2000年6月19日(月)

 白金台のソニー・レコードで、モンド・グロッソ大沢伸一の取材。本上まなみ出演のANA沖縄CFソング「LIFE」(なかなかの名曲)がヒット中である。非常に雄弁な人で、自分のこと、自分の考えていることを誤解なく正確に伝えたい、という気持ちがとても強い人のようだった。ルーツがニュー・ウエイヴで、ジェイムズ・チャンスやACR、ポップ・グループなんかがアイドルだったらしい。なんか意外だね。彼にとってロックといえばそのあたりを指すそうだ。彼がプロデュースしているbirdは最近ロックをやりたいと言い出しているらしく、これからbirdのレコードにはそのあたりのテイストが出てくる可能性があるとのこと。ただしモンド・グロッソの新作『MG4』(7月26日発売)には、そういう尖ったところはまったく見あたらない。4ヒーローがブラジル音楽をやったような、耳に心地よくメロディアスでソフィスティケイトされたサウンドが聴ける。

 昨日の日記に書き忘れたのだが、日テレの『おしゃれカンケイ』(古館伊知郎と渡辺満里奈が司会)をぼんやり見ていたら吉田拓郎がゲスト出演していた。むかしもいまも吉田拓郎に積極的な関心を持ったことはないが、この日のトークはなかなか面白かった。
 吉田は都合3回結婚していて、現在の森下愛子は3人目の奥さんである。森下は吉田に「前の2人の奥さんがあなたの悪いところを全部持っていってくれた」と言っているらしい。むかしに比べると確かに穏やかになった吉田をみると、さもありなんという気がする。これは我が身に置き換えてみるとヒジョーに身に積まされるハナシで、10代や20代のころにつきあっていた女性には、いまでも悪いことをしたなぁと思う。若くてワガママで自分のことしか考えていなくて、相手のことを思いやる余裕なんて全然なかったからだ。だからといって30代以降に理想的なつき合いができたわけでもないし、現在の相手からみれば現在のぼくもトンでもない欠点だらけなのだろうが、それでも20代のころに比べれば多少は丸くなってはいるだろうし、若いころにはわからなかったことも多少理解できるようになってきたと思う。昔のガールフレンドといま出会えればまったくちがうつき合い方ができるかもしれないが、といってむかしのような愛情が生まれるとも限らないわけで、お互い若くて未熟だったからこそ醸し出される、ある種の魅力もあったろう。人の出会いはむずかしいものである。

 で、その番組ではもうひとつ面白い話が出た。富沢一誠が吉田を礼賛した文章を古館が読み上げると、いきなり吉田が「ぼくその人嫌いなんですよね」と言い出したのである。念のため言っておくと富沢一誠とは60年代から活動するベテランの音楽ライターで、吉田や井上陽水のようなフォークの評論では有名な人だ。だが有名とは言ってもしょせんはヒョーロンカであって、『おしゃれカンケイ』を見たりキンキ・キッズの番組にでている吉田しか知らないような一般の人には、ほとんど知られていないだろう。その富沢をいきなり名指しで「嫌いなんですよ」ときたもんだから、古館あたりには大受けだったのだが、いや、これも我が身に置き換えるとオソロシイことである。ぼくがよく取材して評価しているようなアーティストがテレビ出演するというので見ていたらいきなり「ああ、小野島大でしょ。ぼく、大嫌いなんですよ」とか言われちゃったりして。ああコワ。むかしガンズン・ロージズが自分のレコードで気に入らない評論家を名指しで罵倒したことがあったけど、それほどひどくはないにしろこっちも相当コワイ。同じ芸能人(アーティスト)同士ならともかく、芸能人と評論家じゃ知名度がちがいすぎるもんねぇ。まぁこっちも公共の誌面で好き放題書いてるから、文句なんか言える筋合いではまったくないんだけど。ちなみに吉田が富沢を嫌いな理由として「褒めたたえられる気持ち悪さ」みたいなことを言っていた。テレ隠しのようにとれなくもないし、いまさら富沢批判というのも大人げない気もするが、こういう考え方ができる吉田拓郎という人は、ぼくが考えているよりはずっとまともなアーティストなのかもしれない。音楽はやっぱり好きになれないけど(爆)。