「これは戦前 戦中 戦後 そして現代につながる日本激動の時代を いちずに 大義と真理の光を血みどろの手にさぐりもとめて生きた兄弟二代 さらには親子二代にわたる青春の絶唱である」

FILE#108「火乃家の兄弟」(画:かざま 鋭二)




週刊少年マガジン連載/1977.15号〜1977.50号(※1978.1号より「青春山脈」に改題)

●あらすじ:
太平洋戦争で特攻第1号として散った兄を持つ火野正人。激しい兄弟愛ゆえに卒業後、自ら特攻隊に志願し兄の意志を継ごうとするが、戦闘機の故障により失敗。日本の無条件降伏により終戦をむかえる。生きる目的を見失い、自暴自棄から「火乃正一家」を構えヤクザの親分となった正人の心を救ったのは生前兄が愛した女性・水上昌子とその甥・直樹との再会だった。兄に代わって影ながら母子を見守り支える事に生きがいを見つけた正人。だが「火乃正一家」の進出を恐れる「鬼門組」との抗争に水上親子を巻き込んでしまう。組の解散と逮捕・服役という代償を払い抗争は終わったかに見えた、数年後に出所した正人をなおも付け狙う「鬼門組」は「甲賀組」の女組長・魔子を利用して正人殺害を企むが失敗。魔子は正人を、高校生に成長した直樹は魔子を愛してしまう。叔父と甥の愛憎と、因縁の物語は「鬼門組」四代目ブラックローザ・ユキの自らのプライドをかけた死をもってピリオドを打つ。その後魔子と直樹は結ばれ、年老いた正人は彼等が運営するマンションの管理人として余生を過ごしていた。ある日、正人の過去を知ったひ孫の正樹は、それをカサにきて学校で問題を起こしてしまう。騒ぎは住民にまで広がり、全ての責任をとるため生まれ故郷の熊本の阿蘇へ去っていく正人。老いて疲れた彼は亡き兄とともに育った阿蘇山の火口へ身を投げる。それは自殺などではない、つかれたから休む。ただそれだけの事なのだ…。

●BONはこう読む!:
梶原氏お得意の、実在の出来事に架空のキャラクターを絡ませ展開する方法を「歴史(戦前・戦中・戦後)」で試みた意欲作。(だが戦後は上手く世相を反影できなかった)2人の兄弟が歴史の渦の中で懸命に生きる姿を描いた「火乃家の兄弟」編までは綿密で濃厚な物語を展開し現在でも読みごたえ十分な傑作だ。しかし終戦後、主人公がヤクザに身を落としてからは作品の雰囲気が何処か殺伐としたものになってしまった。青年漫画というマーケットが確立された今ならもっと読者の共感は得られたのではないか?早すぎた名作といえよう。って偉そうだね俺。(笑)

●単行本:
KCコミックス全12巻(「青春山脈」に改題。4巻迄“序章・火乃家の兄弟”とクレジットされている。)
廣済堂コミックス全9巻(「青春山脈」に改題)

●その他: