9日(木)

 一番町の東宝東和試写室で、『カモメ』。松山のホステス殺しで、整形して顔を変え15年間逃走し続け、時効成立の21日前に逮捕された福田和子をモデルにしたフィクションである。監督は若松孝二門下で、筒井康隆原作の『ウィークエンド・シャッフル』で知られる中村幻児。さほど期待もしないで見に行ったのだが、これが意外な拾いものだった。

 福田(劇中では福間)の犯行から逮捕までの道のりを、ロード・ムーヴィ形式で追っているのだが、単に福田の心理的葛藤を抉るだけでなく、夫や母、娘、息子、さらには福田を追いつめる刑事など、周辺の人々の苦しみや絶望をきっちりと描いているから、ドラマに奥行きとリアリティが出ている。手際よくエピソードをまとめ、かつ全編福田のモノローグ(取り調べの刑事への供述という形)で、地獄の苦しみと刹那の快楽を往還する福田の心理を描ききった脚本(中村幻児と佐藤俊城の共同)の見事さが際だつが、なにより圧倒的なのが、福田役を演じた清水ひとみの熱演だろう。もしかしたら来年の各映画賞で主演女優賞の有力候補になるかもしれない。まるで顔が違う整形前と整形後の変貌も見事に演じきっている。脱ぎっぷりもいいなーなどと思っていたら、元ストリッパーで、女優に転身した人らしい。

 絵沢萌子、宮下順子と、往年の日活ロマンポルノのスター女優が脇で出ていて、いい味を出している。絵沢は福田の母親役、宮下は福田を警察に通報する小料理屋のおかみ役。ふたりともさすがにトシは隠せない感じだが、久々に観た宮下さんはいまでも十分にきれい。若いころから、とろけ落ちるような色気と、包み込むような母性、優しさを感じさせる人で、ぼくは大ファンだった。トシをとって爛熟した色気というより優しさが全面に出てきていて、どことなく八千草薫に似ているなぁ、と思った。

 で、おそらく絵沢や宮下が若いころなら福田役をやったんだろうなぁ、と思う(宮下さんは優しすぎて、勝ち気な福田役は向かないかも。絵沢の方が適役かな)。というより、世が世ならこれは日活ロマンポルノがやるべき題材だろう。荒れた画面のざらりとした現実感覚は、まさに往年のロマンポルノ。その意味でも、清水ひろみは適役だった。来年3月4日から、銀座シネパトスでレイトショー公開。機会があれば、ぜひご覧になることを勧めます。

<お知らせ>
ところで、年末に忘年会をかねて久々にオフ会をやりたいと思っています。いまのとこ12月27日(月)か、28日(火)あたりを考えてます。場所は都内のどこか。出席希望者は管理人あてメールか、掲示板に書き込みを。正式な日取りは近々決定します。みなさまのご参加をお待ちしてます。