「ケンカ野球だから ちったあ熱もはいるのよ ゼニにもなるし やれ猛練習やれ泥と汗…まともな野球なんてあほらしくてやれるかい! おれは万事クールにいきてえ主義でな!」

FILE#100「悪役天使」 (画:一大寺 鉄)



週刊少年キング連載/1976.2号〜34号 資料協力:udara&kudaraさん(感謝!)

●あらすじ:
優れた野球センスを持ちながらも高校野球に属さず、有料の草野球助っ人としてケンカ野球で相手をKOする男・火之矢豪。幼い頃に父を亡くし、その後母と妹が失踪。少年時代を孤児院で過ごした過去を持つ彼は「あすなろ母子寮」の子供達の為にケンカ野球で稼いだ金で野球用品を寄付し、自ら監督となってコーチをする“悪役天使”だ。30万円の契約金で、謎の球団ブラック・ジョーズにスカウトされた豪は、得意の殺人スクリュー・キック・スライディングで対戦相手を血祭りにあげていく。そんな彼に立ちはだかったのがスカイヤーズの豪腕投手・大関春彦。ケンカ野球初敗北の屈辱を果たす為、新たに結成された関東草野球リーグでの対決を目指す。幾多の苦戦を乗り越えて区予選を勝ち抜く豪。一方、彼の応援に出かけた母子寮の子供達は、偶然草野球リーグの陰謀を知ってしまう。ブラック・ジョーズのオーナーでもあり、草野球連盟の創設者の正体とは、悪名高き野球トバク師カケ屋だった!東京代表の座をかけてライバル・大関との対決前日、豪は真相を知る。黒い魔手を胸に秘めて死力を尽して戦うなか、トバク師の壊滅を決意した豪は、自慢の黒バットで大暴れ。話を聞いた大関も騒ぎに加わり、駆け付けた警察に一味は逮捕される。ケンカ野球という悪役の顔を捨てた豪は、今は天使として少年達に野球のコーチをするのだった。

●BONはこう読む!:
読んでまず感じたのは、梶原一騎が梶原漫画を模倣している“セルフカバー”のような漫画だ、ということ。もちろんそれは以前にもあった事だが、決定的に違うのは、キャラクターに対して自身が同化していないこと。不幸な生い立ちから、同じ境遇の子供達の為に無償の奉仕をする主人公。しかし、彼の行動や言葉には読む者に強く訴えるものがない。私の邪推だが、執筆していた時梶原氏は“無償の愛”を信じてなかったのだろう(「タイガーマスク」の時には、信じていた。ゆえに伊達直人から発せられる言葉に我々は共感出来たのだと思う)。キャラクターの人生観と作者の人生観がずれてしまえば、それはただの絵空事でしかない。読者に押しつけるような熱いメッセージを持ち得ない梶原漫画には、魅力を感じることは出来ないのだ。格闘技や映画の興業、プロダクションの設立。この時期、次々と仕事の枠を拡げていく梶原氏にとって、劇画の原作はビジネスの一つに変わってしまったようだ。(数年後、文芸路線に原作者としての活路を見い出したかに思えたが…それはまた別の話。)

●単行本:未刊行

●その他: