2000年2月26日(土)

 レコ評のため椎名林檎の新作『勝訴ストリップ』(3月31日発売)を聴くが、これが仰天モノの傑作。知ってる人もいると思うが、ぼくはもともとこの人をさほど高く評価していない。それはこの人独特のあざとさや計算高さがハナにつくからだが、音楽より先に歌詞やキャタクターばかりが語られがちな彼女をとりまく状況にいささかうんざりしていることも関係している。もちろんそんなことは本人と直接関係ないかもしれないが、レコードを聴いてもそうした先入観を覆すだけのパワーがあるとも思えなかったのである。
 ところが新作はすごい。相変わらずぼくはこの人の歌詞やキャラクターを語ろうという気にはなれないが、なにより本作は音楽それ自体のテンションがすごい。オルタナからインダストリアルまで包含したサウンドは混沌としているが、そのドン詰まりの混沌の中に林檎の切羽詰まったヴォーカルが、重苦しい空気を鋭い爪先で引き裂いていくようにすっくと立ち上がる。見事なサウンド・テクスチュアであり、鮮やかなプロデュース手腕だ。もしかして彼女以外のミュージカル・ディレクターのような人がいるのかもしれないが、そうだとしたところで、この人のヴォーカリスト/パフォーマーとしての破格のスケールがなければ、ここまで緊張感あふれる磁場を作ることはできないだろう。いや、おみそれしました。浅井健一も1曲ギターで参加している。