「プロレスの世界ではな えてしてベビーフェイス(善玉)よりヒル(悪役)のほうがギャラが高い そのかわり善玉は人気だの英雄視だのを手に入れる 虚をとるか実をとるか…だ フフフ…まあ こいつは人生すべてに共通のことだがな…」

FILE#89「プロレス地獄変/うそつき魔王」(画:宮谷 一彦・いしだ晋一 他)




劇画ゲンダイ連載/1973.6月(創刊)号〜1974.1月(休刊)号

●あらすじ:
1945年。第二次大戦終結後のアメリカプロレス界に突如出現した奇怪な日系レスラー“ゼネラル・東条”。そ
の正体、日系二世のポール・岡本は収容所時代にマティ・松木から教わった柔道の受身の上手さと醜悪な容姿をプロモーターのマルコビッチに見込まれて悪役レスラーとなった。卑劣な反則技を使うが、最後は白人レスラー達にKOされる東条の姿見たさにファンは試合場につめかける。不人気の人気。エスカレートする東条人気を潰そうと覆面レスラー“ザ・アサーシン”が襲い掛かる。だがマルコビッチに雇われたマティ・松木の機転により危機を脱する。調子にのった東条が吹いたホラが原因で正統派レスラー“ジム・ロンドス”との対戦するはめになる。己の実力の無さを知る東条は逃亡を図るがマルコビッチに連れ戻されてしまう。試合当日、彼が使った一世一代のイカサマ大博打によって見事ロンドスを倒す。この1戦により地上最大の悪役王と讃えられた東条はアメリカマット界に君臨。数年後、高嶺の花と憧れていたマルコビッチの娘・グレースとの想いを遂げたのち、カナダへ赴き日系レスラーとして初の世界ジュニア・ヘビー級チャンピオンとなる。己の欲望の為ならあらゆる手段を用いても成し遂げる…。彼こそがジャパニーズ・エコノミック・アニマルのはしりなのかもしれない。

●BONはこう読む!:
この話を実在のレスラー“グレート・東郷”をモデルとしただけの劇画と思って読むなかれ。創られた虚像を生きていく内に、次第にそれと同化していくだけでなく、サクセスも掴んでゆくその姿は、原作者の当時の姿とも重なるように見える(ポール・岡本=高森朝樹。ゼネラル・東条=梶原一騎)のは自分だけだろうか?また本作は、漫画の主人公が主人公らしく(格好良さとか、強さとか)あることが当たり前の時代にあって、醜悪でコンプレックスの固まりのような男を主人公にした初の作品としても評価しても良いのではないかと思う。
(200.6/11記)

●単行本:未刊行

●その他:
※1974.1月号で雑誌は休刊。
※8月号は宮谷氏の急病により、前半部の原作が描かれず表紙にあらすじが書かれたのみ。 全11pと少ない。
※作画クレジットの変遷、他。
6月号/プロローグ・変身→画:宮谷一彦 スタジオ狂世舵
7月号/国辱の道化(1) →画:宮谷一彦 スタジオ狂世舵
8月号/国辱の道化(2) →画:宮谷一彦 スタジオ狂世舵
9月号/国辱の道化(3) →画:宮谷一彦 スタジオ狂世舵
10月号/国辱の道化(4)→画:いしだ晋一/朝香慶朗
11月号/国辱の道化(5)→画:いしだ晋一/下田文博
12月号/国辱の道化(6)→画:いしだ晋一
1974.1月号/国辱の道化(最終回)→画:いしだ晋一