2001年12月10日(月)

 今日はフランス映画デー。

 京橋の映画美学校試写室で、『WASABI』(7)。リュック・ベッソン脚本・制作、『TAXI 2』のジェラール・クラヴジック監督、ジャン・レノと広末涼子が主演。『噂の真相』には「空前絶後のつまらなさ」と書かれているが、それほどでもなく、そこそこ面白いし、退屈もしない。だがあまりに話が荒唐無稽でメチャクチャなので、そのへんを許容できるかどうかが評価の分かれ目だろう。シリアスさはカケラもないが、楽しめる娯楽篇に仕上がっている。ジャン・レノはいかにもこの人らしいキャラを手堅く演じる。広末が可愛い。ジャン・レノの相棒役の男優が、爆笑問題の田中に似ている。正月第2弾全国公開。

 同じ映画美学校試写室で、『夜風の匂い』(8)。『ギターはもう聴こえない』『愛の誕生』などで知られるフィリップ・ガルレが脚本・監督、カトリーヌ・ドヌーヴが出演した99年作品。大人のラヴ・ストーリーとして見ることもできるが、それにしてはなんともやりきれない悲痛な自己告白と絶望感に満ちた作品だ。自らの老いを怖れながら、愛と安らぎを求め続ける女主人公と、68年のパリ5月革命に挫折し、ヒッピー的生活を送り、挙げ句は妻を自殺で亡くすという過去にいつまでも苛まれ続ける建築家の男が、この作品の主軸だ。物語は男の問わず語りの告白を主に進行する。映画のほぼ終わり近くになってふたりは宿命的に出会い、お互いの傷を舐めあうように愛し合い、そして深い諦観に満ちたラストへとなだれ込んでいく。女は救われるが、男は救われない。男の人物造形は、やはり5月革命に参加し、ニコの夫として知られ、アンディ・ウォーホールのファクトリーで働いた経験を持ち、そしてジーン・セバーグやニコといった愛する女を相次いで喪った監督の自画像が投影されているようだ。その意味で本作の主人公はドヌーヴではなく、ダニエル・デュヴァル演じる男であろう。この作品を、単なる団塊の世代のオヤジの愚痴とボヤキと突き放すこともできるが、ぼくにはなんとも痛切な思いだった。女にとっては現在がすべてだが、男はしょせん過去から逃れられず、その傷と心の空洞は、どんな愛をもってしても癒されない。ルイ・マルの『鬼火』に通底する、深い孤独に満ちた作品である。リュック・ベッソンやヤン・クーネンが今のフランス映画のスタイルなら、映像のひとつひとつ、セリフのひとつひとつがいちいち寓意と暗喩に富んだこの作品は、いかにもオールド・スクールなフランス映画の粋と言えるだろう。カラー映画だが、まるでモノクロ作品のような沈鬱さがある。ちなみに音楽はジョン・ケイルというから、なかなか念が入っている。
 カトリーヌ・ドヌーヴといえば、ぼくの世代にとって「美人」の代名詞のような女優(ちなみに美男の代表はアラン・ドロン)。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』ではすっかり歳をとった感じだったが、ここでは崇高なまでに美しく魅力的だ。陰りを帯びた演技も素晴らしい。この作品の撮影当時56歳だが、とてもそうは思えない。またダニエル・デュヴァルも渋すぎでカッコイイ。来年1月、銀座テアトルシネマにて公開。