2000年10月15日(日)

 田中康夫が長野知事選に当選。まだ当選談話などは聞いていないが、なんだか冗談のような話ではある。直前まで自分の日々の性生活を逐一公表していた人間が政治家、それも県知事クラスになるなんて、前代未聞だろう。今月の『噂の真相』は休載だったけども、当選したからには連載は再開されるのだろうか? 地方自治体の首長の日々の性生活が公のメディアで連載されるなんてことになったら面白いのだが。県議会のあと『なか田』で鮨、ホテルでK嬢とPG、なんてね。

 もちろん彼の政治家としての力量は未知数だが、浅田彰の言うようにアクティヴィストとしては圧倒的に有能だから、優秀なブレーンに恵まれれば結構やるかもしれないという、期待をこめての当選だろう。同じ「行動する作家」であっても石原慎太郎のようなファシストではもちろんないし、思想的にはごくリベラルな人だから、自衛隊の行進を銀座の真ん中で嬉々としてやるような軍事オタクな真似もなかろう。あとは既得権益を守ることしかアタマにないプロパーの政治屋や官僚どもに足を引っ張られないよう注意して欲しいものである。

 だが一方で、在野で言いたい放題言っていた方が彼にとっては良かったかも、という気もする。ぼくは彼を同時代のもっとも辛辣かつ戦闘的な評論家として信頼しているけれども、評論家/思想家として優秀であればあるほど、危ういのだ。われわれの立場に置き換えれば(途端にハナシがスケール小さくなっちゃうけど)、音楽評論家がミュージシャンに転向するみたいなもので、「そんなにエラそうに批判するならお前がやってみろ」という、アタマの悪いミュージシャンの紋切り型の八つ当たりが、そのまま有効な批判になってしまうからだ。青島幸男みたいになっちゃったら、政治家引退後にいかに正論を吐いたところで、誰も相手にしなくなることは明らかだろう。そう考えるとある意味で非常にリスクの大きい賭けだと言える。同世代なのでなんとなくわかるのだが、彼自身、薄々人生の転機を感じていて、なんらかの打開策が欲しくて、そのため冒険がしたかったのかもしれない。

 ところで彼が取り組んでいた神戸の新空港問題って、ある程度カタがついてたんだっけ? もしやりっぱなしなんだったら、ちょっと問題あるかも。事情が許せば兵庫県の知事選にでも出た方が良かったのかも。