルを聴く習慣のない俺は途中で買い続 けるのを断念していただけに、このCD化はありが たい。中身はいかにもこの人らしいアブストラクト でエクスペリメンタルなミニマル・テクノ。ダイナ ミック・レンジが広い録音で、特に低域の効いた曲 でヴォリュームを上げるとスピーカーがビリビリと 歪んで、俺をビビらせる。もう15年近く前に買った オンキョーのMONITOR500というスピー カーで、濁りのないシャープな音が気に入って愛用 してきたのだが、もうそろそろ寿命かもしれない。

 タワーを出てチャイナ・クラブというレストラ ン・バーに向かう。今回のリニューアルを機に大幅 に入れ替わった本誌スタッフを慰労する会に出席す るためである。俺が本誌OBで音楽ライターの赤尾 美香さんに持ちかけ、実現したものだが、せいぜい 20〜30人規模の内輪の会のつもりだったのが、フタ を開けたらなんと百人を超す大パーティーになった。 しかし、電話で「オノジマです」と名乗っても「ノ ジマさん?」と聞き返されるほど言語不明瞭で、ラ ジオのDJをやれば「何怒りながら喋ってるんだ よ」と言われるほど無愛想な俺が司会だから、結果 は推して知るべしだ。とはいえ、増田前編集長以下 旧スタッフ、森田編集長以下新スタッフにも温かい 拍手が送られ、無事に会は終了。今度こそ内輪だけ になった2次会で、本誌ワタナベをからかって遊ぶ。 3次会はカラオケ。退職した前編集三ツ木彩子嬢が ここで爆発、延々と歌いまくっていた。俺は森進一 「北の蛍」で対抗。聴きものはかのハードコア評論 家行川和彦センセイのカルチャー・クラブ「カーマ は気まぐれ」であった。

◎3月8日(日)

 70年代の伝説的なバンド、外道の再発CDのライ ナーを脱稿する。フリーあたりを思わせる骨太な演 奏は素晴らしいが、たった1年2ヵ月ほどの間に4 枚のアルバムを出し、しかもそのうち3枚がライヴ という、信じられないほど粗雑な制作態勢が、この バンドの寿命を短くしてしまったことはまちがいな い。だがこの時代の日本のロックって、たしかに未 熟だが、実に清々しい。ロックで金儲けしようなん て誰も考えてない、考えられない時代だったからか。

 夜は東京ドームでエアロスミス。それまでの武道 館のコンサートをそのままスタジアムで展開してい るだけで、スタジアムという場所でどのように見せ るか、聴かせるか、コミュニケーションするかとい う工夫が足りない。音の悪さもそうだが(コンサー ト開始当初は特にひどかった)、ただ客をたくさん 詰め込める会場、という以上の意味あいが薄いのだ。

 それを抜きにすれば、さすがにエアロである。売 り物であるウラ声のシャウトを、ゴマ化すことなく 要所できっちりと聴かせ、ステージの端から端まで 走り回って、飛んだり跳ねたり踊ったりしても息が 切れない体力を維持し続けるには大変な努力が必要 なはずだ。もう50歳近いはずのスティーヴン・タイ ラーは、いまだに客の需要に逃げることなく百%応 えようとしている。まさにプロである。ウラ声のシ ャウトができなくなっても仕方ない、それに応じた 音楽をやるさ、というミュージシャンは正直かもし れないが「プロ」ではない。客に望まれているとわ かっていてもあえて封印して、ちがうことをやろう と野心を持つのは「アーティスト」ではあっても 「エンタテイナー」ではない。だがエアロは「プ ロ」の「エンタテイナー」なのである。

 帰りに評論家の保科好宏さんと会い、お願いして おいたナイン・インチ・ネイルズのヴィデオ 「Closure」を受け取る。あまりの過激さに(?)日 本発売が見送られてしまったいわくつきの作品だが、 全編見所だらけの問題作。とくにライヴは圧巻だ。

◎3月9日(月)

 長年の付き合いだったソニー・マガジンズの編集 者・芳賀崇氏が異動でJスカイBの制作会社に移る ことになり、内輪で送別会を開く。約10年前、会社 員をやめてフリーになったばかりのころ、この人に はずいぶん世話になった。俺が初めてやった日本人 インタヴューはジュン・スカイ・ウォーカーズで、 この人の仕事だった。ほかにもクスクスとかバクチ クとか、俺の音楽嗜好からすると多少ズレているの だが、あのころはいまよりずっと真面目に、熱心に 仕事をしていたような気がする。もちろんいま手を 抜いてるわけじゃないが、少なくともいまジュンス カの取材をやったとしても(もう解散してるけど)、 あのときほどひたむきにできるかどうか。ライター としての俺の「青春時代」だったのかも。

◎3月10日(火)

 渋谷WAVEでシュガー・エクスペリメント・ス テーション、ケヴィン・ソンダースンの2枚組レ ア・テイク集などを購入。最近テクノ関係はこれと いって食指をそそられるものが少ない。

 青山のワーナー・ミュージックでボアダムズの取 材。立ち会った「スコラ」編集の谷口正幸さんと仕 事をするのは初めてだが、俺が数年前「ミュージッ クマガジン」の日本のロック評をやっていたとき、 Xジャパンのアルバムに1点(10点満点で)をつけ て酷評したのを見て、俺のことを気に留めていてく れたらしい。Xがもっとも勢いがあったころだった だけに、いまだに思わぬ人から「あれは痛快でした ね」と言われる。Xに限らずいろんなバンドを酷評 (もちろん絶賛もしたが)したので、「マガジン」 の評をやっていたころは本当にいっぱい敵を作った。 さるマンチェ系バンドなど、いまだに俺のことを 「ブッ殺してやる」と息巻いているらしいです。

 久々に会ったボアダムズは口数も多くなり、なに か吹っ切れた様子。新作「Super Are」は約2年半 ぶりのアルバムだが、その間のボアの集大成のよう な内容になっている。ライヴでは毎回驚倒するよう な壮絶なパフォーマンスを見せている彼らだが、お そらく本作は彼らの最高傑作というだけでなく、内 外を通じて今年度を代表する1枚となるだろう。テ クノもエスノもロックもノイズもトランスも超えた、 スーパー・フューチャー・ファンク。ヤマタカEY Eの才能は、本当にすごい。

◎3月12日(木)

 たまっていた原稿がようやく一段落、手付かずに なっていた新譜の試聴テープや見本盤などを片端か ら聴きながら、確定申告の準備。フリーランスの人 間にとっては国税還付金はボーナスのようなもので、 面倒な反面楽しみでもある。音の方はとっかえひっ かえの末、キング・サニー・アデの新作「オドゥ 〜」に落ち着き、深夜まで繰り返し聴く。全盛期を 過ぎたとはいえ、独特の重量感は変わりない。

◎3月13日(金)

 1ヵ月ぐらい前からコツコツと続けていたCDの 整理がようやく終了。「通販生活」で<スライド式 CDラック>を購入して、部屋のあちこちに積み上 げられていたCDの山が、やっときれいになった。

 この仕事をやっていてもっとも深刻な問題は、増 えるばかりのCDの管理をどうするかである。1日 中探しても目的のCDが見つからず、必ずあるとわ かっているのに仕方なく新たに購入した、というこ とも1度や2度ではない。これからはそういうこと も少なくなる……はずである。しかし、1枚残らず 整理しても、まだ何枚か見つからないのはなぜだろ う。誰かに貸したままになってるのか。う〜〜む。

 それにしてもこれだけ量があると、もう2度と聴 かない、仕事等でも使わないであろうCDもたくさ んある。そのスペースが馬鹿にならない。なにぶん ウサギ小屋住まいゆえ、同業者が集まると必ずこの 話題になり、共同で倉庫を借りて各人が不要なCD を持ちより、自由に借りられるようなシステムにし よう、などという案も出るのだが、なにぶん口ばか りで実行力のない連中ばかりなので、実現する見込 みはゼロであろう。

 購入したスライド式CDラックは、ブックマンの 丸伸製。俺は同社のスライド式書棚をCD用に流用 していたのだが、これはCD専用だから使い勝手が よろしい。一三九二枚収納で5万9800円と価格 が高いのと、実際に見ると妙に背が低く(高さ一四 二センチ)、空いた上の空間が中途半端なのが難点。

 夜は本誌レヴューの原稿書き。夜中の12時過ぎか らソニック・ユースの新譜を聴き始め、どんどん音 量を上げていったら同居人が怒鳴り込んできた。

◎3月16日(月)

 UAとCoccoの新作を聴く。UAは前作同様 あれこれ多彩な音で、これもできます、あれもでき ますといった作り。もちろん基本的なアーティス ト・ポテンシャルは高い人だから聴き応えはあるが、 悪くいえばやや散漫。もう少し焦点を絞って、シン ガーとしての彼女をきっちり見せてもよかった。同 じレーベルのCoccoはUAに比べサウンド的な 応用力は狭いが、表現の密度、深度がある。スピー カーの前に正対して聴かなきゃ、と思わせる腕力は、 最近の日本の女性歌手としては出色。

◎3月17日(火)

 ニューヨーク出身のドラムン・ベース・アーティ スト、ジェイミー・マイヤースン(白人)の新作 「ザ・リッスン・プロジェクト」を繰り返し聴く。 ドラムン・ベースも、いわゆるテクステップといわ れるハードコアでエクスペリメンタルなものと、ポ ップ指向のものに分化してきているが、これは後者 の典型。ゆったりとたゆたうようなメロディアスな サウンド、ソフィスティケイトされたヴォーカルな ど、J−WAVEあたりでウケそうな作りだが、デ ィテールの凝った音作りは意外に聴きどころが多い。

 夜は東京ドームでストーンズ。ほとんど期待して いなかったのだが、すごく良かった。過去3回の来 日で一番感激した。とくにウエブ・ページでリクエ ストを募ったという「メモリー・モーテル」には泣 けた。スタジアムの特性を把握しきった演出の巧み さは、やはり一日の長がある。アリーナの真ん中に 設営されたスモール・ステージで演奏してみせると いう観客との距離の取り方の巧みさは、U2と同じ という舞台監督の功績か。それにしてもキース・リ チャーズはロック界最大のキャラクターと実感。彼 がニカッと笑うたびになんとも幸福な気分になる。 ミックを嫌いな人はいても、キースを嫌いなロッ ク・ファンはいないのでは、と思う。  あまりの気分良さに、グッズ売り場で散財、その ままアルコール摂取に突入。ビール、日本酒、ワイ ン、カクテルとチャンポンで飲み、久々に泥酔する。

◎3月18日(水)

 池袋WAVEでカンのホルガー・シューカイと エアー・リキッドのドクター・ウォーカーの共演 盤、トーマス・ヘックマンのエイジの新作、スキ ントのコンピレーション、DJスプーキー、クリ スチャン・マクレーのベスト盤、アンディ・ギル やジョン・ケイルがプロデュースしたジーザス・ リザードのシングル、ノーマン・クックがリミッ クスしたコーナーショップのシングルなどを購入。 とくにジャーマン・テクノの大御所トーマス・ヘ ックマンは久しぶりにテクノらしいテクノを聴い たという感じ。シンプルだが表情豊かなハード・ アシッド・トラックスが心地よい。DJスプー キーは7曲入りEPだが、アヴァンギャルドなダ ブ〜ヒップホップ〜ジャングルで聴き応え十分。

 コーナーショップはあとで日本盤が出ることを 知ってシマッタと思うが、微妙に内容が異なるの で納得。輸入盤で何の気なしに買ったものがあと で見本盤が送られてきて無駄になる、ということ は多い。ちょっと前までテクノ〜ハウス系に関し ては日本盤が出ることなどほとんどなかったから あまり悩むこともなかったが、最近はそうでもな くなってきた。それだけちかごろの日本盤はマニ アックなものまで発売されるようになったわけだ が、にも関わらず輸入盤を買う量が一向に減らな いのは困りもの。しかもその大半はまったく仕事 に結びつかないで終わるのである。

 夜は恒例の音楽ライター講座で、池袋へ。今日 は昨年9月から始まった期の最終日。

◎3月19日(木)

 業界内では数少ない友人のひとり、百瀬良彦か ら彼が今度手がけるという新人のプレゼンを受け る。生ギターを弾きながらふにゃふにゃと歌う徳 永憲という26歳のシンガー・ソングライターだが、 フォークというよりヴェルヴェット・アンダーグ ラウンドやギャラクシー500あたりに近いサイ ケ・ギター・ポップ。サウンドのセンスもいいが、 特に詞が抜群に面白い。こじんまりとまとまらな いスケールを感じた。カルト・アーティストに終 わる危険性もあるが、大化けの可能性もありそう だ。夏ごろにミニ・アルバムが出るらしい。

 そのあとシスコ渋谷店でセンセイショナル、チ ューブ、ウルトラマリン、トリッキーのホワイ ト・ラベル12インチ、ポーティスヘッドのシング ルなどを買う。センセイショナルはニューヨーク のアンダーグラウンド・ヒップホップ・アクトだ が、ダーク、ヘヴィかつアヴァンギャルドなアブ ストラクト・サウンドで、ラッピンもドスが効い ていてカッコいい。むかしオルタネイティヴ・テ ンタクルズから出ていたビートニグスの98年版と いう感も。でもこういうのって、我が国のヒップ ホップ村では全然相手にされないんだろうなぁ。 ほかにはニューヨークのエイフェックス・トゥイ ン、チューブのアルバムがクルっていて最高。

 渋谷旭屋書店で最相葉月のノンフィクション 「絶対音感」を買う。日常の生活音にまで音程を 聞き取る耳を持った人たちの話。こういう人たち って、最近のヘタウマ・ロックなんて気持ち悪く て聴いていられないにちがいない。

◎3月22日(日)

 ミュージック・マガジン4月号のペイジ&プラ ントの記事にがっくり。筆者の大鷹俊一さんはス ティーヴ・アルビニの日本での評価について 「いーたかないが一人(注・大鷹さんのこと)で 旗振ってきたのはわかってる人はわかってるはず で」と書かれている。なんで「一人で」なんて言 い切れるんだろうなぁ。大鷹さんの功績や熱意は 誰もが認めることなんだから、いまさらこんな自 己アピールなんて必要ないのに。

◎3月23日(月)

 各誌レコード評など終日原稿。ピート・タウン ゼントの娘エマ・タウンゼンドと、ゆらゆら帝国、 ユナイテッドの新譜がよし。

 水曜日の取材に備え、電気グルーヴのまりんこ と砂原良徳のソロ新作も聴くが、予想をはるかに 上回る大傑作で驚いた。「ドリーミング」のころ のケイト・ブッシュのようなパラノイアックな作 品で、音楽の概念に真っ向から挑むような、まさ にキチガイと紙一重の意欲作。この人の異能はも しかしたらヤマタカEYEクラスかも、と思う。

◎3月24日(火)

 本誌先月号にも紹介されていた青森在住のバン ド、スーパーカーを聴く。19曲74分はちょっと ツー・マッチだが、この種のUKギター・ポップ 系バンドとしては出色の出来。ライヴもいいらし い。ただしライナー・ノーツはひどい。ベタつい た感情移入と安直な連帯感を強いる押しつけがま しさに満ちていて、うんざりする。それともこの バンドのファンは(スタッフやアーティスト本人 も)、この青臭さを気取ったあざとさ丸出しの文 章に感動してたりするのか。

 夜は赤坂ブリッツでオーシャン・カラー・シー ンを見る。もちろん悪くはないし、誠実なステー ジさばきには好感が持てるが、いかにも優等生的 で、これと言ってアピールするものがない。いろ いろいいところがあるのに、すべての点で平均点 どまりで、印象が薄いのだ。惜しいバンドである。

 そのあと評論家の宮子和眞夫妻、ワ ッツイン・エス編集部鮎澤裕之氏と会食。途中か ら会社が近所の東芝EMI中村周市氏も加わり深 夜まで。金曜日に飲み過ぎでひどい目に会い、懲 りて3日間酒を断っていたのだが(ほとんど15年 ぶりぐらい)、結局元のもくあみであった。

◎3月25日(水)

 夕方から砂原良徳の取材。いきなりテンパって たらどうしよう、とおののいていたのだが、いつ もと変わらぬぽわ〜んとしたまりん節。先行シン グル「Tokyo Underground Airport」のアナログ 盤の凝りに凝ったジャケットにびっくり。

 夜は新宿リキッド・ルームで朝本浩文プロデ ュースのコンサート。ゲストに憂歌団、スピーチ。 J−WAVE主催のイヴェントだが、仕切の悪さ に激怒。憂歌団のしんみりしたアコースティック 曲の最中にバカ係員が再三再四「ここは通路です ので前の方に詰めてくださーい」と大声をあげる。 おまけにコンサートが終わると、いきなり規制退 場を始めて呆れさせる。東京ドームじゃあるまい し、せいぜい数百人規模のクラブで規制退場を強 制するバカがどこにいる。スピーチの演奏はピー スフルで愛に満ちた素晴らしいものだっただけに、 ちゃんとしたプロモーターの仕切りで見たかった。

◎3月26日(木)

 テレビ番組改編の時期で、1月期のドラマが 続々と最終回を迎えている。この日は「スウィー ト・シーズン」(TBS系)最終回。疑問点や納 得できない展開は多かったが、父親役の蟹江敬三 の好演でオトナの鑑賞にも耐える家族ドラマにな っていた。主演の松嶋菜々子もきれいに撮れてい たが、残念なのは妹役の矢田亜希子がやや精彩に 欠けたこと。この人は今回のようなイイ子ちゃん 役でなく、小生意気なコギャル役が一番はまると 思う。実は「愛していると言ってくれ」以来のフ ァンなもんで。

 深夜お笑い番組で千原兄弟の「メガネメガネ」 のネタを見る。一時俺が一番期待していた吉本興 業のお笑いコンビだが、東京進出後どうも冴えな い。ヴァラエティ番組の安直なくすぐりでなく、 久々にネタをやる姿を見たのだが、このネタ自体 数年前からあるもので、素直に笑えない。ロン ブーなんかよりはるかに器は大きいはずだけど…。

◎3月27日(金)

 「聖者の行進」(TBS系)最終回。「週刊文 春」を始めさんざんなバッシングにあっていたこ の番組だが、以前本誌にも書いた通り、基本的に は支持している。しかし最終回は実に安直な展開 でがっかり。多くの疑問点を積み残したまま、き れい事で終わらせてしまったのには納得できない。

◎3月30日(月)

 ブランキー・ジェット・シティのライヴ取材の ため、福岡出張。バンド・ブームのころはよく地 方出張をしていたが、最近はすっかりご無沙汰だ った。それほど忙しくない時期なら気分転換にな って楽しいが、いまの時期は痛し痒しである。

 しかしライヴは実に楽しかった。ブランキーの ライヴというと、客もアーティストもクールに構 えているという印象があったが、博多の客は熱 い! 興奮した客が係員の制止を振り切ってス テージの前に殺到、椅子席のライヴなのにダイブ が始まったのでびっくり。むかしはロック・コンサートといえばみんなこんな調子だったのに、警 備が厳しくなってお利口な東京の客はすっかりも のわかりが良くなってしまった。地方ならではの 光景と言えるのかも知れないが、ブランキー自身 にも、客と一緒に楽しみ、ヴォルテージを高めあ っていこうという余裕がうかがえた。エネルギー の一方通行でなく、相互作用が感じられたのであ る。夜は気分良く泥酔。

◎3月31日(火)

 夕方に帰京、その足で新宿ヒルトン・ホテルに 向かい、スマッシュ小川大八氏にミュージック・ マガジン誌の記事のため取材。今年のフジ・ロッ ク・フェスティヴァルの予定をはじめ洋楽プロ モーター界の興味深い話をいろいろ聞かせていた だくが、記事の構成上ほとんど活かせなかったの は申しわけなかった。

 帰りしなヨドバシカメラ新宿西口OA館でAT OK11を買う。 ワープロ・ソフト「一太郎」で 有名なジャスト・システムの日本語変換システム の最新版だが、さすがに日本語ワープロの先駆だ けあって使い勝手は抜群。これまではマイクロソ フトのIME97を使っていたのだが、完成度、語 彙の豊富さ、変換の効率の良さと的確さは比較に ならない。ワープロ・ソフトは通常の原稿執筆に は重すぎるので、秀丸(シェア・ウェアのエディ タ・ソフトの定番)を使っているのだが、ATO Kとの相性もなかなかいいようだ。

 さらに渋谷WAVEでコイルの新作(!)、オ ムニ・トリオ、ハウスのテリー・フランシス、ス ティーヴ・ストール、ストック・ハウゼン&ウ ォークマンなどを買う。なかでもミニマルの牙城 ノヴァ・ミュートから出たスティーヴ・ストール は抜群の切れ味。サウンドのヴァリエーションに も富み、この種のダンス・アルバムにしては曲の 質も揃っている。個人的には昨年のルーク・スレ イター以来のディスカヴァリー。

◎4月4日(土)

 夕方にいきなりカセット・デッキがぶっこわれ、 ライナー・ノーツ用に聴いていたソウル・アサイ ラムの試聴用テープを飲み込んだまま動かなくな る。アカイの製品だが、もう10年も酷使している んだから無理もない。調子の悪かったオンキョー のスピーカーとともに修理に出すことにする。ソ ウル・アサイラムは3年ぶりの新作だが、なんと クリス・キムゼイのプロデュース。そう言われて みればストーンズ風な箇所もある。アルバムの出 来そのものは前作よりずっといい思う。

 夜は音楽ライター講座の打ち上げ宴会。ところ が連絡用の携帯電話がいつのまにか壊れていた。 モノが壊れるという現象は連鎖するのか。

◎4月5日(日)

 いちいち書いていないが、毎週土日は自宅でP AT(パソコン通信を使った在宅投票システム) を使って競馬をやっている。原稿がある日は競馬 中継を見ながら書いているわけだ。購入スタイル は完全な穴狙いで万馬券しか買わないので、当た るときは必ず万馬券だが、当然ながら滅多に当た らない。

◎4月6日(月)

 雨の中、クルマで池尻の三菱電機のサービ ス・センター(アカイ製品の修理を受け付ける)、 渋谷のドコモ・ショップ、浅草橋のオンキョーの サービス・センターと回る。スピーカーはウーフ ァー回りのウレタンを張り替えるだけで済むよう だが、大阪の工場送りなので20日ぐらいはかかる とのこと。つまりその間はラジカセでしか音楽を 聴けない。

 途中渋谷のタワーで元テン・シティのバイロ ン・スティングリーのソロ、ミニマル・テクノの プラネット・リズム・レコードのコンピレーショ ン、品切れで買えなかったインメイツのファース ト再発などを入手。とりわけピース・フロッグか ら出たクリス・ブランの浮遊するディープ・ハウ ス・サウンドが素晴らしい。ムーディーマンの百 倍はいいと思う。早くちゃんとしたステレオの大 音量で聴きたい!

◎4月7日(火)

 プロ野球が金曜日から開幕している。我がホー クスはこの日までなんと3連勝。もっとも20年連 続Bクラスに沈んだ去年も開幕4連勝だったから、 全然アテにはならない。というより、心あるホー クス・ファンは、開幕30連敗ぐらいして、無能な 国民栄誉賞監督が更迭されることを望んでいる。 いやもっとはっきり言えば、親会社の経営不振が さらにエスカレートして、さっさとマトモな会社 に身売りしてほしいとまで思っているのである。 そんでもって監督は石毛、では当然なく、杉浦か 野村の復帰。これしかないでしょう。

◎4月8日(水)

 マッシヴ・アタック、レニー・クラヴィッツ、 カーリーン・アンダスンなどの試聴用テープがよ うやく届いたのでまとめて聴く。マッシヴは本人 たちの言葉通り、たしかに暗い。だがサウンドの 練り込みはさすがとしか言いようのない緻密さ。 レニクラは先月号にもあった通りファンク色濃い。 俺はこの人の作為が好きではないのだが、これは 多少なりとも自然体なノリが感じられ、好感を持 った。カーリーンはポール・ウエラーもプロデ ュースで参加しているが、肩に力が入りすぎて堅 苦しいウエラーより、個人的にはずっと楽しめた。

◎4月9日(木)

 ソニーの小沢暁子さんから電話があり、来週の 月曜にニューヨークでソウル・アサイラムの取材 をやらないかという。電話取材かと思ったら現地 取材だと。おいおい、来週月曜っていうと四日後 か? あわててスケジュール調整のためあちこち 電話をかけまくる。日曜日出発、水曜日戻り、帰 国したその足で池袋に向かいライター講座の講義 をするという強行日程。土日にゆっくりやろうと 思っていた本誌のオルタナ記事原稿も、出発前に あげなきゃならない。桜花賞もビデオ観戦になり そうだ。やれやれ。

◎4月10日(金)

 原稿、打ち合わせと終日走り回る。はたして原 稿は無事完成するのか?

◎4月11日(土)

 ソウル・アサイラムの取材で日曜日からニュー ヨーク出張の予定だったが、この日になっていき なりアーティストの都合で取材がキャンセルとな り、出張も中止となった。出張が決まったのが木 曜日、中止になったのが土曜日。トホホホホ……。

 夜は赤坂ブリッツでブランキー・ジェット・シ ティ。風邪で体調が悪かったらしく予定を2曲す っ飛ばしてのライヴだったが、演奏そのものは 荒々しくも素晴らしかった。

◎4月13日(月)

 やらなきゃいけないことは山のようにあるがさ っぱりやる気が起こらず、ザ・グルーヴァーズの 新作「Charged!」を繰り返し聴く。荒々しいロッ クのダイナミズムと輝かしいポジティヴィティを これほど鮮やかに打ち出せるバンドは少ない。

◎4月14日(火)

 本誌5月号に書いたソニック・ユースのレコー ド評について「曖昧だ」という指摘を複数の人間 から受けた。俺の文章をむかしから読んでくれて いる、信頼できる友人たち(3人)からの直言で ある。「お前の評はいつも白黒はっきりしてるけ ど、これ読んでもこのアルバムがいいのか悪いの かわからない」と言われ考え込んでしまった。あ えて弁解すれば、ああいう「生活雑音としての音 楽」に、白黒はっきりさせるような過度のダイナ ミズムは必要ないし似つかわしくない。もちろん 優れたアルバムなのだが、大上段に振りかぶって 大絶賛するものではなく、もっとさりげない日常 感覚のなかで、じわじわと良さをかみしめるべき アルバムなのだ。しかしそのあたりが言葉不足だ ったかもしれない、と反省。

◎4月15日(水)

 池袋のWAVEでミル・プラトーのオムニバス 2種、デイヴ・クラークとアズ・ワンのカーク・ デジョージョのDJミックス作など。スタジオK 7から出たアメリカのエレクトロニク・ミュージ ックのコンピレーションには、5月号のこの欄で も紹介したジェイミー・マイヤースンも参加して いるが、なかでは『メタル・ボックス』のころの PILみたいなDJスプーキーが秀逸だった。

 そのあと池袋コミュニティ・カレッジで音楽ラ イター講座。今日は4月から始まる期の初回だが、 前期を大幅に上回る47名という受講者が集まった。

◎4月16日(木)

 青山のワーナーでボアダムズの取材。先月に続 いての対面だったが、連日の取材攻勢にメンバー 全員疲れ切っている様子で、とくにEYEちゃん の憔悴ぶりは質問することもためらわれるほどだ った。「子供が遊んでるとき、何のためにそうし てるのか、なにが目的なのか、なんて考えないや ないですか。ぼくらも同じで、音楽やってるとき に何も考えてないですよ。それを、なぜですか、 どうしてですかって聞かれまくって、自己検証を 強いられるわけですよ。左脳使いまくり。それが つらい」と絞り出すように呟く彼の表情はうつろ で、なんだか自分がいじめっ子のような気がして きた。お互い仕事だから仕方ないんだけど……。

  ◎4月17日(金)

 渋谷タワーカフェで、ミュージックマガジン高 岡洋詞氏と打ち合わせ。仕事の話はすぐに終わり、 「マガジン」の現状など雑談をあれこれ。気がつ いたらコーヒー一杯で3時間も話し込んでいた。 この人と話すとどんなに忙しいときでも長話にな ってしまう。ちなみに高岡氏、見かけによらずカ ラオケが妙にうまい。

 帰宅してズボンズのマキシ・シングル「モ・ ファンキー」を聴く。これは最高。先月号93ペー ジでL7の連中は「ジャミロクワイみたい」だの 「イントロが長い」だの愚にもつかないことを言 っているが、P−ファンクとフェラ・クティが合 体して「悪魔を憐れむ歌」をやってるみたい、と いえば聴きたくなりますよね、みなさん?

  ◎4月18日(土)

 大槻ケンヂの新譜「スケキヨ」「アオヌマシズ マ」(ミニ・アルバム2枚)を聴く。つねづね 「すべてのアルバムは自分にとって遺書なのだ」 と公言している大槻らしい屈折しまくった世界観 がとことん味わえる。あぶらだこやホッピー神山、 三柴理プロデュースのぶっ飛んだサウンド・プロ ダクツも面白く、とくにホッピーのプロデュース したガスタンクのカヴァー「ジェロニモ」にはシ ビれた。自作曲では「埼玉ゴズニーランド」とい う曲がすごい。作家、タレント、ミュージシャン などさまざまな顔を持つこの人のカルト・マニア ックな側面を思いきり強調したものと言えるが、 といってひとりよがりなものにはなっていない。 そのへんのバランス感覚は絶妙。作為や計算はあ っても、嫌味に感じさせないのだ。

◎4月20日(月)

 恵比寿ガーデンホールでブルートーンズ、渋谷 クアトロでコーナーショップ、三軒茶屋ヘヴン ズ・ドアでアナル・カント。どれを選ぶか3秒ほ ど考え、アナル・カントに決定。自宅からチャリ で向かう。カメラマンの菊池茂夫さんとか、イラ ストレイターの切石智子さんとか、行きつけの輸 入レコード店店員だったイトウちゃんとか、ホッ ピー神山氏とか、久しくご無沙汰だった知人に大 量遭遇。メジャーなバンドのライヴでは決して会 わない人たちばかりである。うーん、みんなマイ ナー指向だなー。お互いさまだけど。アナル・カ ントはもちろんだが、たった10分弱で終わったヤ マタカEYEの新バンド(名前知らない)が最高 だった。詳しくはガッシュ第3号で。終演後ガッ シュ樋口康幸氏、鈴木裕子氏、ライター行川和彦 氏、石井恵梨子氏と深夜まで痛飲。行川センセイ の奇人変人ぶりを再確認した(^o^)。

◎4月21日(火)

 神宮前のユニバーサル・ビクターでARBの取 材。話もはずみ、そろそろ終わりにしようかとい うころになって、テレコの故障でまったくテープ が動いていなかったことに気づき、顔から血の気 が引く。平謝りに謝り、たまたまカメラマンの菊 池さんが持っていたテレコを借り、取材時間を伸 ばしてもらってどうにか格好をつける。石橋凌さ ん、KEITHさん、DOLL誌の相川さん、菊 池さん、レコード会社の方々、ご迷惑をおかけし て本当に申し訳ありませんでしたmm(_ _)mm。

◎4月22日(水)  友人の元宝島編集部・三嶽貴彦から誘いがあ り、元ポゴの良太の新バンド、ジグヘッドを見に 下北沢シェルターへ。ジョン・スペンサーと同じ ギター2本とドラムスという変則編成だが、ワイ ルドかつエネルギッシュなロックンロールで大熱 演。終演後、三嶽、ビクター安藤氏、鳥井賀句氏 と痛飲、深夜まで鳥井さんの独演会を拝聴。ほと んど相づちを打つだけで酒ばかり飲んでいたので、 すっかり酔っぱらってしまった。

◎4月23日(木)  

渋谷の紀伊国屋書店で近田春夫著「考えるヒッ ト」(文藝春秋)購入。「週刊文春」連載コラム の単行本化で、著者が毎週2枚の歌謡曲シングル をとりあげ、あれこれ論評するというもの。優れ たミュージシャンで、しかも屈指の論客でもある 筆者ならではの鋭い発想と視点に満ちていて、評 論家としてずいぶん刺激される。歌謡曲のみなら ず音楽評論というものに少しでも興味があるなら 必読だろう。ただ、単行本化に際して収録された 2本の対談はまったくの蛇足。とくに島森路子と の対談は本文記事の繰り返しが多く、本文記事を もとにさらに深く広く突っ込んでいくことをしな い(できない)島森の役不足・勉強不足が歴然と している。ナンシー関との対談というオイシイ企 画もただの雑談に終始していてもったいない。

◎4月24日(金)

 赤坂の東芝EMIでビースティ・ボーイズの 新譜の試聴会。あれこれ盛りだくさんな内容だが ビースティらしさは健在。一回聴いただけで即断 はできないが、期待にたがわぬ傑作とみた。

 そのあと新宿に出てシスコでマイク・パットン のミスター・バングルの初期録音集、プッシー・ ガロアの旧譜CDなど購入。

◎4月25日(土)

 自宅近くでミュージックマガジン野間易通氏と 次号記事の打ち合わせ。お題はなんと「なぜ私は フュージョンが嫌いか」だ。俺ってそんなに性格 悪いと思われてるのか(^_^;)。

◎4月27日(月)

 そのフュージョン記事のための資料あさりを兼 ねて渋谷のレコード屋巡り。タワー、ウエイヴ、 HMV、ユニオン、シスコ、テクニークと歩き、 アル・ディメオラやジョン・マクラフリン、ラ リー・コリエル、パット・メセニー、トニー・ウ ィリアムズなどを買いまくる。自分が金を出して 買うのは当然「よいフュージョン」である。原稿 のテーマからすれば、むしろクズをいっぱい買う べきだったのかもしれないが、さすがにそんなも んに金は払いたくないので、マガジン編集部に貸 してもらうことにする。

 ほかハードフロアのDJミックス、マッシヴ・ アタックのシングル(マッド・プロフェッサー・ リミックスがすごい)、「リバース・オブ・ザ・ クール」の第7集(ドラムン・ベース、トリップ ホップなどが主)、スパークスのヴァージン時代 のベストなど。60年代後半のマイルス・デイヴィ ス・クインテットの全セッションを集めたボック スに気をそそられるが、1万4千円という価格に 躊躇、見送り。

 レコード漁りの途中で東急ハンズの前を通った ら、女子高生が鈴なりになっている。誰かタレン トの出待ちでもやってるのかと思ったらハイロウ ズの甲本ヒロトと真島昌利が歩いてきた。一瞬コ ギャルどもは彼らのファンなのかと思ったが、み な知らん顔。気づいていて無視してるのではなく、 そもそも彼らが何者なのか知らないようだった。 もしバンド・ブームの最中にブルーハーツが渋谷 を歩いていたら大騒ぎになっていたろう。時代は 変わる。世代も変わる。それにしてもあのルーズ ソックスの集団は何をやってたんだ?

◎4月28日(火)

 渋谷クアトロでルナ。基本的にあまり好きなタ イプのバンドではないのだが、ライヴは良かった。 以前見たときよりはるかに好演だったと思う。

◎4月29日(水)  

終日フュージョン特集の記事執筆。ここ数日、 内外あわせて40枚近いフュージョン・アルバムを 朝昼晩と聴き続けて発狂寸前。

◎5月1日(金)   

 「花とゆめ プラチナ増刊」(すごいタイトル だな)で「ガラスの仮面」総集編を読む。雑誌に 掲載済で単行本に未収録の部分をまとめたもの。 ますます「紫のバラのひと」への恋心がつのるば かりの北島マヤと、芸獣と化した姫川亜弓を軸に 話は展開するが、亜弓さんが同じ劇団の後輩をか ばうために怪我を負って失明の危機に陥る、とい う展開は彼女の人物設定を考えるといまいち納得 しにくい。他人を思いやって自分が犠牲になる、 なんてキャラクターではないはずだけど……。

◎5月2日(土)

 赤坂のコロムビアでミッシェル・ガン・エレフ ァントの取材。立ち会ったUV誌編集西川綾子さ んから、元Xのhide氏の急死の報を聞き驚く。 直接の面識はなかったが、ついこの間電子メール でのアンケート取材をお願いしたばかりだった。 質問を送ってから1時間もしないうちに返事をい ただくなど実に律儀で丁寧な対応に恐縮したもの である。ミュージシャンとしても、実に才能のあ る人だったと思う。ご冥福を心から祈りたい。

◎5月3日(日)

 前日に続きミッシエル・ガン・エレファントの チバユウスケの取材。その後、立ち会ったレコー ドコレクターズ誌寺田正典編集長と近くの居酒屋 であれこれ雑談。久々にたっぷりと中身の濃い音 楽談義に花が咲いた。

◎5月6日(水)

 池袋で音楽ライター養成講座。なんと受講者は 最終的に49名に達した。前期比15名増である。こ れだけの人数をどうやって仕切ればいいのか。一 瞬不安がよぎるが、ま、なんとかなるだろう。小 学校の先生のご苦労がよくわかります。

◎5月7日(木)

 4月号の本欄の記述について、秋田県にお住ま いの46歳の主婦の方からお便りをいただき、返信 を書く。どういう形であれ、一般の読者の方から の反響はうれしい。65年からの本誌読者で、先日 のストーンズのコンサートにもわざわざ出向かれ、 あの伝説のジョン・メイオールやフリーの来日公 演(ともに70年)もご覧になっているという。う う、完全に負けているぞ。本誌読者にはこういう 筋金の入りまくったベテランのロック・ファンが 多いようだ。ヘタな原稿を書いたらどやされそう。 いっそう気合を入れて仕事せねば。

 スピーカー、カセット・デッキが修理から戻っ てきたので引き取りにいく。ついでに渋谷のさく らやでスピーカー・ケーブルも購入。ようやくマ トモなオーディオで音楽が聴ける。

 渋谷のWAVE、タワーなどでマックス・ブレ ナン(良質エレクトロニク・ポップ)、ドイツの ディー・ハウトのリミックス盤(リミキサーの顔 ぶれがすごい。ジム・オルーク、マッド・プロフ ェッサー、オヴァルから、なんとアラン・ヴェガ まで)、パシフィック・レコードのコンピ(デト ロイト・テイストのメロディアス路線。なかなか よい)などを購入。しかし最近テクノ関係の新譜 (CD)がめっきり減ってきたのが気になる。

◎5月11日(月)

 長めの原稿依頼がいくつかあり、まだ締め切り は先とはいうものの、直前になってバタバタした くないので前倒しで作業するべく仕事にとりかか る。しかし先週一週間サボったおかげですっかり アタマがなまっていて作業は一向にはかどらない。

◎5月12日(火)

 ……ということで気分転換を図るべく(^_^;)、 夕方から飲みに出る。

◎5月13日(水)

 終日二日酔い(=_=)。レコード・コレクターズ 誌6月号の佐野ひろし氏の論文を興味深く読む。

◎5月14日(木)

 周防正行著「『Shall We ダンス?』 アメリカを行く」(太田出版)を読む。映画監督 である著者が、自作『Shall We ダン ス?』の米公開に向けて奮闘する手記である。導 入部の、アメリカ向け短縮版編集を巡っての米側 スタッフとのやりとりは、一種の秀逸な比較文化 論になっていて興味深いが、音楽評論家〜ジャー ナリストとして身に積まされたのは、本書の大半 を占める、宣伝キャンペーンのため全米をまわり 各地のプレスや放送局から取材を受けまくるくだ り。毎日毎日繰り返されるお決まりの質問に答え るうち、テープレコーダーを再生するように答え も決まってくる。同じ内容でもインタビュアーの 技量や態度や媒体の力で、答える態度も内容もち がってくる。一見協力的に取材に応じてくれてい るミュージシャンたちは、インタビュアーとして の俺をどう思っているのだろうか。あーサムい。

◎5月15日(金)

 新宿リキッドルームでスピリチュアライズド。 あまりの素晴らしさに降参。ワタシ、思わず祈っ てしまいました。こないだ見たルナの百倍はいい と思った。早くも今年のベスト・ライヴに決定。

◎5月17日(日)

 池尻のポリドールでブランキー・ジェット・シ ティの取材。当初グループ・インタビューの予定 だったが、現場で交渉の結果パーソナル取材に。 3人一緒では喋りにくいことも一対一なら率直に 話してくれる。メンバー3人の微妙な立場と思惑 のちがいが興味深かった。

◎5月19日(火)

 渋谷にて、さきごろスティーヴィー・サラスの プロデュース/バッキングで快作『HEAVY  POP』を出したばかりの新進ロック・シンガー TAISUKE氏とサシで深夜まで飲む。アルバ ムでのワイルドなイメージとは裏腹に、実に謙虚 で生真面目な九州男児である。

◎5月20日(水)

 池袋のWAVEにいくと、いつもはガラすきの レジに長蛇の列で驚く。アイドル歌手のサイン会 でもやってるのかと思ったら、B’zのベスト盤 の発売日なんだと。ミリオン・ヒットとはこんな 風に売れるのかと実感する。3万枚も売れれば 「よく売れましたねぇ」などと関係者とヨロコビ あったりするようなマイナー・アーティストしか 縁がない当方には、まるで別世界。

 WAVEで購入したのはモンキー・マフィア (話題のダブ〜ビッグ・ビート新人。なかなかよ い)、バッファロー・ドーターに影響を受けたと おぼしい?ルイックというスウェーデンの新人、 テクノのトーマス・クローム、トリッキーのシン グル2種、プラスティックマンの新譜(あとで国 内盤が出ることを知る。ミル・プラトーあたりか ら出そうな音響ダーク・ミニマル)、スラップ・ ハッピーの新譜(これはマジ最高\(^o^)/)、 フォース・インクのコンピ、アシッド・ジャン キーズのDJミックスなど。

 夜は音楽ライター講座。

◎5月22日(金)  

 『スタジオボイス』6月号の松沢呉一氏の原稿 を読んで、またまた身に積まされまくる。空前の 不況にあえぐ出版業界の「末端日雇い労働者」で あるフリー・ライターのサム〜い実態を書いたも ので、松沢さんは俺と同年代なので話のひとつひ とつが痛すぎる。松沢さんはシャレで書いてるの かもしれないが、俺にとっては全然シャレになら ない。うーん、なんだか落ち込んできた。「どん なに落ち込んでる時でも、若い娘さんのケツやオ ッパイは素晴らしい」と松沢さんは言うけど、風 俗店に行かない俺はそんなの見る機会もないしね。

◎5月23日(土)

 ライター太澤陽さんの結婚パーティーに出席。 そのあと同席していたライターの岡村詩野さんと 飲みにいく。この日の話題は「音楽業界における 性差別について」。これ読んで“そんなことあん のかよ”とか他人事みたいに思ってるあなた。あ なたのことですよ。

◎5月26日(火)

 DOLL増刊「パンク天国」を購入。76〜82年 イギリスのアンダーグラウンドなパンク・バンド のレコード・リストで、装幀も含め何から何まで いかにもDOLLらしい、DOLLにしかできな い素晴らしい企画である。ただレコードやバンド の選択の基準がいまひとつはっきりしない。もち ろんすべてを網羅することは不可能だろうが、せ めて重要アーティストだけでも完全ディスコグラ フィを付けて欲しかった。あと、これはDOLL 本誌もそうなんだけど、人名やバンド名がカタカ ナ表記だったりアルファベット表記だったりして 統一されておらず、とても読みにくい。曲名はと もかく、アーティスト/バンド名はカタカナ表記 で統一して欲しい。読み方もわからないようなマ イナーなバンドならともかく、ピストルズやクラ ッシュまでアルファベット表記にするなんて、無 意味。日本人に読ませる文章なんだから。

 夜は赤坂ブリッツでマッド・カプセル・マーケ ッツ。悪いライヴではないのだが、ギターが長い 間ヘルプでの参加で、必然的にベースがリードを とる曲ばかりになって、流れが単調になりがちな うえに、打ち込みに依存しすぎてウネリのない速 い2拍子の曲が続き、コンサート全体、いまいち 起伏に欠けた感も。

◎6月2日(火)

 資料用のレコード購入のため渋谷のタワー、W AVEなど。ついでにジェフ・ミルズの最近のシ ングルを集めたコンピ、スピード・ガラージのタ フ・ジャムのDJミクス、ポール・オークンフォ ルドのDJミックス、リチャード・ジェイムズの コウステック・ウインドウ名義のコンピ、アレッ クス・マーティン、パープル・ペンギン・クエス チョン、ボビー・フォレスター、日本のテクノ・ アーティスト2種(キャプテン・ファンクとタン ツムジーク)なども購入。

◎6月3日(水)

 音楽ライター講座。今回はガッシュ編集部の鈴 木裕子・樋口靖幸両氏をゲストに招いて、受講生 の作品をあれこれ批評してもらった。プロの編集 者の意見は参考になったはず。

◎6月4日(木)

 ようやっと、殿下の『Crystal Ball』が到着。 注文するのが遅かったので心配していたのだが、 先着10万名のみというインストCDもちゃんとつ いてきてニッコリ。もちろんTシャツもある。店 頭版を意地張って買わなくて良かった。ただし丸 いプラ・ケースに5枚のCDが入ってるだけで、 ジャケットも何もなし。問題のインスト集ですが、 正直申しまして聴かなくていいです。

 夜は赤坂ブリッツでクラフトワーク。

◎6月7日(日)

 日比谷野外音楽堂でバッファロー・ドーターと フィッシュマンズ。バッファローのアルバムには フィッシュマンズのドラマーがゲストで参加して いて、この日も1曲だけ共演したのだが、フィッ シュマンズのドラマーが自分のドラム・セットを 叩き出した瞬間、スネアのピッチがバッファロー のドラマーと全然ちがうことが明白にわかって興 味深かった。フィッシュマンズ独特のあの空気感 の秘密は、スネアの「カン! カン! カン!」 というカン高い音に、その一端があるようだ。

 しかしこの日はとにかく寒く、フィッシュマン ズの途中あたりから、音楽を楽しむような状況で はなくなってしまった。アーティストの側もそれ を察知したのか、アンコールもなく、なんとなく 尻すぼみのまま終わったのは残念。

◎6月9日(火)

 終日、レコード・コレクターズ増刊『遺作』の 原稿執筆。物故したミュージシャンの遺作を通じ てミュージシャンの死にざまや死生観を考えると いうもの。この日は、なかなか手がつかずずっと 先延ばしにしていたカート・コベインの項を執筆。 さまざまな資料を読みあさり、ざらついたコベイ ンの声を繰り返し聴くうち、なんだかとんでもな く陰惨な気分になってしまった。

◎6月10日(水)

 知人から面白い話を聞いた。その人の友人のテ クノ系ライターが、数年前俺が監修したクロスビ ートのテクノ特集を読んで、こう吐き捨てたとい う。「鹿野はじめロッキン・オンのやつらや小野 島とかが書くテクノの原稿がなぜ面白くないかわ かるか? 俺から言わせればドラッグやらずにテ クノが理解できるわけがないし、そもそも書く資 格もないし聴く資格もないよ」。まぁ原稿が面白 いかどうかは読む人の判断だからいい。ドラッグ とテクノが切っても切れない関係にあるのも事実 だろう。だが「聴く資格も語る資格もない」とま で言われちゃうとはね。どう思います鹿野さん?

 だいたい、それ言い出したらドアーズとかジミ ヘンとか「サージェント・ペパー」のころのビー トルズとか、いわゆるサイケ期のロックはどうな るのか。どうしたって黒人にはなれない日本人が ブルースを聴くことはどうなんだ? パール・ジ ャムやニルヴァーナの音楽は幼少期にトラウマを 負ったアメリカ人の若者しか理解できないのか?

 音楽を聴く際にもっとも必要なのは想像力だろ う。アーティストと聴き手が異なる人間であり、 両者の知識や経験や感性を完全に共有することが 不可能な以上、その齟齬を補うのは想像力しかな い。異文化を理解し楽しむというのはそういうこ とだ。もちろんドラッグがその助けとなることは あるだろうが、それがなきゃテクノは理解できな い、という発想は自分の想像力の乏しさを告白し てるみたいなもんだと思う。

 もちろん個人の想像力では補いきれない、ドラ ッグという体験でしか飛び越えることができない ものがテクノにはあるのかもしれない。しかしそ の実感がノン・ドラッグな俺の文章に欠けている と言われても、なんとも答えようがない。だって 俺はテクノを通じてそんなことを書こうなんてこ れっぽっちも思ってないから。俺はテクノが大好 きだし楽しんでもいる。かのライター氏からすれ ば「理解」してないのかもしれんが、理解のし仕 方にもいろいろある。どれが正解ということはな い。音楽を聴くってそういうことじゃないの?

 はたして日本のテクノ界の人たちはどう考える のか。もちろんミュージシャンもメディアも建前 としては「ドラッグがなくてもテクノは理解でき る」と言うしかないはず。そのライター氏の発言 はプライベートの場だからつい出たんだろうが、 それだけに公の場では明かせない「本音」とみる べきだろう。これははたしてテクノ界全体の本音 なのか。ぜひ「エレキング」や「ラウド」の人た ちに論じてもらいたいものだ。

◎6月12日(金)

 大橋のポリドールでフィッシュマンズ佐藤伸治 の取材。会ったのは2回目だが、この人独特のキ ャラクターや考え方がわかったような気がした。 おそらく俺とは正反対のタイプの人間なのだが、 そんな人の作る音楽に激しく惹かれてしまうのだ から面白い。詳しくは「マーキー」第8号で。

 夜は恵比寿ガーデン・ホールでマッシヴ・アタ ック。どこといって悪いところはないのに、もう ひとつノレなかった。演奏などよくまとまってい るのだが、すべてが事前の予測の範囲内で完結し ていて、こっちの想像を上回るような突出がない。 なんだかスタイリッシュすぎて、ライヴならでは の破天荒さや意外性がなく、これなら部屋で電気 を暗くして聴いてる方がいいや、と思ってしまっ た。平たく言えばスカしすぎ、ということです。

◎6月13日(土)

 レコード・コレクターズ誌7月号所載の大鷹俊 一氏によるキンクス(レイ・デイヴィス)の記事 を読む。レイ・デイヴィスの自伝「エックス・レ イ」も読まずにレイのソロ・アルバム「ストー リーテラー」をレビューするのはおかしい、とい うのは俺も同感だが、次の部分はちょっと気にな った。「少なくともキンクス・ファンを名乗る人 間で(「エックス・レイ」を)読んでないなんて のは認めない」。いちファンがファンであること を他人に認めてもらうために、そこまで義務を負 わなきゃいけないとはね。「キンクス研究家」で あれば当然読んでおくべきだろうが、でも「エッ クス・レイ」はあくまでレコードの副読本であっ て、それが読まなきゃキンクスを楽しめない、わ からないなんてことは絶対ありえない。ミュージ シャンの本業は音楽をやること。そのレコードを 聴いて、好きになるだけじゃ「ファン」を名乗っ ちゃいけないのか。だいたい「認めない」ってど ういうこと? 単なるレトリックなのかもしれな いが、この居丈高な物言いはいい気分がしない。

◎6月14日(日)

 渋谷オンエア・イーストでクランプスとギター ウルフ。俺は去年同じ顔ぶれの全米ツアーに同行 取材して、都合5回ほど見ている。

 ウルフは新曲を披露するも、いつも通り。いつ、 どこでやってもウルフはウルフである。  最高だったのがクランプス。前回の日本公演は もちろん、アメリカで見た5回よりも断然良かっ た。ラックス・インテリアはいつも以上にブチ切 れていたし、ポイズン・アイヴィのクールな色気 もバッチリ。終演後ギターウルフのセイジと少し 話をするが、のべ3ヶ月近くクランプスと一緒に 回り何十回も見ている彼も、今夜が最高だったと 言っていた。開演前から気合が入りまくっていた そうだ。演奏やショウの形式はふだんとまったく 同じなのに心のもちようひとつで出来がまったく ちがってきてしまうのだから音楽は面白い。事前 の予測通り決まりきったことしかやらないという 点ではマッシヴ・アタックと同じだが、ようはそ こに「人間」が感じられるかどうかだろう。リズ ムのひとつひとつが生きていた。自然にノセられ てしまったのだ。これぞロックンロール、である。

 それにしてもポイズンはギターがうまい。そし て、実にいい音で鳴らしている。

◎6月15日(月)

 音楽ライター養成講座をやらせていただいてい る池袋コミュニテイ・カレッジの横山さんと打ち 合わせ。受講者の数が増えすぎたため次期の講座 は2コマに分けておこなうことになった。これで よりきめ細かい指導ができるはず。次の開講は10 月7日からだ。問い合わせは03-3988-9281まで。

 さて「記怒愛楽」、4ヶ月続いた私の担当も今 日まで。おつきあいいただき、ありがとうござい ました。また、どこかでお会いしましょう。