2001年12月20日(木)

 日比谷の東宝試写室で『愛の世紀』。ジャン・リュック・ゴダールの最新作である。3組のカップルを巡って、過去、現在、歴史が交錯する、いかにもゴダールらしい難解な作品。一回ぐらい見ただけでは容易にわからない、そして、何度も見返さねばという気にさせる手強い1作。モノクロのパリの光景が美しい。作品の全体像を把握できたとはとても言えないので、採点は控えます。来年GW公開。

 同じ東宝試写室で『キリング・ミー・ソフトリー』。傑作『さらば、わが愛/覇王別姫』で、カンヌのグランプリをとった中国の陳凱歌監督のハリウッド進出第一弾。『オースティン・パワーズ・デラックス』のヘザー・グレアムと、『恋に落ちたシェイクスピア』のジョセフ・ファインズを巡る恋愛サスペンス。堂々たる脱ぎっぷりを見せるグレアムと、プリンスとニコラス・ケイジを合わせたようなスケベそのものといった風貌のファインズによる激しいセックス・シーンの連続が、女性ファンの間では話題になりそうである。この監督らしい濃厚で重厚な映像美が味わえるが、全体としてはウエル・メイドなハリウッド製セックス・クライム映画という枠を脱し切れていないのが惜しい。『RONIN』や『トゥルーマン・ショー』で、信じられないぐらい妖艶な存在感を見せたナターシャ・マケルホーンはぼくのお気に入りの女優さんだけど、彼女がファインズの姉役で、なかなかクセのある演技を見せている。全編脱ぎ放しのグレアム嬢より全然色っぽいと思ったのはぼくだけだろうか? 彼女が脱いでくれなかったのが、個人的にはとーーーーーーーっても残念。採点は(7)。来年正月第二弾、全国公開。

 渋谷AXで、ミーン・マシーン。チャラ、ジュディマリのユキ、ちわきまゆみ、女優の伊藤歩らによるギャルバンをトリとしたイベントだ。トップに出てきた惑星は、ブランキー・ジェット・シティをちょっと思わせるトリオ。といっても雰囲気はずっと明るくて開放的。ドアーズの「ラヴ・ミー・トゥー・タイムズ」を、ひねったアレンジでカヴァーしたりしている。演奏もなかなか悪くない。ヴォーカル/ギターの男の子はなかなか人なつこくて憎めないキャラで、人気出そうだ。次は氣志團。音楽的には深み、幅、奥行き、ともにゼロだけど、おそらくは何も考えずその場の勢いで発しているギャグは、(ときどきサムくなるが)面白いと思う。続くシーガル・スクリーミング・キス・ハー・キス・ハーは、ロビーでビールを飲みながら知り合いとバカ話をしていて見逃した。スマン。トリのミーンマシーンは、それぞれキャリアを積んだアーティストたちが、本来の自分の担当とちがう楽器をやるというコンセプトのバンドで、言ってみれば宴会芸的なパーティ・バンド。おそらく本人たちレベルではごく気楽な気持ちで始めたにちがいないが、レコード会社だの事務所だのが絡んでくると、こうやってスペースシャワーの生中継が入るような大がかりなビジネスになっちゃう。それぞれ名のある人たちだから、それは仕方ないけどね。演奏はもちろんそれなりだったけど、まぁ本人たちも楽しめたようだったし、よろしかったんじゃないでしょうか。詰めかけた関係者の異常な多さが、いかにも内輪ノリのパーティーっぽくて、それはそれで悪くない雰囲気だった。

 帰宅して、配給会社のご好意により貸していただいたVHSで『修羅雪姫』。PFF出身の若手、佐藤信介が監督、釈由美子が主演したSFアクションで、73年に藤田敏八/梶芽衣子で製作された同名映画のリメイク。原作は小池一夫/上村一夫の劇画である。劇画も藤田版映画もかなりむかしに見たので内容は全然覚えてないが、今回のリメイクはタイトルと主人公の性格設定だけ活かした、ほぼオリジナルと言えるものになっているようだ。
 『ガメラ』の樋口真嗣が特撮監督、香港映画を代表するアクション・スター、ドニー・イェンがアクション監督をそれぞれ担当するという豪華な布陣に支えられ、釈由美子がかなりの頑張りを見せる。テレビのバラエティ番組での彼女はよく知らないけど、ほとんど笑わない殺人機械として育てられた主人公(このへんの性格設定は劇画『あずみ』の影響があるかも。そういえば『あずみ』の作者・小山ゆうは、小池一夫門下だったかな。だとすると、そもそも『あずみ』が、現代版『修羅雪姫』として作られたのかもしれない)が、徐々に人間らしい感情に目覚めていく演技も、飛んだり跳ねたりの激しいアクションも、初めての割にはよくやっていると思う。オリジナルの梶芽衣子に劣らぬキリリとした表情や立ち居振る舞いは、ほれぼれするほど。殺陣やアクションもスピーディーでキレがいい。だけどいかにも続編狙いがミエミエのラストが釈然としない。だからラストの壮絶な対決シーンが活きてこず、後味に爽快さがないのだ。惜しいなぁ。採点は(6)。新宿東映パラスにて公開中、以降順次、名古屋、大阪でも公開予定。