10日(水)

 最近ほとんど映画日記と化している当コーナーだが、仕事の都合上、主だった正月映画をほぼすべて見なければならず、試写会が集中しているいまの時期はほとんど毎日予定が入っているのだ。しかもその大半は『オートルート』誌の対談レビュー用で、原稿という形でまとめる予定がないので、ここで書いておきたいという事情がある。あ、もちろんこれを読んで「じゃぁこいつに映画評書かせてみるか」というお申し出はいつでも大歓迎ですよ(^o^)。もともと商業誌の原稿が載ったのは音楽誌より映画誌の方が先だったぐらいですから。

 今日は東銀座の松竹試写室で『海の上のピアニスト』。『ニュー・シネマ・パラダイス』で全世界の映画好きの涙腺を刺激しまくったジュゼッペ・トルナトーレ監督の新作だが、期待に違わぬ感動作である。大西洋を往復する豪華客船のなかで捨て子として見つかり、一生涯、陸を踏むことなく船の中で過ごしたピアニストを描く。ピアニストが主人公、豪華客船が舞台と、『シャイン』や『タイタニック』といった作品を想起するが、いかにもトルナトーレ監督らしい情感あふれる細やかで開放的な描写、柔らかく優しく力強い映像の美しさなど、品位という点ではこっちの方が上だ。昨日の『シャンドライの恋』といい、このあたりはイタリア映画の底力であろう。終わり近く、主人公とその友人のトランペット奏者(この役者がまた、いい味を出している)が、船を下りたあとの生活について語り合うあたりから、試写室のあちこちからすすり泣きが聞こえた。それにしても、この映画でも『シャンドライの恋』同様、ティム・ロス演じる主人公は見ているこっちがもどかしくなるほど、愛情表現が不器用でぎこちない。女性の方がむしろ率直で屈託がないのだ。そういう時代なのか。