28日(金)

 名古屋で営業をやっていたころ、同じテリトリーを回っていた人たち(つまり同業他社のセールスマンだった人たち)と恒例の新年会。ぼくが名古屋でセールスをやっていたのはもう15年近く前のことで、それからずっとつき合いが続いていることになる。

 ぼくは学生時代の友人と、社会人になってから仕事を通じて知り合った友人とは無意識のうちに区別しているところがあるのだが、それはおそらく利害関係が絡むかどうかということだろう。

 この日集まった人たちは、もちろん当時は利害が対立するライバル同士だったわけだが、お互いそのテリトリーを外れ、ちがう部署に異動になったり転勤したり転職したり、ぼくのように辞めてフリーになる者もいたりして、直接的な利害関係はほとんどなくなっている。しかし学生時代の友だちとちがい、もとは同業でお互いの仕事の事情はよく理解しているから、共通の話題も多い。だから上下脱いで気楽につきあうには最適なのかもしれない。会社では張りつめた感じで仕事している人も、ここでは遠慮なくバカ話ができる。

 ぼくはそのテリトリーを回っていたセールスでは最年少の部類で、いわば「パシリ」だった。もちろん15年近くたっていいおっさんになっても、お互いの関係は変わらない。だからこの会に顔を出すと「小野島ぁ!」と頭ごなしにやられ、給仕役や料理・飲み物の注文役をやらされたり、カラオケにいくと「小野島! “モニカ”歌え!」(当時のぼくの得意レパートリー)と命令?されることになるのだが、それは決して不快ではなく、むしろ楽しいのである。この業界でぼくの年になるとどこへ行ってもたいていぼくが最年長の部類で、気を遣われたりするのがうっとうしいと感じることもあるが、ここでいつまでも<若造>扱いであり、気楽だ。なんだかむかしに戻ったような気がする。それはきっとほかの人たちも同じなのだろうと思う。だから15年もつき合いが続いているのだ。


 この日出席した人たちが、いまどういう仕事をやっていて、会社のなかでどういう地位にいるのか、ぼくはよく知らない。いわゆる「団塊の世代」と言われ、いまの日本のサラリーマン社会ではもっとも辛い立場にいる人たちである。ほかがそうであるように、業界の再編も囁かれている。いろいろあるのだとは思うが、そんなことはオクビにも出さず「お前、ちゃんと食えてるのか」と声をかけてくれる。優しい人たちだと思う。

 この日は当時担当していた販売店の店員だった女の子(もちろんいまは<子>ではないが)がわざわざこの日のために上京してきて、珍しく華やかな会だったのだが、ぼくのことをとりわけ可愛がってくれたHさんが会社を辞めるということで、その送別会も兼ねていた。まぁ送別といってもこれでつき合いが切れるわけではないから、形だけのものである。でもいつもなら酒が入ると陽気に騒ぐHさんが早々に潰れてしまったのを見て、なんとも言えない気分になってしまった。エネルギッシュに仕事をこなしていたHさんもいまや二人のお孫さんを持つおじいちゃんである。15年の歳月を感じてしまった。