「立つも ころがるも すわるも ふすも 一分のゆだんもゆるされず まばたきするまに 勝利と敗北がわかれる…それが柔道ではないのかの」

FILE#39「鬼とオレたち」(画:石井 いさみ)



月刊少年ブック読切掲載/1969.1月号の別冊付録

●あらすじ:
とある漁村にある県立南海高等学校の柔道部員達に前に現れた新しい用務員・平手兵介。小柄ながらするどい目付きを持つ彼に、柔道の精神を説かれ事に腹を立てて襲いかかるが奇跡のような技でことごとく投げ飛ばされてしまう。実は平手は元・講道館の伝説的な人物であった。県大会をあさってに控え、主力選手を痛め付けられて困る部長に平手は、県代表にするためにしたことと話す。選手達は体の痛みに耐え戦うことで妙な力みが消えて、偶然技の柔道を使う事になり県の代表に決まったのだ。それを聞いた学校側の要請で、月給倍増を条件に監督に就任した平手は、まさに鬼となって部員をシゴキまくった。尊敬し始めた相手が、お金の魅力に負けて監督を引き受けた事にショックを受ける部員達。父兄の抗議にも耳をかさずスパルタ特訓は続いた。そして全国大会。快進撃を遂げる南海高の影に平手の存在をしったマスコミは、新聞に大きく取り上げるが、誌面を読む彼の表情は何かを決め、準決勝の朝に姿を消してしまう。監督蒸発に慌てる部員たちの前に一人の少女が現れた。柔道家であった彼女の父は10年前に試合上で平手に殺されてた。以来、名も告げず毎月送金を続ける平手の存在を新聞で知り、お礼をするために訪れたのだ。しかい自らの罪を許せぬ平手は、和解も拒否して何処となく消えていった。自分のわがままを詫びる手紙を部員達に残して…。

●BONはこう読む!:
ストーリーそのものは、目新しさが何もなく“いつものスポ根作品”で片付いてしまうモノ。唯一ハッとしたシーンは、寺の石段で鬼となってシゴク平手が、井戸のつるべに絡み付いているユウガオの花を気にせずに引きちぎった為、部員や和尚に非情の心を責められてシュンとなる場面。これにより悲しい過去を持つ平手のキャラクターに深みを持たせる結果となる。実はこの作品は、南海高の1年生・志摩という少年の目線で平手との交流の日々が語られる展開なのだが、(タイトルの「オレたち」のオレは、彼のこと)さして重要な役割を担っていないのでオミットした。

●単行本:未刊行

●その他: