2002年3月25日(月)

 映画美学校試写室で『トーキョー×エロチカ』。ピンク映画出身で、『アナーキー・イン・じゃぱんすけ』などで知られる異能・瀬々敬久監督の最新作で、地下鉄サリン事件を起点に、時間軸を往還しながら生と死についての観念的なドラマを展開する。セックス描写が執拗に繰り返され、これも一種のピンク映画と言えるだろうが、デジカムで撮った画像を35ミリにブローアップした荒れた映像は渋谷の街をまるでゴーストタウンのように映し出し、劣情を煽るというより生きるリアリティのようなものを感じさせた。これはけっこう面白い作品である。採点=8。5月中旬からユーロスペースで公開。

 夜は渋谷シネフロントで、物好きにも『ミスタールーキー』を見る。長嶋一茂演じる妻子ある平凡なサラリーマンがひょんなことから阪神タイガースに入団し、甲子園限定の覆面ストッパーとして活躍するというお話。よりによって宿敵読売の象徴シゲオの息子を阪神の話の主役に据えるというまったくファンの心理をわかっていないキャスティングで、阪神ファンには最初からソッポを向かれているこの映画(阪神の公式サイトのBBSでは全然話題になってない)、おまけに監督は凡作『破線のマリス』の井坂聡ということで期待できる要素などほとんどなさそうだが、まぁその割に悪くなかった。カズシゲは意外にいい。というか、彼があのカズシゲでなければ、けっこうハマリ役かもしれない。元阪神の嶋尾康史がいい味を出している。傑作だったのは元ベイスターズ駒田(阪神の宿敵「東京ガリバーズ」の4番で、主人公の高校時代からのライバルを演じる)。現役選手では藪、矢野、檜山、八木、広澤などが登場する。ただ演出はいまいち。バースが代打でホームランを打つシーンや、カズシゲと駒田の対決場面など、もっと盛り上がるようなやり方がいくらでもあるのに、まるで無策なのだ。テレビ中継のアナウンスを挿入して興奮を煽る、というのはもっともオーソドックスなやり方だが、肝心な場面になるとなぜかオフになってしまう。一体なにを考えているのか。公式サイトの監督インタビューを読むと自信満々だが、あれでいいと本気で思ってるなら大問題。甲子園を埋め尽くしたエキストラの迫力はすごいけど、それを全然生かし切れていない。最後は阪神の優勝シーンで終わるのだが、全然高揚感がないのだ。もちろんこれは、主役があのカズシゲだという理由も大きい。もし普通の役者を使ったら、野球シーンのリアルさという点では譲ったかもしれないが、少なくとも阪神ファンの反感を買うようなことはなかったはずだし、最後のシーンももっと盛り上がったはずだ。だからこの作品のみどころは野球シーンではなく、カズシゲ・鶴田真由夫婦を軸としたホームドラマ的な部分である。夫婦ゲンカのシーンでのふたりは熱演だ。
 それにしても代打・八木や代打・バースが告げられる場面など、大阪の映画館ではものすごく盛り上がるだろうに、公開数日しかたってないのにもう閑散とした渋谷の映画館では隻として声もなく、盛り下がることおびただしい。採点=6。