2001年5月17日(木)

 溜池にある共同通信社で、『オーディオ・ベーシック』というオーディオ誌のためにスピーカー試聴対談をおこなう。パートナーは広瀬陽一さん。編集者は、とかく閉鎖的でマニアックになりがちなオーディオ評論の世界をもっと開かれたものにしたいという意向があり、プロのオーディオ評論家ではないわわわれに、いわゆるオーディオ評論用語ではない言葉で機器評価をやってもらいたいという要望があったのである。JMラボ(フランス)、ウィーンアコースティック(オーストリア)、ボーズ(アメリカ)、エラック(ドイツ)の、それぞれ10万〜20万円前後のヴォリューム・ゾーンのスピーカーを計4機種選び、比較試聴していく。CDプレイヤーはティアック、プリメイン・アンプはデンオン。試聴ソフトはダフト・パンクの『ディスカヴァリー』、ゆらゆら帝国『III』、エリック・クラプトン『レプタイル』、ジャネット・ジャクソン『オール・フォー・ユー』、ドラゴン・アッシュ『リリー・オブ・ダ・ヴァリー』の5枚を、広瀬さんと相談のうえで選んだ。これをとっかえひっかえ、スピーカーの結線もその都度やり直して比較試聴するのである。結論から言ってしまうととても面白い、刺激的な体験だった。スピーカーの個性が千差万別なのはもちろんだが、それぞれわれわれが漠然と抱いているお国柄のイメージ(ドイツ人は論理的でカッチリしてるとか、アメリカ人は開けっぴろげでおおざっぱだとか)と音の傾向が一致しているように思えるのが面白かった。また、機器によって聴こえ方が大きく異なるソフトと、あまり差が出ないソフトがあるのも興味深い。前者の代表がクラプトンやダフト・パンク、後者はゆらゆらやジャネットなのだが、後者などちがいがあまり出ないぶん、言葉にはしにくい実に微妙な差異が試聴するうち浮かび上がってきて、飽きるということがなかった。詳しくは6月発売予定の同誌次号を読んでください。

 終了後は広瀬さんと連れだって赤坂のグラフィティというライヴ・ハウスで、パンタのライヴを見る。ロケット・マツ(key)、阿部美緒(vl)のふたりを従えたNAKED2001というアコースティック・ユニットで、しばらく前からこの編成で定期的にライヴをやっているようで、アルバムも完成間近らしい。ぼくがパンタのライヴを見るのはめちゃくちゃ久しぶり(もしかして頭脳警察の再結成以来か?)だが、変わらないですね、この人。ベテランらしい余裕たっぷりのステージさばきなのは当然として、いい意味での気負いとか棘、毒みたいなものは全然失われていない。声も衰えてないし、メンバーとの呼吸も合っている。アコースティック・セットとはいえ実体はガリガリに尖りまくったロックそのものだった。素晴らしい。確かパンタは遠藤ミチロウと同じ歳だったと記憶しているが、この世代の人はしぶといね。なお6月には頭脳警察がまたも再始動、超幻のファースト・アルバム(3億円事件の犯人のジャケね)も再発されるらしい。なお前座はパンタがプロデュースしたという龍之介という若いシンガー・ソングライター。少し個性に乏しい気もしたが、生真面目さが出た歌いっぷりに好感が持てた。アンコールはふたりで「悪たれ小僧」を歌う。歌詞にご懐妊の皇太子妃の名を織り込む反骨精神は健在だった。

 
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