2001年12月21日(金)

 それにしても連日多忙すぎ。試写会通い、取材、ライヴ、忘年飲み。家にいるときはずっと原稿を書いているから、息をぬけるのは試写会への行き帰りの電車の中と、試写会の合間に近くの喫茶店でお茶を飲んだり、レコード屋や本屋をブラブラするぐらい。なんかモーレツサラリーマン並みだな。収入はフリーター並みだけど。今日も本屋で1万円ほど買い込んだけど、読む時間なんか全然ない。おまけに通販で買った『悪魔のようなあいつ』のDVDボックスが届いて、また未見のDVDが増えてしまった。はたして正月で全部消化できるか……できるはずないよなぁ。マジでカラダが5つぐらい欲しいです。

 新宿のウンモ・レコードで、ヘリコイド0222MBのロコちゃんの取材。2回目の取材だったけど、新作『ELE SHOCK!』の推薦文を書いたこともあって、前回よりぐっとうち解けた雰囲気。朗らかで明るくて開けっぴろげで、大好きだなぁ。なんでも彼女は地元大阪でレコード店の店員をやってるらしいが、たまにレコード屋にひとりでくる可愛い女の子がいるけど、ほぼ例外なく、DJ風のオトコとの待ち合わせなんだそうだ。言ってみればレコード屋は単なる待ち合わせ場所で、レコードなんかどうでもいいってことらしい。レコガールみたいなのは例外中の例外ってことか。ま、そんなもんでしょう。22日にやるライヴは行けそうもないけど、今度上京したおりにはぜひ飲みにいきましょうと盛り上がる。カナーリの酒飲みらしいので楽しみ。

 その後渋谷のシネカノン試写室で『レイン』。タイ映画だが、これは掘り出しモノだった。オキサイド&ダニー・ハンという双子の兄弟の初監督作品だ。耳の聞こえない孤独な殺し屋が、汚れを知らない少女を出会うことで人間らしい感情を取り戻し、人を愛する喜びや喪う哀しさを知っていく……というストーリーはルーティンではある。だからこの作品の価値はひとえに、スタイリッシュで美しい映像美と編集の妙にある。ふたりの監督は、ひとりはシニア・カラーリスト、ひとりは編集出身で、そのキャリアが存分に活かされているのだ。カラー・フィルターの多用やスピーディでテンポのいいカット繋ぎ、降りしきる雨を、その雨粒のひとつひとつまでくっきりと見えるほどの超高速度撮影で捉えた映像の美しさ。挙げるとキリがないほどの凝ったテクニック(映画技術にはシロウトなんで、あまり細かく指摘はできないけど)を駆使して作られる映像は、カッコイイのひとことだ。これに影響受ける若い映像作家は多いんじゃないだろうか。お話はありきたりだけど、キャラクターはよく描けているし、演出もうまい。主人公が耳が聞こえないという設定なので、セリフがほとんどない静寂感漂う映画だが、だからこそ主人公の悲しみと孤独、喪失感は、よく伝わってくる。また、もちろん凄惨な殺戮シーンが続出するのだが、それが実にリアルで生々しく描けている。資料によればタイでは殺し屋は1500人近くも存在し、ビジネス絡みの殺人は年間300件にも及ぶという。それだけに殺人とか射殺の表現はリアルにならざるをえないのかもしれない。『レオン』あたりと比較されることになりそうだが、ハリウッド的なサービス精神があまりないぶん、もしかしたらこっちの方が上かも。もちろん昨日見た『修羅雪姫』は、残念ながら比較にならない。主人公が心を通わせる少女役の女優さんが、また実に可憐で可愛い。採点は(9)でいこう。(10)でもいいのだが、ストーリーのありきたりなとこで1点減点。でも心情的には10点つけた『ダブル・タップ』と同格か、それより上だ。来年1月下旬、渋谷東急3ほかで全国公開。

 夜は武道館で真心ブラザーズ。活動休止前の最後のライヴで、個人的にはずいぶん久しぶりだった。レコード聞いてるだけじゃ気づかなかったけど、最近の真心ってソウル・ミュージックだったんですね。それもサザン・ソウル系の濃いヤツ。開演前の場内には、しきりにフェラ・クティが流れてたし。認識不足だったなぁ。最後ということで大泣きする女子が続出かと思っていたが(知り合いの女子には真心ファンが多く、彼女たちが泣くのを見に行った、というところもある)、最後までカラリとした内容で、湿っぽい場面はほとんどなし。最後にしんみり系のバラード(「この愛は始まってもいない」とか)でもやるかと思っていたが、ラストまでアップテンポのソウル&ファンクで押し通し、お祭り気分で終わる。でもさる女子に言わせれば、泣かせの構成でないところが、かえってファン泣かせなんだと。フーン。
 初期のシニカル路線から直球熱血路線に方向転換してからの真心は、結局ぼくの胃袋にはおさまらなかったけど、この日はとてもいいライヴだったと思う。ぼくは2回取材したことのある程度のつき合いだったけど、彼らのデビューとぼくがフリーになった時期はほぼ重なっているので、勝手に同期生的な思いがあったりもする。ともあれ、長い間お疲れさまでした。

 会場内打ち上げにも出席するが、集まった関係者のあまりの多さに驚き、早々に退散。その足で友人カメラマンの主催する忘年会に向かう。席上では「カリガリ」というヴィジュアル系バンドのメンバー、青くんと初対面。音楽から映画からマンガやアニメまで、年齢(30歳ぐらい)の割に昔のサブカルチャー方面にやたら詳しいので驚く。完全なオタクだが、筋金入りまくりすぎ。面白い奴だった。