「人間みーんな兇器じゃないのかい? 強い兇器とさほど強くねえ兇器と弱い兇器の区別があるだけでよ そして とかく強い危険な兇器は 弱い兇器どもが束になった“法律”だの“正義”だので閉めだされる」
FILE#124「人間兇器」(画:中野 善雄)

週刊漫画ゴラク連載/1979.1/18号〜1983.6/10号(連載中断)、1984.11/23号〜1985.1/25号
人間兇器 再開にあたって
最初に読者諸兄はじめ編集部に対し幾重にも詫びねばならない。周知のごとく個人的な理由の短慮から暴力事件を起こし、あまつさえこれも日頃の不摂生から病魔にとり憑かれ、ゆえに心ならずも一年半の長期に渡り「人間兇器」を中断したことを。
かつて私は本編に主人公・美影義人のまだ少年期のワルぶりを描いた際、「これは作者自身の同じ時期がモデルである」と、告白したが何のことはない、四十の不惑をこえてなお美影義人の軌跡をなぞってしまう結果になった。就中、美影も己を育成してくれた格闘技界でトラブルを連続させてきたが、また私も誤伝の要素大なりとはいえ、A・ザ・ブッチャーやT・マスクの「権利」問題だのA・猪木「監禁」事件だの惹起したのは、まことに汗顔の至りである。
にも関わらず寛大なる編集部は連載再開のチャンスを提供してくれ、読者からの要望も私の机上に山積しているので、ともかく尻切れトンボでない完結の責を全うさせて頂くことにした。あえて最終章は「野獣死すべし」と命題した。私の裡なる若気の至りの「野獣」も。
’84 秋深まる日に 梶原一騎
●あらすじ:
己を最強の兇器とし、金と力で快楽の人生を渡る野望に燃える主人公・美影義人。実践空手『空心会』に入門した彼は総帥・大元烈山に見込まれ、鹿児島での空手抗争に貢献しNY支部への転属を果たす。だが支部長昇格の夢を断たれた義人は、大元烈山に叛旗を翻えす!一派を率いて空心会に挑むが、烈山の策略にあえなく敗北。裏切り者への制裁から逃れようと足掻き、犯罪を重ねる彼は、警察からも追われる身となった。メキシコ・キューバ・NY・ハワイ・日本と舞台を移し、反逆外道の旅を続ける義人。自らの欲望が仇となり招いた窮地を大元烈山と妻・薫子に幾度も救われながらも、悔い改めようとはしなかった。CIAも含めた国際的指名犯人となった義人は、一世一代の野望の賭けに出た。悪徳政治家の弱味を握り秘書兼ボディーガードに収まると、国家権力を楯に烈山が新たに結成した挌闘団体潰しを画策するも失敗。義人が政界と結びついたことを知った烈山は、ついに抹殺を決意。烈山と弟子達に完全に追い詰められた義人だったが、崖から転落しそうな息子を間一髪で救った後、自らは崖下の海に転落した…。野獣死すべし。美影義人反逆の青春の幕は下ろされた。
●BONはこう読む!:
梶原版ピカレスク根性物語。一人の男が、己の知恵と肉体を磨き“悪党”と成り遂せる筈が、懸命にあがき苦しむが結局成りきれずに最後は命を落とすというストーリーとなった。それは魑魅魍魎の現実社会においては、一匹狼の悪党誕生という展開が梶原氏にとっての“リアル”ではなかったと言うことか。強き者に媚び、弱き者をいたぶり、快楽に執着し、根深いコンプレックスを抱えている。そんな主人公を通して描く人間の姿の方が“リアル”だということか。駄作か傑作か、ファンの間でも評価が細分される梶原漫画では珍しい作品である。
●単行本:
日本文芸社刊/ゴラクコミックス全23巻
●その他:
連載再開後には、タイトルに“完結編”の表記が入っていた。
尚、連載再開分9話は、コミックス収録時には1冊分に収めるべく10頁程度の未収録箇所がある。
各話サブタイトル:
●「幼な牙」1〜/1979.1/18号〜
●「神曲(地獄めぐり)」1〜21/〜1983.6/10号(連載中止)
●「野獣死すべし」1〜9/(連載再開)1984.11/23号〜1985.1/25号
Vシネマ「人間兇器/愛と怒りのリング」