2002年10月28日(月)

 溜池の共同通信社で『オーディオベーシック』誌の試聴。今回はユニバーサル・デジタル・プレイヤー編で、CD/SACD/DVDビデオ/DVDオーディオなどのハイブリッド・プレイヤー4機種を、持参したSACDやDVD−Aのソースで聴く。アンプとスピーカーがいまいちだったので、次世代メディアの音の良さはもうひとつ実感できなかったが、興味深かったのがマルチ・チャンネルの試聴。ベック・ボガート&アピスのDTSマルチチャンネル、ドアーズ『LAウーマン』のDVDマルチを聴いたのだが、BBAはかなりすごい。たった3つの音しか入ってないが、まるで3人がリハーサルしてるスタジオで聴いているような迫力で驚いた。ベック、ボガート、アピスの3人が向かい合ってガンガン音を出している真ん中に座っているようで、かなり興奮します。四方から押し寄せる音圧はかなりのもので、5.1チャンネル環境にある人は、ぜひ一聴をおすすめする。それにくらべ『LAウーマン』は、初心者が面白がって音をグルグル回しているだけ、という印象で、マルチにした意義や必然性は薄い。ちなみにマルチ用リミックスのエンジニアは、オリジナルと同じブルース・ボトニック。BBAのほうはオリジナルとはちがう人だったから、まだノウハウが確立されてないマルチ・チャンネルのミックスは、それ用の経験やセンスがモノを言うということなんだろう。もともと2チャンネル用に録ったもの、それもふつうのバンド・サウンドを強引に5チャンネルにするんだから無理がある。ライヴ盤などは考えるまでもなく自然な再生が可能だろうが、スタジオ盤は、たとえばビョーク『ヴェスパタイン』のように、おそらくは最初からマルチ・チャンネル・ミックスを念頭において制作していて、かつふつうのバンド・サウンドではない作品でないと、マルチの意義や存在価値は薄い。その『ヴェスパタイン』DVDマルチも少し聴いたが、さすがに面白かった。トータスとかオウテカとかエイフェックス・ツインとかナイン・インチ・ネイルズあたり、ぜひトライしてもらいたいものだ。ただ、そうはいってもマルチ・チャンネルが2チャンネルを押さえて主流になることは当分ないはず。というか、そんなことになると困る。マルチ・チャンネルの音を、現在の2チャンネル環境と同程度のクオリティにするには、ハンパでない予算と部屋が必要だからだ。技術の進歩についていくにはお金がかかる。それについていけないビンボー人は、旧技術で我慢するしかない。これぞデジタル・ディヴァイドってやつか。
 ただし『LAウーマン』のほうは、リミックスということで、オリジナルには入っていない音が聴こえたり、どうやら一部の曲ではヴォーカルが別テイクだったりするようで、コレクター的には侮れない。ほかのマルチ化した旧譜も、そういう可能性がある。むかしソニーのSQ4チャンネル・レコードは、2チャンネルとちがうテイクを採用したりしてマニアを悩ませたが、今回も同様の波紋を巻き起こしそうだ。いずれにしろお金はいくらあっても足りないということですね。