2001年11月29日(木)

 渋谷のシネカノン試写室で『バスを待ちながら』(9)。2000年制作のキューバ映画。監督のフアン・カルロス・ダビオはキューバ映画界を代表するベテランだというが、ぼくは初めて見る監督。『苺とチョコレート』という作品を共同監督して、ベルリン国際映画祭で審査員特別賞をとっている。。
 さして期待もせず、ただキューバ映画だからという理由で見たのだが、これが大変に面白い、そして愛すべき作品だった。最近のビッゲスト・ディスカヴァリーでしょう。キューバのとある田舎町のバス待合所に集まった人たちの人間模様を描く小品で、個性豊かな登場人物たちを的確に描き分ける演出/脚本が素晴らしいし、俳優たちも魅力的だ。ここに出てくる人々はみな貧しいけれど、明るく屈託がない。それがキューバの国民性なのか、この監督の個性なのかわからない。が、どんな事態に陥ってもあっけらかんとユーモアで乗り切ってしまう登場人物たちを見れば、こうしたオポチュニズムは、きっとキューバという国の持つ根元的な魅力なのだと思った。
 バス待合所と、そこから離れられない人々を社会主義国キューバと、そこに住む人々に託する寓意性や、キューバの官僚主義などを皮肉るところなどもあるが、基本的には深刻さとは無縁な、笑顔の絶えない作品である。「名作」「傑作」といった大上段の物言いは合わないが、実に楽しい。12月下旬から、銀座シネラセットにて上映。

続いて同じシネカノン試写室で、『ひとりね』(3)。監督はベテランすずきじゅんいち、主演は榊原るみ。そう、あの『気になる嫁さん』のるみちゃんです。むかし好きだったんだよね。もう50歳になるという彼女が演じるのは、孤独と欲望に苛まれ、やがて訪れる老いを恐怖する中年女性。モノクロ、しかもこもったような劣悪な録音状態など、とても2001年の作品とは思えない、大昔の日本映画やヨーロッパ映画のような古めかしさ。沈んだような色調とセリフで、全体に暗く重苦しい沈鬱さが漂う。資料には「大人の成熟した女性でなければ理解できないかもしれない『ハイブローでエロチックな、芸術的香り高い映画』」とあるが、「おゲージュツ作品を作ろう」という作り手の気負った意識が強すぎたのか、気取ってるばかりでいまいち面白くないし、ときに観念的になる描写には観客ににじり寄るパワーがないのだ。榊原るみちゃんのヌード・シーンやセックス・シーンなどもあるが、なんかやせすぎで痛々しく、描写もオ上品すぎて作り手が意図したようなエロティシズムは伝わってこない。作り手によってはもっと迫力のある作品になる可能性もあるテーマ/題材だけに惜しい。こういうのなら、むかしの日活ロマンポルノで、いくらでも傑作があった気がするな。来年3月より、東京写真美術館ホールほかにて公開。