2003年3月12日(水)

 トータス松本@川崎クラブチッタ。最近では滅多に行くこともなかったクラブチッタ。場所が微妙に変わっていて、当然ながら内部の構造も変わっている。なんでこんな遠い(といってもZEPPなんかよりゃずっと近いが)とこまで出かけたかというと、東京公演が別のライヴと重なっているからだが、いや、遠出した甲斐のある、素晴らしいライヴだった。ホーン・セクションを含む9人編成で、実に楽しげに、気持ちよさそうに70年代初頭以前の古いブルース、R&Bのカヴァーを歌う。こないだ出たカヴァー集もいい出来だったけど、松本のひたむきでまっすぐで純な黒人音楽への愛情がひしひしと感じられ、めちゃくちゃ好感度大。しかもただの自己満足でなく、いやみのない完璧なエンタテイメントとして完成されているのが最高。松本の人間性のたまものなのだろうが、客とアーティストとの距離感が抜群なのだ。よく喋るんだけど、うざくないしクサくもない。なれ合いでもないし突き放してもいない。リラックスさせて楽しませて、でもきちんと音楽を聴かせる。ウルフルズのライヴはちゃんと見たことがないんで比較できないが、いや、大したエンタテイナーです。ストーンズとはタイプがちがうし客の数もライヴの規模も異なるから比較は意味がないけど、個人的にはこっちによりぐっときた。べつに彼の熱狂的ファンだったことはないが、とにかく楽しめたのだ。女性客が8割から9割という客層は、おそらく歌われるブルースやR&Bクラシックなどほとんど縁がない人たちと思われるが、そんなことなど気にならないぐらいみんな楽しんでいたように見えた。
 そしてまた、歌いっぷりがいい。そもそもぼくと松本の黒人音楽趣味はきわめて似通っていて(ニュー・ソウル以前の古くて泥臭いものが好き、という)、サム・クックやマディ・ウオーターズ、ソロモン・バーク、ボビー・ウーマックなんてとこを取り上げるだけで30点ぐらいゲタはかせたい気分だが、アレンジも歌も実に正攻法。アンコール前はオーティス・レディングの「トライ・ア・リトル・テンダネス」だったが、こんなベタな大有名曲(ストーンズでいえば「サティスファクション」みたいなもの)を衒いなく取り上げ、それもヘンにひねったり斜に構えたりせず、堂々と真正面から正攻法で歌い上げる様子に、正直感動してしまった。もちろん歌唱力に関しては、20世紀最大の天才歌手のひとりオーティスとは比べられないが、小器用な口先だけの歌を拒否する姿勢や、オーソドックスであることへのテレや屈折もないその心意気に感動してしまったのである。
 というわけでなんかすげえ絶賛してますけど、まじめな話こないだ見た遠藤ミチロウのライヴに匹敵するぐらい感激したのだった。

 で、川崎くんだりまで行った意味はもうひとつあって、ニュー・オーダーのボックス『Retro』の英国盤初回限定5枚組をようやくゲット。しかも5790円の適正価格で。ヤフオクなんかでは1万円を超える価格で取り引きされてるようなんで、助かった。少なくとも水曜夜の時点で、タワーレコード川崎店には在庫あり。探している方は問い合わせてみましょう。