「なんだか 自分でもよくわからないけど…よくわからないって 悪い気分じゃない よくわかって 見えすいた人間ばかりだもの」

FILE#110「昭和一代女」(画:上村 一夫)



アパッチ連載(月2回刊)/1977.創刊号〜1978.2号

●あらすじ:
空襲で亡くなった母の言葉を胸に、戦後の荒廃の中を一分の義を通し逞しく生きる少女・鷹野翔子。同じ戦災孤児を引き連れ、ズベ公グループのリーダーとして君臨していた。あるトラブルをキッカケに消息不明だった父と再会を果たすも、特高警察に捕われ痛め付けられた母を救えなかった理由が自らの保身が原因と分かるや失望。父の元を去る。生き抜く為、得意の投げナイフを武器に金品強奪などの犯罪行為を繰り返す翔子。やがて捕らえられ女子教護院へ送られる。先輩達のリンチにも屈っせずボス連合を叩き潰した翔子は、教護院のボスとして君臨する。小説家を目指すインテリ教員・矢崎との交流で知的なものへの本能的な憧れを満たす翔子。しかし右翼団体の会長である父が襲撃された事を知り脱走を図る。亡き父の仇を伐とうとするが叶わず、危機一髪の所を義理の母・藤江に救われる。数年後、義母の料亭の芸者として働く翔子は、その美貌により数々の男達を虜にしてゆく。その中で新進作家となった矢崎と再会と別れの悲しみを乗り越えて、政財界の男達と浮き名を流し、妖艶に磨きをかける翔子。昭和一代女の物語が今、始まる。

●BONはこう読む!:
70年後期、「スポ根作家」のイメージを払拭すべく、発表された中で、最も文芸色が強い作品だと思う。サラッと読むと見落としてしまいそうだが、主人公が少女から女へと成長していく中での揺れ動く心理描写はきめ細かく本作への力の入れようが理解できる。原作の雰囲気と上村氏の絵柄の相性も良く、雑誌の廃刊による未完が惜しまれる。同誌には「青春一騎討ち」という悩み相談コーナーもあって、「鷹野翔子」にモデルはいるか?との質問に「いる。今は詳しくあかせないが…」と答えている。でも…嘘なんだろうなぁ、やっぱり。

●単行本:KCコミックス全1巻(未完)

●その他:※連載中、表紙に「映画化決定!」と何回か載っていたが結局立ち消えたみたい。
     ※朱の章のみで終了。