2002年8月16日(金)

 カルメンマキ@吉祥寺スターパインズカフェ。前座はPHAT。カルメンマキ目当てのかなり高い年齢層の客が、椅子に座ってじっと鑑賞している、という彼らにとってはかなりの悪条件下だったはずで、実際やりにくそうではあった。演奏そのものも少し固かったろうか。

 カルメンマキのバンドは鬼怒無月g , 勝井祐二vn , 松永孝義b, 芳垣安洋drsと、半分ボンデージ・フルーツという布陣。なぜ彼らがカルメンマキとやることになったのか寡聞にして知らないが、彼女ほどのキャリアのあるベテランが、昔馴染みのお友だち人脈に頼るのではなく、あえて若手のバリバリ現役、それも最先端の音楽をやっている気鋭のプレイヤーたちと組むのは、いかなる経緯があるにせよ、自分の音楽を絶対懐メロ的な過去のものとしたくないという強い意志と意欲、彼らと組んでも彼らのサウンドに引きずられることなく、それを超克したうえで自分の個性を存分に発揮できるという絶対的な自信のあらわれだろう。60〜70年代のハード・ロックを基礎に置きながら、そして大枠としてそこを大きく逸脱することはなくとも、眼前で展開されているのはまぎれもなく現代の音楽だった、という点で、これこそがロックの「正しい姿」ではないか、と思ったりして。とにかくカルメンマキのヴォーカルの存在感たるや圧倒的。ただうまいというだけではない。ベテランにありがちな口先だけのテクに頼るのではない。友人に言わせれば「歌う意味をすべての瞬間に感じさせる」濃厚なものだったのである。とニところどころ寺山修司的なタームも盛り込みながらの歌詞も冴えていた。もちろん勝井や鬼怒の個性もマキの存在感の前に埋没することなく、遺憾なく発揮されていた(だからこそ、いまの音楽なのだ)。客観的に見て彼女らのやっているロックは、世界レベルで語られるべきと思う。前から評判は聞いていたが、ようやく日程があって、見ることができた。いや、素晴らしい。
 ただしこのバンドでの録音物はなし。レコーディングの予定もないようで、その無欲さが歯がゆい。ご本人にその意欲がないのか、諸事情がそれを許さないのかわからないが、これだけの演奏がライヴハウスに訪れた少数の客しか聴けないというのは残念すぎる。つうか、これ読んでるレコード会社の人、とっとと契約に走れ!