2002年11月16日(土)

 プライマル・スクリーム@ZEPP東京。前回の来日はえらく感激して、興奮のままに『ミュージック・マガジン』で長文のレポートを書き綴ったものだけど、今回は……うーん、微妙だなぁ。客観的に見てすごくいいライヴだったと思うし、周りの人もみな絶賛してたけど、ぼくはどうも、あれでは納得はしたくないという感じ。
 演奏はすごくちゃんとしていた。初来日時のメチャクチャさ加減を知ってる者からすれば、とても同じバンドとは思えないほど。演奏力の向上もそうだが、今回日本公演が何回あるのか知らないけど、たぶんどのライヴも同じように充実したパフォーマンスを聴かせるにちがいない、と思わせる安定感が感じられたのである。だがそのぶん、彼らの魅力だった危うさや壊れた感じは確実に薄れた。もちろんそれは不安定感やムラと裏腹で、どっちをとるかという問題でしかない。プロのエンタテインメント・ショウとしては見事な完成度だったと思うが、そのぶんロックとしてのスリルには欠けるというか。ライヴ後半はぼくも熱くなったけど、どうも前回のような高揚感・興奮は感じられなかった。
 彼らの魅力に、いつまでも完成途上というか、未完成でどこか欠損があるからこそのリアリティがあった。ときにそれはどうしようもなく最低のライヴに結びついたりもしていたのだが、いまの彼らはすっかりできあがった完成品という感じだ。新作にしても、「プライマルらしい」という評価が出ること自体、前進も更新もない停滞感を示しているとも言えるわけで、実際のライヴも方法論的に前回来日時と変わり映えしない印象だった。つまり前回でプライマルの音は完成されてしまい、これ以上の変化はなさそう、ということだ。ならなぜ前回は感激したかと言えば、彼らがパンク以降のイギリスのロックの流れの中で気まぐれに変身を続け、試行錯誤してきたその成果が見事に結実し、過去の音楽遺産を踏まえながらそれを乗り越えていくというブレのない基本姿勢が鮮やかに浮かび上がっていたからだ。ついにニュー・ウエイヴ以降のロックがここまで来たという感動があったのである。だがそこでたどり着いた地点から、彼らが一歩も前に進んでいないことが今回明らかになってしまったというわけだ。
 もちろんそれでもプライマルが現在もっとも信頼できるアーティストであることに変わりはないわけで、ヤクも抜けすっかりクリーンになったボビー・ギレスピーには、攻めの姿勢だけは忘れないで欲しいと願うばかりである。

 会場に着いたころには、前座のブンブン・サテライツがやっていた。最初から見ていた人によれば冒頭の2曲には新機軸もあったというが、ぼくが見た限りでは相変わらずのブンブン節。文句ナシの熱演、サウンドもすごいかっこいいんだけど、あれだけ分厚くヘヴィな音をのべ単で続けられるといささか疲れる。つねにフォルテシモ状態で息をつくところがないのだ。それは生真面目さと誠実さのあらわれと思うが、もう少しメリハリをつけるとか、音を抜くとかすれば、もっと伝わるのにと思った。
 ところでブンブンの音を聴いて、ソフト・バレエとの共通点を改めて感じた。森岡賢もそれは認めていたが、なんでも森岡と親交のあるDJクラック(森岡のアルバムのプロデュースも担当)主宰のレーベルにデモ・テープを送ってきたこともあるらしい。先日のソフトバの再結成ライヴの圧倒的な完成度とインパクトに比べると、ブンブンはまだ発展・改良の余地がだいぶあると感じた。キャラクター的言えば、ブンブンには森岡賢がいない。つまり華がないというか、エンタテインメント性が弱いというか、ソフトバ/森岡の持っている、いい意味での「芸能」的な部分がなく、「芸術」的なニュアンスが強い。どっちが上、というつもりはないが、ブンブンのライヴに「笑い」の要素があればなぁ、とは思う。ソフトバのライヴでも、みんな笑いながらもモリケンの動きに釘付けだったもん。あまりマジ一辺倒も、息が詰まっちゃうよね。

 ともあれこの日は、なんだか手前の音楽観を改めて問われたようなライヴだった。いろいろ考えさせられます。