2日(木)

 東銀座の松竹試写室で『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』。ライ・クーダーがキューバのベテラン・ミュージシャンと共演した同名アルバムの成功を受け、2年後再びキューバを訪れたライに『パリ、テキサス』や『エンド・オブ・バイオレンス』で共に仕事をしているヴィム・ヴェンダースが同行し制作したドキュメンタリー。インタヴューなどでキューバ音楽の古老たちのプロフールを紹介しながら、レコーディングの様子、キューバの町並み、人々の表情を追っていく。アムステルダムでおこなわれたブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのライヴの映像も織り込みながら、クライマックスのニューヨーク、カーネギー・ホールでのライヴまで、全編に渡ってキューバ音楽が鳴り響く。
 まず感じたのが、キューバの町並みの美しさ(ヨーロッパ的な意味の美ではない。ゴミゴミとした都市の生を感じさせる美しさだ)。そして人々の表情がイキイキしていること。経済状況など決していいとは言えない中、生活だって決して豊かではないだろうけど、金がいっぱいあって物質的に満たされていることが本当の豊かな人生とは限らない、と訴えているようだ。そしてなにより、キューバのミュージシャンの居住まいのよさ。もうおじいちゃん、おばあちゃんばかりだし、とりわけ高級な服を着ているわけでもないだろうに、着こなしは粋だし、凛とした風情で、なんともかっこいいのだ。脂気の抜けた表情も実にいい。92歳にしていまだ子作りに励んでいるというギタリスト、コンパイ・セグンドの、なんとも粋なその風情、茶目っ気たっぷりな表情。そしてキューバのナット・キング・コールと称されるイブライム・フェレール、その声の素晴らしさ。若いころの彼らの歌を聴いたことはないが、とても歳には思えない滑らかでツヤのある、美しい高音なのだ。80歳のピアニスト、ルベーン・ゴンザレスも素晴らしい。
 キューバ音楽に関する知識など皆無に近いぼくだが、古老たちの演奏する音楽はものすごく洗練されている。デリケートで精妙、かつ独特のかろみがある。ライ・クーダー(ケヴィン・コスナーに似ている)がキューバ音楽に傾倒する理由が、レコードよりもっとよくわかる。
 ヴェンダースはふだんのヴェンダーズ臭さを抑え、古老たちの音楽を、表情を、その人生をできるだけ丁寧に浮き彫りにしようとしている。マンハッタンの真ん中でお上りさん状態の古老たちの子供のような表情と、コンサートでの晴れがましい表情、その対比を鮮やかに切り取った。このサイトの訪問者すべてにおすすめします。