2001年9月18日(火)

 もう1週間がたってしまった。アメリカは予想通り、オサマ・ビンラディンをテロの首謀者と決めつけ、彼をかくまっている(らしい)アフガニスタンにビンラディン引き渡しを要求し、入れられない場合には無差別攻撃をかけることを明言している。テロリストだけでなく、テロリストを助けるあらゆる勢力を攻撃するつもりらしいから、ラディンの出方次第ではアメリカはあらゆる国を攻撃する権利あるいは資格を主張、留保することになる。そしてそれに対してテロリスト側が再度の報復に出る可能性も、またじゅうぶんにある。もちろんその対象にはアメリカだけでなくアメリカに無条件の協力を申し出た日本も含まれる。

 テロ行為の首謀者の「可能性がある」男(もちろん明白な証拠はなし)をかくまっている「かもしれない」国(米副大統領は、ラディンが今アフガンにいるのかどうか知らない、と認めている)に、相手からの宣戦布告もないまま全面攻撃するというアメリカの錯乱ぶりを、テレビや新聞はなぜかほとんど報じようとしない。それどころかアメリカに都合のいい情報操作がなされていることは、以前のこの日記にも書いた通り明白だ。なんせニューヨークの惨状を広島長崎にたとえ、「広島と違うのは、今回のテロは多数の民間人を犠牲にしていることだ」なんて平気でコメントしてしまう(米ABC)のだから。

 このままアメリカがアフガン侵攻を図るようなら、ベトナム戦争と同様泥沼化は必至だとされる。ソ連でさえあっさり敗れ去った国なのだ。その過程で多数のアフガニスタン市民が犠牲になるだろう。今回の貿易センタービルのように。そうなれば、アメリカ国内外で、さらなるテロが頻発するだろう。その時点でアメリカは窮地に立たされる。もしアメリカが国際世論を味方につけるつもりなら、空爆や地上戦など直接的な軍事行動を避け、国境を完全封鎖して兵糧責めにして、難民は手厚く保護するという方向が無難だろう。テロリストは厳罰、民間人の犠牲は最小限に抑えるという姿勢を見せればいいわけだ。だがアメリカにはそれができない。それでは軍産複合体の経済的メリットがない。失速状態になった米経済の救済という側面が大きく、米軍需産業の意向が強く働くからだ。アメリカという国は常に戦争していないと経済的にたちいかなくなる国なのである。

 ラディンがテロの首謀者であるという明白な証拠があがり(ラディン本人は明確に否定)、タリバンが観念してラディンを引き渡せばいいだろうが、筋金入りのプロのテロリストがすぐわかるような証拠を残すはずがないし、そうである限りタリバンがあっさり観念する可能性もなさそうだ。ともあれアメリカにとっては振り上げた拳をおろす対象が早急に必要である。それがラディンであろうがフセインであろうが他のイスラム原理主義グループであろうが、アメリカにとって都合のいい相手であればいいのだ。アメリカにとって都合が悪いのは、イスラエルが主犯だった場合とか、数年前のオクラホマシティの連邦ビル爆破事件のように米国内の白人狂信者グループの犯行だったという場合である。

 いずれにしろ特定の個人をさしたる証拠もなく犯人に仕立てあげ、弁護人もつけず裁判で申し開きする機会も与えず問答無用で捕獲もしくは殺害し、おまけにかくまった国まで戦闘員非戦闘員問わず片っ端から無差別殺戮の対象にする。それを公正な第三者ではなく被害者(しかも、そもそもの原因はその「被害者」側にある)がやろうとしているのが、今回の事件である。このまま行けばテロ→戦争→テロ→戦争の無限ループが待つだけだ。これ以上アメリカ人の正気を失った独善的なナショナリズムと軍産複合体の損得勘定に振り回されるなんて、冗談じゃない。