2002年8月24日(土)

 武尊祭@武尊牧場キャンプ場。今年で2回目となるトランス関係のレイヴである。ぼくは初参加。昨年は豪雨に見舞われたうえ、仕切が壊滅的に悪く、ほとんど地獄のようなイベントだったらしい。今年はメンツがそれなりに興味深かったこと、過去のさまざな例から、1回目は失敗に終わっても2回目以降に教訓を生かして、いいイベントになることも多い(フジ・ロックなど)ことから、参加を決める。いや、一番大きな理由は「7週連続週末イベント参加」という自己新記録を狙っている手前、こんなとこで挫折するわけにいかない、ということかなぁ(←バカ)。ともあれ、これが連続5週目のイベント、である。

 金曜日から翌月曜まで4日間に渡るパーティー、もちろん全日行くことは不可能なので、土日のみ参加することは早くから決めていたが(前売り券も買ったし)、しかし前日(金曜)の大雨にはさすがにめげる。先乗りした人からの情報によれば、雨が降り続きおそろしく寒いうえに、仕切りは相変わらず悪いという。おまけに同行者はふたりとも大風邪のあとの病み上がりと、こちらの態勢も満身創痍。しかしここまでネガティヴな事前情報と先入観があれば、たいていの事態には笑って対処できそうだし、もしひどい目に遭っても、この日記のネタにすればいいや、といささか楽観的に参加を決める。

 最初は日没までにテント設営ができればいいとチンタラ行くつもりだったが、同行者のひとりがどうしても野外のデート・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンを見たいと言いだし、彼らの出番(13時)にあわせ7時半出発を決める。オレ、野外のデートコースはフジで見てるんだけどなぁ。だが彼女はフジを見ていないので仕方ない。しかし降り続く雨に不安がつのり、結局さらに2時間繰り上げ午前5時半出発に決定。金曜まで締め切りの原稿に手間取り、結局ほとんど不眠のまま出発する(なので、金曜夜の砂原良徳DJ@恵比寿みるくは見逃す。すまん)。

 例によって関越に乗る前に渋滞に巻き込まれたものの(なんで関越練馬インター付近の幹線道路って、いつも渋滞してるんだろう)、そのあとはいたってスムーズに、まずはフェス用有料駐車場までは3時間ほどであっさりと着く。天気は曇り。駐車場代は3千円といささか高い気もするが、4日間通して使用可ということなら、まぁ納得できる線。ここからシャトルバス(15分ほどの乗車で片道500円は高い)に乗って牧場に向かい、それからリフト(3回往復できて千円)を2台乗り継いで会場に着くのだが、去年は駐車場から会場まで5時間だか7時間だかかかり、その間大雨の中を何時間も待たされる、という地獄のような状況だったらしいので、ある程度時間がかかることは覚悟していたが、拍子抜けするぐらいあっさりと、ほとんど待つこともなく会場に着く。主催者によればスムーズに行っても1時間半ほどかかる道のり、駐車場に着いてから。会場でテント設営が完了するまで2時間で済んだんだから、御の字だろう。仕切もスムーズで、誘導も問題なし。午前11時には時間を持て余して、ライヴが始まるまでテントで仮眠していたほどだ。

 リフトはかなり長時間の乗車で、なるほどこれで雨なら相当めげるところ。だが現地は曇りで肌寒いものの、雨は降っていない。標高1500メートルのスキー場で、キャンプサイトはふたつ。2日目以降の到着者はゲレンデのスペースに設営する。傾斜があり、おまけに会場(ダンスエリア)までの坂道がおそろしく勾配がきつく、たった百メートルほどの距離なのに息が切れ、荷物もないのに途中で一息入れねばならない、という具合。

 しかし会場に関しての不満はそれだけ。自然の中で空気はきれいで快適。バッタやトンボなど虫がやたらといて、しかも全然人間を恐れていない、という状況は苗場での最初のフジロックみたい(フジはあのあと生態系が変わってしまったのか、大量の虫を見ることはなくなったけど、武尊祭のあとはどうだろう)。そう広くもない敷地面積だが、ほどよい感じで客がバラけていて、息苦しさはなし。時間が深くなるにつれ当然客は増えたが、快適さは変わらない。トイレも売店もそう数は多くないが、ほとんど並ぶことなく利用できる。ただしフードショップに関しては、こういうイベントに出店する店は決まっているらしく、どれもどこかで見た店ばかりで新鮮さはなし。地元の方の店のトウモロコシが甘くてジューシーでおいしかった。

 客層は、これまでの4週のどのイベントともちがう。若い子もいたが、平均年齢は明らかに高い。家族連れ(犬連れ、子供連れ)も多く、ぼくより年上とおぼしい、年期の入ったヒッピー風おやじもチラホラ。女子は絞り染めの原色のTシャツにフレアーのパンツ、といった典型的なトランスのファッションで、すらりとしたおしゃれで可愛い子が多い。男子も総じてあか抜けた雰囲気で(もちろんそうじゃないのもたくさんいたが)、見た目の華やかさは、たとえばロック・イン・ジャパンとかサマーソニックあたりの客層とはまるで対照的。同行者に言わせれば、トランスは音楽とファッションが密接に結びついていて、音楽を聴く行為と服装に凝ることが一致しているから、おしゃれで可愛い子が多いんだそうな。

 レイヴに通い慣れ雰囲気を心得ている客が多いようで、実にまったりとしてピースフルな雰囲気。なかなか居心地がいい。口コミのみで情報流通しているような小規模なレイヴは、もっとそうした雰囲気が濃厚なんだろう。そうした小規模レイヴの手作り感は、しかし、このパーティーにも確かに感じられた。キャンプファイアーも花火も楽しかったし。

 もっともまったりしすぎていて。音楽を聴きにきてるのか、友だちと親交を深めに来たのか、一発キメにきたのか(?)、よくわかんないような人たちも多かったが、それはそれでいいし、別に不快な感じはしない。ダンスしている最中も、友人同士実に楽しげにじゃれあっていて、なかなか微笑ましい。音楽イベントに来ているというより、友だちと遊びに来ているんだから、そりゃ楽しいだろう。あの異様にフレンドリーな雰囲気は、やはりトランス特有のものなのかな。同じエレクトロニク・ダンス・ミュージックとは言ってもテクノのイベントであるメタモルフォーゼとは、遊園地と山奥のスキー場のちがいはあるにせよ、対照的だ。メタモは、特定の音楽を好きな人が音楽だけを目的に集まったイベントという雰囲気で、それはそれでとても居心地が良かったんだけど。

 そうした雰囲気を反映したのか、デートコースは心なしかまったり、ゆるい感じの演奏。当初、彼らはイベントの雰囲気と合わないんじゃないかと思っていたが、あにはからんや一番雰囲気に染まっていた。フジでのテンションの上げ方とはずいぶんちがっていたが、これはこれで悪くない。ちなみに菊池成孔の服装はフジ時と同じ、赤シャツでした。フェス用の一張羅なのか?

 一方、それとは対照的だったのがROVO。最初にレイ・ハラカミと1曲だけ共演、そのあと単独で演奏したが、これがすごかった。最初から最後まで徹底してアゲてアゲてアゲまくるダンス・モードで、レイヴのまったりとした雰囲気をぶっこわすハイ・テンション&ハイ・ヴォルテージの連続攻撃で、この割り切りは爽快。実に壮絶な演奏で、最近見たなかでは一番良かったかな。ちなみにROVOの新譜は10月24日、羅針盤は10月23日。そして山本精一ソロが9月25日発売。最後のだけ聴いたが、これが信じられないほどの大傑作。当然今年のベスト10アルバムの有力候補だ。

 レイ・ハラカミの演奏も、こないだのリキッドでROVOと共演したときよりはるかに良かった。ただし両者の共演はそれほどでもなかった。ハラカミはステージ上でよく喋っていて、ああいうキャラだったのかと少し意外に感じた。

 あと目立って良かったのがオーディオ・アクティヴで、新作の出来の良さを見事に反映したサイケデリック&エクスペリメンタルな展開は彼ららしく、興奮した。ほかに良かったのはベイズ。

 反面失望したのがインフュージョン。アルバムは良かったので期待していたが、アゲたいのかサゲたいのかどっちつかず、ブレイクやキックを抜き入れするタイミングが悪く、やたらと煽る割に全然気持ちが盛り上がってこない。ライヴ慣れしてない感じがモロに出ていた。

 こういうイベントに来ていて今さらなんだけど、トランスって音楽的に単調で単純すぎて、面白くない。ほかにもトランス系のDJが何人も出ていたが、どれもいまいち。踊りやすいしノリやすいし、実際よく踊らせてもらったけど、曲のパターンが決まっていて構成もアレンジも型通り、どこまで行っても「ドン、ドン、ドン、ドン……」と四つ打ちの単調なビートが続くだけだから、じき飽きてしまう。音楽の奥深さやディテールの細やかさを味わうのではなく、友だちと一緒にダンスで楽しく盛り上がるための舞台装置なら、ヘンに凝ったことなどせず、単調で単純でも様式美通りの展開のほうが都合がいいのだろう。まぁぼくの愛好するハードコア・ミニマルだって単調でパターンが似通っていると言えば言えるし、しょせんは好みの問題なのだろうが。DJだけでもWIREやメタモルと入れ替われば個人的に理想的だが、そうなったら客層が変わって、この雰囲気は消えてしまうだろう。むずかしいものである。

 そんなわけでトランスのイベントなのに感動したのは純粋トランスじゃない人たちばかりだったが、唯一素晴らしかったのがシステム7。スティーヴ・ヒレッジといえば長髪アゴヒゲのヒッピーおやじというイメージだが、さっぱりとした短髪のふつうのおじさん風。しかしよくみりゃ目が据わってて、クスリだかなんだかで頭を一回激しくやられたヒト、という印象は濃厚。端正な四つ打ちのトランスという点ではインフュージョンと同じだが、インフュージョンなど比較にならないほど緻密でディテールのニュアンスに富んだアレンジと音色、ツボを心得まくったダンス・グルーヴ。そしてなにより御大の幽玄なギター・ワークが加わると、そこは彼らだけの世界になる。ベテランのしたたかさと技巧の限りを見せつけられ、早朝という時間にも関わらず踊りまくってしまった。

 システム7終了後、テントを撤収して家路につく。帰りは混むかと思ったが、まだまだ遊び足りない人たちが大勢いたようで、途中のリフトでちょっとトラブルがあったほかは混雑もなくスムーズに駐車場まで。クルマのトラブルもあってディーラーに寄ったりして、なんだかんだで帰りは5時近くになったので、早く帰ったら顔を出すつもりだった「東京JAZZ」は行けず。それ以前に、2日間満足な睡眠もとっていない身では、どのみち体力的にきつかったけど。

 帰りのリフトのトラブルのほかは仕切も特に問題がなく、快適でとても楽しいパーティーだった。天候に恵まれたことも大きい。結局雨は土曜朝から日曜朝までは一回、それもにわか雨的に短時間しか降らず、満月がきれいだった。日曜朝はじっとりと汗をかくほどの快晴で空気も澄んでいて気持ちが良かったしね(ただし夜から明け方はめちゃくちゃ冷え込んだ。吐く息が白くなるほどで、テントの中でも寝袋がないときつい)。やはり2回目は1回目の学習の成果が出たということか。開催場所は決して交通便利とは言い難いから、よほどの大物アーティストでも出ない限り、大きく動員が増えることはないかもしれないが、地道に長く続けて欲しいものである。スタッフのカードをつけた人たちが楽しげに踊っているのを何度も見たが、たぶん時間拘束の少ないヴォランティアの人たちだろう。そういった主催者側のルーズさは、しかし決して不快なものではなかった。まずは自分たちが楽しもうという姿勢は、他のプロフェッショナルなイベントに比べれば甘ったれた考えということになるが、これぐらいの規模のパーティーなら気にならない。動員はせいぜい数千というところだろうが、客の側からすれば、これぐらいが一番いい。

 さて、来週末は順調ならWIRE02。それまでにはこの筋肉痛をなんとかしなきゃ。そんなわけで、今日ははやく寝ることにします。