2000年6月13日(火)

 3連休があけて街に喧噪が戻ってきた感じだが、いずれにしろ東京やニューヨークとは全然ちがう、のんびりした空気。少し街を歩くが疲れがたまっていて、早々にホテルに帰りまたも読書三昧。北方謙三『檻』(集英社文庫)。緊迫感に満ちたハードボイルドの傑作。ちょっと登場人物のキャラ設定が型通りすぎるとも感じたが、ストーリ・テリングは抜群にうまい。

 夜はロビーで待ち合わせ、ホテルからクルマで10分ほどのPUNTERE CLUBというところで、今ツアー唯一のズボンズがヘッドライナーのライヴ。彼らのオーストラリア最後のライヴだ。近くのタイ・レストランで食事(昨日のレストランよりうまかった)してから会場に赴く。最近メルボルンでは人気上昇中だというROCKET SCIENCEというバンドが演奏中だった。オルガンをフィーチュアしたアニマルズみたいなバンド。なかなかの熱演だった。
 客の入り宇が心配されたが、3百人も入れば満杯になりそうなクラブは、まず満員の盛況。この日はVIEWSICのビデオ・シューティングが入っていた。機材のトラブルなどでズボンズの登場は当初の予定から大幅に遅れ、深夜12時過ぎ。しかしライヴは素晴らしい内容だった。気合の入り方も演奏のハネ具合もパワーもエネルギーもまったく申し分なく、ぼくがこれまで見たズボンズのなかでもベストに近いパフォーマンスだったと思う。
 最初は様子見が明らかだった客も、最後はノリノリだったわけだが、つくづく感じたのが彼らのロック・バンドとしてのわかりやすさ。たとえばブランキーなんかの場合、歌詞がわかった方がより染みたりするわけだが、ズボンズやギターウルフは歌詞なんかわかんなくたって、その良さは誰にでもわかるだろう。ロック・バンドとしてのもっとも普遍的なグルーヴを彼らは持っているし、それは国境や民族や言語を超える強さになっている。それは90年代以降のロックにインターナショナルな訴求力をもった表現が激減した現状を覆すだけのチカラとなりうるはずだ。
 心地よい満足感に包まれ、ビールがうまい。終演後はドン・マツオやアツシと立ち話。この日も含めオーストラリア公演のいくつかは録音をとっているらしく、いずれリリースする機会もあるかも、とのこと。またアツシは脱退したはずのバッファロー・ドーターに再加入して新作にも参加しているらしいが、当面はズボンズと二足のワラジをはくようだ。

 ホテルに帰り、山田正紀『謀殺の弾丸特急』(徳間文庫)。読み始めて数ページで、以前読んだことのある作品であることに気付く。むかし大好きな作家だったのだ。SF全盛期には「神狩り「弥勒戦争」「謀殺のチェス・ゲーム」と素晴らしい作品をたくさん送り出していた。これは86年の作品で、鉄道を使った冒険小説。おもしろいのだが、ディテールの描写があまりにスカスカで、現代の緻密なアクション小説を読み慣れた身には実に子供だましに思えた。