2001年12月18日(火)

 東銀座の松竹試写室で『ラットレース』。現金20万ドルを巡って見も知らぬ他人同士がはちゃめちゃな公道レースを繰り広げるコメディ。資料にはないが、63年のスタンリー・クレイマー監督『おかしなおかしなおかしな世界』を下敷きにしたと思われる。『ミスター・ビーン』のローワン・アトキンスン、『カラー・パープル』のウーピー・ゴールドバーグが出演、監督は『ゴースト ニューヨークの幻』のジェリー・ザッカー。そこそこよくできた娯楽作品。ローワン・アトキンスンは演りすぎでクサい。ラストはいかにもアメリカ映画らしく偽善者的で好きになれないけど、まずは楽しめる佳作だろう。でもハリウッドってそこそこ合格点な映画は作るけど、これといって際だった傑作がないんだな。採点は(6)。来年1月下旬、全国公開。

 京橋のメディアボックス試写室で『とらばいゆ』。脚本・監督はPFF出身で『アベックモンマリ』で知られる大谷健太郎。といってもぼくは初めて見る監督。はっきり言って全然期待してなかったが、これは抜群に面白かった。女性棋士の主人公(瀬戸朝香)と、サラリーマンの夫(塚本晋也)、やはり女性棋士の主人公の妹(市川実日子)とそのボーイフレンド(村上淳)を巡る恋愛ドラマである。主要登場人物4人による饒舌なダイアローグを中心とした舞台劇的な作りだが、会話のテンポとセリフのウィットに富んだセンスが素晴らしい。全編の2/3ぐらいは機関銃の撃ち合いのような口喧嘩のシーンだが、これがまたどこの夫婦・カップルでも思い当たることだらけにちがいないディテールのリアリティに溢れていて、思わず微苦笑してしまう。瀬戸朝香は最初、ツンケンした実にイヤ〜な女として描かれるのだけど、物語が進むにつれ彼女の弱さや可愛さが浮き彫りにされ、観客は徐々に彼女の心理に同化していってしまうあたりの演出も巧みだ。愛する夫の前で弱みのひとつも見せられない意地張りで気の強いキャリア志向の主人公を演じる瀬戸はハマリ役だろう。その人物造形は女性の共感を得るにちがいない。やや保守的だが気弱な夫を演じる塚本、奔放な妹を演じる市川、フワフワした今どきの若者を演じる村上、ともに好演。監督は気の強い女と気弱な男という組み合わせが好きみたいだが、現代の男女のあり方を描くには、それが最適なのかもしれない。主題歌をTicaが歌っている。採点はずばり、(9)。地味だがかなりの傑作です。同監督の過去の作品も見てみよう。来年2月、テアトル新宿にて公開。

 終了後、表参道のビクターでレンチの取材。なんかミュージシャンのインタビューって久しぶりな気がするな。話は面白かったが、いささかとっちらかり気味だった。うーん、ほんとにオレって音楽評論家?